今年もアングレーム国際漫画フェスティバルの季節がやってきた。今年は1月24日(木)から27日(日)にかけてフランスの地方都市アングレームを舞台にバンド・デシネ/コミックス/マンガをめぐるさまざまな催しが行われる。同フェスティバルが始まったのは1974年のこと。以来、毎年1月末に行われ、今年で第46回目を迎える。


フェスティバル開幕前夜の昨1月23日(水)には開会式セレモニーが開催され、その中で毎年恒例のグランプリ発表が行われた。栄えあるアングレーム国際漫画フェスティバル2019グランプリに選ばれたのは、日本が誇る女性マンガ家高橋留美子である。



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今年のグランプリは2段階の選考を経て選ばれている。第1段階では1月8日から13日にかけて、世界中のマンガ家たちがこれはという作家の名前を3名書いて投票。それが集計され、上位3作家に絞り込まれ、その結果選ばれたのがフランスのバンド・デシネ作家エマニュエル・ギベール 、日本のマンガ家高橋留美子、アメリカのコミックス作家クリス・ウェアの3名だった。いずれも名実ともに世界を代表するマンガ家である。


グランプリの最終選考に選ばれた3作家。左から
エマニュエル・ギベール 、高橋留美子、クリス・ウェア

第2段階では最終選考に残った3作家を対象に改めて1月16日から20日かけて世界中の作家たちが投票を行った。投票総数は1672票にのぼったとのこと。


アングレーム国際漫画フェスティバルで日本人マンガ家がグランプリを受賞するのは2015年の大友克洋に続いて2人目。実はそれ以前、2013年に鳥山明がフェスティバル40周年記念グランプリを受賞しているので、それを含めると3人目ということになる。


また、近年状況が変わってきているとはいえ、世界的に見るとマンガの世界には女性作家が必ずしも多くないということもあり、同フェスティバルでは男性作家のグランプリに比して女性作家のグランプリが極端に少ない。正規のグランプリでは2000年にフロランス・セスタック(Florence Cestac)が受賞、それ以外では1983年にクレール・ブレテシェ(Claire Bretécher)がフェスティバル10周年記念グランプリを受賞しているのみである。2016年にはグランプリの事前選考30名の中にひとりも女性作家が含まれていなかったこともあり、フェスティバルが世間の批判を浴びた経緯もある。そういった意味でも、今回日本人の女性マンガ家である高橋留美子がアングレーム国際漫画フェスティバルのグランプリを受賞したことには大きな意味がある。


高橋留美子作品はフランスでは1980年代後半からまずはアニメで親しまれ、マンガのほうも1994年にグレナ社から出版された『らんま1/2』のフランス語版を皮切りに連綿と出版され続けている。高橋留美子のグランプリ受賞は、日本のファンのみならず、フランスのファン、ひいては世界中のファンにとってうれしいニュースだろう。


ちなみに、今やフランスではバンド・デシネならぬフランス人が描くMangaもかなり出版されているのだが、それらのMangaを描く作家の中には高橋留美子の影響を強く受けているという者も少なくない。例えば電子書籍で邦訳が読めるエルザ・ブランツもそういった作家のひとりである。


エルザ・ブランツ『セーブ・ミー・ピティ』 はこちら


グランプリ受賞者は翌年のフェスティバルでポスターを描いたり、関連イベントが組まれるのが慣例である。来年のフェスティバルが今から待ち遠しい。


なお、こちらのページでアングレーム国際漫画フェスティバルの歴代グランプリをチェックすることができる。


いきなりのビッグニュースに沸いたアングレーム国際漫画フェスティバルが始まるのは本日1月24日(木)から。フェスティバルを通じてさまざまな賞も発表されるから、そちらも要注目である。