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ゲーム・スポーツなどについての感想と妄想の作文集です 管理者名(記事筆者名)は「O-ZONE」「老幼児」「都虎」など。
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「あの一年生女子たち、こええ」
僕が、男子部員たちのところに戻って言うと、先ほどの様子をニヤニヤ見ていた小塚と重野が
 「どうした、副主将」「副主将、だらしねえの」と言った。小塚安行は3年で、重野悟は2年だ。小塚は同じ3年の高村美幸目当てで剣道部にいるので、部活動自体は遊び半分で、副主将も僕にさせているのである。面倒なことはしない主義のようだ。長身だが眼鏡で、剣道には不利だろう。医者志望で、成績もいいようだ。髪を角刈りの短髪にしていて、インテリヤクザ風の風貌だ。重野は僕と同じクラスで、小柄で猿のような顔だが愛嬌があって、成績は悪いが下手な冗談を連発して座を明るくするので女子受けはいい。
ちなみに、高村美幸は女子の主将だ。同じ3年の香坂百合江が副主将である。後は2年の岡崎真弓がいる。高村と香坂は親友で、岡崎は何のために剣道部に入ったのか不明である。剣道の腕は完全に素人だ。練習もさほど熱心でもない。高村は、僕のにらんだところでは男子部主将の八田和宏目当てで入部し、香坂はそれに付き合っただけだろう。だが、ふたりとも部活動自体には真面目である。二年半の部活動経験で、剣道の腕もそれなりに上がっていると思う。
 「だが、まあ、女子部が5人になってめでたい」と八田主将。
 「男子部も頑張って後ひとり勧誘するか。そして、秋の県大会初出場だ」と、冗談めいた口調で小塚が調子を合わせる。
 「で、男女合同で夏季合宿、と」と続けたのは重野。
 (いやいや、夏季合宿は別の予定があるので)と僕は心の中で言う。もちろん、そちらがどうなるかはまだ不明である。
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「僕が話してみましょう」と僕は八田主将に言って、新入部員ふたりのところに行った。まあ、有名な美少女である八田和代と話してみたかったというスケベ心である。餌場に飛び込んできたひな鳥を放っとく狼はいないだろう。もっとも、八田和代は気が強いことでも有名らしいから、ひな鳥はこちらかもしれない。
 「やあ、初めまして。副主将の村上公介です」
 ふたりの新人はぺこりと頭を下げた。
 「八田和代です」
 「沢村南です」
 沢村と聞いて、僕は相手の顔を見た。非常に整っているが、鋭い眼の印象は、沢村恵に似ている。
 「あのう、もしかして、沢村恵の妹さんかな?」
 「はい」
学年が一学年しか違わないということは、いわゆる年子だろうか。つまり、彼女たちの母親が二年連続で子供を産んだわけだ。この少子化時代には珍しいが、まあそれは家庭のプライベートな話だ。
 「なるほど、顔が似ているね」
 「そうですか」
 にこりともせずに言う。そういうところも姉と似ている。
 「実は、君たちにお願いがあるんだが、男子をこの剣道部にひとり勧誘してくれないかな」
 「なぜですか」と南。
 「5人いれば大会に出場できるんだが、僕たちがいくら勧誘しても、なかなか入らないんだ」
 「大会に出場できるというのは、先輩たちの都合ですよね。入るほうがそれで入る気になるかどうか」と和代。こちらも手厳しい。性格が似ている。
 「まあ、確かにそうだな。剣道部のメリットと言っても、男の子には、チャンバラ遊びだから、楽しいよ、と言って誘うしかないが、君たちはまだほとんど経験が無いだろうから、そう誘うわけにもいかないか」
 「和代は未経験ですが、私は経験が3年あります。中学時代はずっと剣道部でした」
 僕は南のにこりともしない顔を見た。そういう顔を見ると、何だか、この子に嫌われているような気持になるが、その根拠の記憶は無い。
 「先輩にとって、剣道とはチャンバラ遊びですか」
 別方向から敵襲が来た。
