これは、私自身も結論が出ていない話なのだが、紹介しておく。
先日、ある女子野球の指導者から、国際大会でのエピソードを聞いたのだ。

ご存じかどうか知らないが、日本の女子野球はワールドカップでIBAF、WBSCを通じて5連覇している。圧倒的な存在だ。今夏の大会も6連覇の可能性が高いとされている。
他の国際大会でも連戦連勝だ。特にアジア勢との実力差は圧倒的だ。
その女子野球指導者は、アジアで行われた国際大会で、顔見知りの他国の監督からこういわれたという。
「君たちが強いのは承知している。うちのチームは敵わない。だから、初回から四球を選んで出塁し、バントや盗塁をして延々と攻撃するのをやめてくれないか。そんな攻め方をされては、投手を早いうちに替えなければいけなくなる。うちは投手が4人しかいない。そんな調子で1試合に3人、4人と使ってしまうと、以後の試合に投げる投手がいなくなってしまう」

指導者はその申し入れを承諾し、その国との対戦ではバント、盗塁をせずに早いカウントで打つように選手に指示をしたという。その結果、スコアは意外な接戦になったが、それでも日本は楽勝した。

これは正しいのかどうか。「勝つための最善の手段を選択する」というスポーツの基本にのっとれば、そうしなかったと言えるかもしれない。しかし「相手に対するリスペクト」という点では、スポーツマンシップにのっとっていると言えるのかもしれない。




少年野球では、この手の試合はそこらじゅうで見受けられる。試合前の練習を見ても、明らかに力の差があると思われる対戦で、強い方のチームが四球、バント、盗塁を多用し、あっという間に大量点を上げるのだ。
そういうチームは往々にして、相手に罵声を浴びせる。フライが上がれば「落とせ」という。相手が失敗すれば歓声を上げる。率直に言って不快である。

もう一つの問題は、この手の四球、盗塁、バントを多用する日本野球は、国際大会で強いのにもかかわらず、他の国がほとんどそれを追随しないということだ。
北米や中南米の国はもちろんのこと、アジア圏もそうなのだ。韓国や台湾には、日本の指導者がたくさん行ったが、これらの国でも日本のスタイルは定着していない。
これはなぜなのかも考える必要があるだろう。

私の中で、結論は出ていないが「日本の野球は面白くない」「選手の能力を発揮することができない」という批判があることも考慮すべきだろう。またアジアの選手は、現地で話を聞くと「バントをするのを打者は嫌がる」「四球で歩く指示を出しても、それでは給料が上がらないと不平を言う」のだという。

日本野球は飛田穂洲の「一球入魂」がベースになっている。体の大きな外国=アメリカに対抗するため、足と小技で出塁し、自己犠牲の精神でつないでつないで帰ってくる。
もちろん、スモールボールの思想はよその国にもあるが、これを「無上のもの」として賞賛しているのは、日本人だけだということも考えるべきだと思う。