 「まあ、そうだな。楽しいから、遊びと言っているんだが、そういうのはダメかな」
 「少し不真面目だと思います。体を鍛え、精神を鍛えるものではないのですか」
 「精神ねえ。まあ、精神を鍛えれば強くなるとは思うけど、どうしたら精神が鍛えられるか、僕は分からないなあ。まあ、主将にでも聞いてごらん」
 と言って、僕は早々に退散した。これほど難敵だとは思わなかった。

夏季合宿(何の合宿だ)の件は、一学期終了日までに各自家の者と相談して、参加できるものだけ参加する、ということになった。ちなみに、それは来週の土曜日である。
 期末試験終了後は半日授業になるから、後10日ほどは放課後は完全な自由時間だ。男連中はゲームセンターに行く者が多いが、僕はその方の趣味は無いので、図書館で本でも読むか、格技場で剣道部の自由練習に参加する予定だ。まっすぐ家に帰っても特にやることも無いからである。
 剣道部に入ったのは高1からだから、キャリアは浅い。しかし、剣道部の副主将である。まあ、周りのレベルが低いし、部員が少ないせいもあるが、実力的にも、おそらく僕のほうが、3年生で主将の八田和宏より強いと思う。というのは、例の思考速度の問題だ。
 思考速度が速いということは、相手の構えを見て、そのどこに隙があり、どこに攻撃する意図があるのかが即座に分かるということで、これは剣道においては絶対的に有利なのである。
 僕のプレースタイル(笑)は「音無しの構え」あるいは「音無しの剣」と言われている。相手の竹刀とほとんど打ちあうことがなく、一本を決めるからである。つまり、竹刀と竹刀が打ちあう音がしないわけだ。時代小説の「音無しの剣」というのも、実際にはそういう「読み」の問題だったと思う。だが、他校との試合経験もほとんどなく、部員が4人では大会出場もできないので、井の中の蛙の鳴き声比べである。
 まあ、剣道は僕にとっては「体を鍛え、健康を維持する」のが第一目的で、第二には「面白い遊び」だから、大会出場などしなくても、部員(女子部員3人も含む)たちと掛かり稽古をしているのが楽しいのである。部の顧問など、剣道のけの字も知っているかどうか怪しい。

 半日授業になって初めて剣道場(正しくは格技場)に行くと、珍しいことに剣道部への入部志望者がいるようだ。それも女子2人である。女子は3人だけなので、部員が増えると嬉しいだろう。5人いれば大会にも出られる。いわゆる「先鋒、次鋒、中堅、副将、大将」という奴だ。これは柔道と同じである。
 主将に聞いて見ると、入部希望者は主将の妹とその友人らしい。ということは、一年生の美少女で有名な八田和代が剣道部に入るわけだ。しかし、彼女は中学時代は体操部で、県大会でも上位入賞して、アイドル並みの人気の美少女だ。それがなぜ剣道部という汗くさい部に入るのか。
「体操では自分には才能がないと感じたらしい。まあ、何か思うところがあるのだろう」
「男子もあとひとり勧誘して大会に出ますか。女子だけ出場では男子のメンツにかかわるでしょう」と僕がからかうと、主将はううむ、と本気で悩む顔をした。真面目人間なのである。



 家族紹介のところで書き忘れたが、僕には祖父がいて、父の父である。年は60数歳だろうが、正確には分からない。たぶん63歳だろうか。祖父は隣県の郊外というか、田舎の一軒家で一人暮らしをしている。或る企業を60歳で退社して、年金暮らしの隠居暮らしである。退職金が、田舎の土地付き一軒家になったわけだ。家の裏に畑と庭を作って、いわゆる晴耕雨読の暮らしだ。父からは同居を打診されたが、一人が気楽だと断ったようだ。
 まあ、異常なほどの健康体なので、病気の心配は無さそうである。何しろ、60歳を超えた今でも筋骨隆々たる体(のはず)である。(別居前に見ただけだから、半分は想像だが、引退前は毎日ジムに通って体を鍛えていた。)父が電話で聞いたところでは、毎日、木刀を何百回も振り、畑では鍬を朝も昼も振っているという話である。また、毎朝のように、近くの丘や神社まで散歩しているらしいから、足腰も達者だろう。
 期末テストが終わって成績発表があったら、すぐに夏休みに入るが、今年の夏は僕はこの祖父、健太郎のところに行くつもりである。祖父の住むところは、南には海、北には山という、自然に恵まれたところなので、そこで英気を養おうというか、遊びに行くわけだ。
 「という予定だ」
と、岳弥に言うと、たまたま近くでそれを聞いた伊達達也が、「おい、何だそりゃあ、羨ましすぎるぞ」と割り込んできた。
「お前の家は金持ちなんだから、グアムだろうがサイパンだろうがどこにでも行けるだろう」と僕。
「いやいや、外国というのは気が休まらない。やはり、日本の夏は日本の田舎に限る。どうだ、このクラスから何人かで夏休みツアーといかないか。何しろ、お前の爺さんの家なら、宿泊費はタダだろう」と、金持ちにも似合わないケチで図々しいことを言う。
「食費と交通費は、俺が全部持ってもいい」と付け加えたところは、図々しいのか鷹揚なのか。
「ただし、女子限定だ。男のカネは出さん」
「まさか、女子が男子と一緒に宿泊旅行などできんだろう」
「だから、できる奴だけ参加だ」
大声で言っていた達也の話をクラス全体が耳を盗聴器にして聞いていた。
「ねえ、その話、本気なの」
と言ってきたのは、眼鏡美人で口の悪い須田飛鳥である。
さて、話を現在時点に戻すというか、時点を明示するなら、現在は、初夏7月である。まあ、旧暦なら7月は秋だが、今の暦なら夏もまだ初夏だろう。
で、時は夏、日は午後、午後は2時、教室に静寂が満ち、期末テストの真っ最中で、結果はたぶん天にしろしめす神だけが知っているだろう。だが、僕の予想では毎度のごとく、僕がトップで、2位が赤木恵子だろう。あるいは藤堂岳弥あたりか。
今は物理のテストが始まって5分だが、例によって伊達達也が席から立ち上がり、教壇の教師に答案を出して教室を出て行った。僕は解答は終わり、記入も終わっていたが、こんなに早く答案を出し、それが満点近いとなると、あまりに異常だろう。そこで、座ったまま、考える風情で片手で頬杖をつき、横目で窓の外の白い雲を眺めていた。当然、思考速度は平常時のゆったり速度だ。「おおい、雲よ」なんてね。昔、国語の教科書で知った詩だが、作者名は忘れた。僕の記憶力など、その程度のものだ。しかし、青い空に白い雲なんて、人生の最高の贅沢ではないだろうか。それを眺めもしない、いや、眺めることも許されず、テスト用紙の前で頭を抱えて苦しんでいる高校生たち。大島弓子の「リベルテ144時間」を思い出した。
やがて藤堂岳弥が答案を提出したので、僕もそれに続いて提出し、教室を出た。赤木恵子はいつも時間ギリギリまで粘るので、そちらに合わせる気はない。要するに、僕のクラスには学年の成績1位から3位がいるわけだ。4位以下は成績の数字がかなり離れるので、名前も覚えていない。
岳弥が、4番の問題の答が何だったか、聞いてきた。僕がある数字を言うと、岳弥はホッとした顔をした。悪い奴ではないが、成績にこだわりすぎるのが欠点と言えば欠点だ。何しろ、東大合格がこいつの家では絶対的使命のようなのである。岳弥本人は、名前に似合わず小心な常識人だ。頭自体は伊達達也にかなり劣ると思うが、学校でも家でも机にしがみついて勉強しているらしい。ややどもりで、風采もあまり上がらない小男である。内向的な性格だが、勉強の上での疑問のことを僕によく聞いてくるので、クラスの連中は彼と僕が友達だと思っているらしい。逆に、赤木恵子はなぜか僕にはあまり近寄らない。わりと好みの顔なので、そこは少し残念だ。ちなみに、僕のクラスには女子が8人いるが、みなそれぞれに可愛い。もちろん、美少女と言えるレベルの子は沢村恵と須田飛鳥くらいだが、他の子も水準以上で、いわゆる「普通に可愛い」女生徒ばかりである。で、実は僕が一番関心を持っているのは、陰で氷の魔女と言われている、謎の美少女、沢村恵である。名前のイメージだと小柄で可愛い、愛嬌のある少女を思わせるが、その反対に、170センチ近い長身で、無口で、いつも顔を伏せ加減だが、まともに正面から見ると眼つきが鋭い。昔の漫画なら、不良少女グループの番長のイメージである。教室では孤立気味だが、なぜか須田飛鳥とだけは話をする場面をたまに見る。須田は度胸があるから、沢村を怖がらないのだろう。伊達達也も彼女によくちょっかいをかけるが、ほとんど無視されている。



まあ、学校の勉強など、たいした問題ではない。学校でトップだろうが、日本の高校生全体では僕より成績のいい人間は無数にいるだろうし、その中には真の天才もいるだろう。あるいは、努力の天才がいて、コツコツと努力を積み重ねて人類全体に貢献するような偉大な成果を上げるかもしれない。
僕は単に思考速度が速いだけで、頭そのものがいいわけでもないから、せいぜいが学校のテストで上にいるだけのことだ。記憶力も、まあ、普通よりはかなり上だと思うが、或る種の人のように一度見た本の内容を写真のように覚えているとか、一度聞いた人の話を正確に覚えているわけでもない。つまり、本来の記銘力自体はさほどでもないが、覚えるべきことに関しては何度も頭の中で同じことを繰り返すので、結果的に想起力はかなりすぐれているかと思う。要するに、普通の努力家が、同じことを何度も繰り返して覚えるのと事実上は同じことをしているが、それがほとんど一瞬でできるだけのことだ。幸い、頭の中で同じことを繰り返して記銘する作業をさほど苦痛には思わない。一瞬でできるのだから苦痛なはずもない。
僕が、周囲の生徒の中で、本当に頭がいいなあと思うのは、今のところひとりだけである。名前を伊達達也と言って、戦国時代の大名の伊達政宗の子孫だと称しているが、本当かただのホラかは分からない。学校の成績は中程度で、成績から言えば頭がいいようには見えないが、こいつの場合は「まったく努力しないで」その成績なのである。一応、うちは県下でトップの進学校だから、これは凄い天才なのかもしれないと僕は思うわけである。
で、こいつの思考法はまったく独特で、実は「考えてもいない」のである。つまり、すべて直観で決めるのだ。だから、試験の際にかかる時間は僕以上に早い。ただし、僕は目立たないようにするため、試験で解答が終わってもすぐには席を立たないので、本当は僕のほうが早いかもしれない。それにしても、伊達の速さは異常である。もちろん、計算作業が必要な問題はすべて0点である。だが、直観だけで解いているのに、国語も英語もほとんど満点なのである。社会科は平均点くらいか。数学や物理の計算問題も解けるようになれば、東大も楽勝で合格するのではないかと思うが、その気は無いようだ。そもそも大学に行く気すらないかもしれない。というのは、家がかなりの富豪で、大学に行く必要もまったく無いからだ。親の事業を引き継いでもいいし、自分で起業してもいい。まあ、東大文系にでも合格して箔をつけて、即座に退学するかもしれない。
ちなみに、かなりハンサムで愛想もいいが、少し皮肉屋風というか、シニカルな顔つきである。いつもクラスでは馬鹿話しかしない。女の子にもよく話しかけて冗談を言うので、女の子人気も高い。ただし、真面目女子たちからは敬遠されている。その中で誰かが言ったとされているが、「うっかり近づいたら妊娠しそう」ということらしい。正確には「妊娠させられそう」だったか。
まあ、そういう厳しい、かつ皮肉な言い方をするのは、眼鏡の委員長の須田飛鳥だろうな、と僕は推測している。ちなみに、彼女は生徒会の会計もしている。一応は眼鏡美人であるが、男生徒からは怖いとも言われ、その怖いところがいい、あの顔と声で罵詈讒謗を浴びせられたい、という奴もいる。

さて、遅くなったが、自己紹介をしておく。とは言っても、全部正直に話すわけではない。そもそも、真実と嘘にどれほど違いがあるだろうか。くだらない真実と、面白い嘘・美しい嘘のどちらが価値があるか。まあ、人生はくだらない真実の連続だからこそ自殺する人間があれほど多いのだろう。聖徳太子ではないが、「世間虚仮(こけ)」と思って生きる、つまり我々が生きる人生や社会というのは一種の虚構だと思って生きるほうが人生に押しつぶされることは少ないだろう。言い方を変えれば、「事実はあるが真実というものはない」という哲学である。「真実という思想自体が虚構である」とも言える。あらゆる哲学も、神学や宗教や科学も「完全な虚構」か「当座の事実」でしかないわけだ。生きるための素材であって、「真実」という偉そうなものではない。
 脱線が長くなったが、この話全体が脱線なので、本線なるものがあるかどうかは怪しい。まあ、とりあえず、「お話」としての形骸を話しておく。

 僕の名前は公介(こうすけ)としておく。年齢は17歳の高校二年生だが、精神的には117歳くらいの感じだ。「若くして心朽ちたり」である。まあ、あまりに本を読み過ぎたために人生や社会や人間にあまり希望を持てなくなっただけだ。若さの健全性というのは、無知から来るのではないか。ただ、本を読むこと自体は面白いし、楽しい。ノンフィクションや科学書も含め、それが虚構だからこそ楽しいのである。思考速度が速いのは、読書能力も飛躍的に高めるのだが、それは単に読書速度であって、理解度ではない。だから、僕が読書から得るものも、単に凡人が読書から得るのと大差はない。本の中で理解できない部分があると、自力で考えるが、考えても理解できないことも多い。理系の本などはそれが多い。宇宙物理学などその最たるもので、その大半は大嘘ではないかと僕は思っている。しかし、高校教科書レベルなら、まず理解できるから、テストでの成績は入学以来ぶっちぎりでトップである。
 父親は普通の会社員で、建設会社の重役をしている。元は設計技師だったようだ。母親は専業主婦である。子供は僕が長男で、下に妹(中3)と弟(中1)がいる。二人とも学校では上位の成績だが、トップになったことはない。

これから僕が話すのは、まさに「時間の問題」だから、この話の題名も「時間の問題」にしたわけだ。「何かが起こるのはもはや時間の問題だ」、という慣用句のあれではない。
 時間感覚がひとによって違うというのを知らない人が多いと思う。素晴らしいスポーツ選手で、瞬間のうちに素晴らしい判断をし、素晴らしい身のこなしでファインプレーをする選手がいるだろう。実は、あれは時間感覚が普通の人と違うのだ。で、身体の運動速度が速く見えるのは、実はその時間感覚に身体がついていくだけなのである。これは修練でもある程度は身に付くが、たいていは生まれつきである。
 僕の場合は、身体運動速度は普通である。だから、スポーツは不得意ではないが、まあ普通だ。
 違うのは、思考速度である。おそらく普通の人間の10倍から100倍くらいの思考速度があると思う。他の人の思考速度は知ることができないから、正確にどれくらい違うとは言えない。
 まあ、「東京大学物語」という漫画で思考速度のことを描いていたが、思考速度が速いから頭がいいというわけではない。ただ、思考時間がほぼ無限に使えるので、テストなどではかなり有利なことは有利だ。しかし、「知識の中に無いものは、いくら考えても出て来ない」のである。だから、勉強しない限り、それをテストには生かせないという、あまり華やかさのない能力である。
 だが、テストなどでは時間がほとんど無限に使えるから、知っていることに関しては100%答えられるし、数十回考え確認してから答えを書くのでそれが間違いである可能性もゼロに近い。国語などでたまに教師と「見解の相違」があって×を貰うことがあるだけだ。
 で、仮に人生が頭の中だけだったとすると、僕は不老不死の人間に近いのだが、あいにく人生は頭の中だけでは何一つ解決しない。外界との関係ですべて決まるのである。
 念のために言っておくと、僕の思考速度は操作可能で、思考速度を速くしたいと思った時に速くなるのである。そうでないと、他人との会話の反応速度の違いから、僕の異常な才能がバレてしまうだろう。それは避けたい。というのは、僕は思考速度以外の点では天才でも何でもなく、「努力しないと知識を拡大できない」普通人であるからだ。つまり、僕が思考の速度を操作するのは基本的に勉強の時とテストの時だけなのである。まあ、何か途方もない事件が起こって、思考速度を最大限に速くする必要がでてきたら、それも面白いかもしれないが、それは「危険が迫った場合」なのだろうから、あまりそういう羽目に陥りたくもないのである。
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