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ゲーム・スポーツなどについての感想と妄想の作文集です 管理者名(記事筆者名)は「O-ZONE」「老幼児」「都虎」など。
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佐藤秀峰という漫画家は「ブラックジャックによろしく」しか読んだことがないので、「海猿」はもちろん見ていない。漫画だけでなく、映画もである。しかし、下記文章に書かれた漫画家と編集者の確執は、すごい。漫画雑誌編集者の横暴ぶりというのはいろいろなところで聞くが、編集者という連中にはクリエイターへの尊敬心よりも嫉妬心と、それの反動としての「上から目線」というのがあるようだ。つまり、「俺、買い手、お前売り手、だから俺が偉い」という意識だ。べつに編集者が金を出すわけではないが、「金を出す側」の一員であるというだけで、相手より偉いような気分になるわけだ。


(以下佐藤秀峰のブログ、あるいはウェブ日記より引用)


さて、今回の映画のエピソードの原作該当部分は、原作の最後のエピソードでもある飛行機事故を扱ったものとなっています。


当時、作品を連載していたヤングサンデーは編集長が交替し、元少年サンデーの編集長がその座に納まると、雑誌の編集方針が少年誌的な健全路線に切り替わり、それまで雑誌を支えてきた人気作や青年誌らしいダークな雰囲気の作品が次々と打ち切りになり、代わりに良くも悪くも毒のない作品ばかりが連載開始になるという時期でした。

僕はヤングサンデーの前衛的で尖った部分が好きだったので、編集部への不信が少しずつ募っていました。
度胸星を打ち切りにするとか「アホか!」と。

その後は結果を見るまでもなく、次々と優秀な作家を他社に引き抜かれ、ヤングサンデーは空洞化し休刊となってしまいました。
ヤングサンデーの人気作だけを引き継ぎ、良い所取りをしたはずのスピリッツも順調に発行部数を下げ、小学館随一の赤字雑誌のようです。

…って、蛇足でしたね。



「海猿」連載時の作品制作環境について言うと、そんな編集方針を反映してか、雑誌掲載時に台詞は勝手に替えられるし、人が死ぬシーンは描いてはいけないだとか、いろいろありました。


物語は展開上、夜間、飛行機が海上に着水することになっていたのですが、ある時、打ち合わせの席で担当編集者に「暗い海上に飛行機を誘導するために、近くの漁港から漁船が集結して海上を光で照らし出すシーンを描け」と言われました。

僕は「リアリティ的に考えて、何千、何万トンという鉄のかたまりが空から落ちてくる真下で漁船が待機するという状況は、二次災害を引き起こす可能性があるのであり得ないし、海上保安庁が避難命令を出している海域に漁船が立ち入ること自体、迷惑でしかない」ということを蕩々と説明したのですが、「いや、その危険を返り見ず、”それでも!!”と漁師たちが集結するシーンが読者の感動を呼ぶのだ」とゴリ押しされまして、「いや、今の説明を聞いたら分かるでしょ…?現実的に無理なんですってば。着水地点なんてちょっとの操作で何十メートルかずれてしまうんですから…」と言い返しました。

そうすると今度は「これは漫画だ!リアリティなど関係ない!それ以外描かせない!!」と居直られてしまい、「それって自分の意見じゃないですよね?これだけ論理的に説明してあり得ないということが分かったのに折れないって、編集長のアイデアでしょ?上から命令されて言わされてませんか?」と聞き返しても、「自分の考えだ」と曲げず、「じゃあ、今の話聞いたらわかるでしょ?自分の頭で考えて無理ですよね?」「それでも~~!!」「だから…」「それでもぉぉぉ〜〜〜!!!!」と無意味な押し問答を何時間もしたことがあります。



結局、僕はそのようなアイデアは採用せず、海上に漁船は集結させませんでしたが、出来上がった原稿を見て、当の編集者が「すごい迫力ですね~、ここに漁船を並べるのは無理ですね~…」とつぶやいたので、呆気にとられて「いや、だから最初から言ってたじゃないですか…」と言った所、「あれは編集長のアイデアなんで」とあっさりとネタばらし(?)責任転嫁(?)をするではありませんか。

「じゃあ、編集長と最初から話させてくださいよ、あなたと話しても無駄じゃないですか」とさすがに言ったのですが、「自分がネームにOKを出さなければ、佐藤さんの原稿は雑誌に載らないんですよ。それじゃ困るでしょ?」と「何それ脅迫?」みたいなことがありまして、しかも、「あの打ち合わせでの議論があったからこそ、この迫力のあるシーンが生まれたのだ」と自分のおかげ的なことまで言い出します。

僕は「だから全部無駄なんですよ…。無駄な議論に付き合わされてるだけなんですってば…」と怒鳴りたいのを我慢して無理に押し殺した声で言い返しましたよ。
無理に押し殺すから呼吸も変になって、プルプルしちゃったなぁ…。



すると「佐藤さん、あなたは作品のことを考えてるんですか?作品に向き合えないならあなたと話しても無駄ですね」と返してきます。
「それはこっちが言いたい台詞だよ!」と拳を握りしめながら、「そっちこそ編集長にかわいがられたいだけで、作品のために仕事してないじゃないでですか…」とさらにプルプルして吐き捨てるのですが、相手は言い返す言葉がなくなると、今度はなんと睨みつけてきます。

「睨まないでくださいよ…」と言うと、急にガラが悪くなって「お前何歳だよ?年上に人間に向かってなんだ、その態度」とべらんめえ調で話にならないので、「もう帰ります」とファミレスの席を立つと、「帰りたいなら帰れよ。その代わり二度とウチの雑誌に載せないからな」とかなんとか。
小学生かよ、と。




かと思えば、物語中で飛行機が海上着水して機体が真っ二つに裂けている画を描いているのに、「乗客を一人も死なせず、全員を救出する展開を描いてください」と言ってきたりもしました。
当然、無理ですし、全員生還する話を描くのであれば機体は絶対に真っ二つにしてはいけません。
冒頭の映画のポスターを見ても分かるように、あの状態で一人も犠牲になっていないという状況は荒唐無稽にも程があるってものです。
「無理です」「それでも!!」「いや、無理ですってば…」「それでもぉぉぉ〜〜〜!!!」とまたコントのようなやり取りに突入です。




それが何度も何度も続くので、編集方針もなんだかおかしいし「やってられっか!」ということで連載終了を申し出たのですが、「海猿」は健全路線に軌道修正して引き延ばすのが編集部の方針であったらしく、申し出は当然のごとく無視されまして、仕方がないのでストライキを決行した所、その編集者が仕事場のマンションの前で見張っているようになり、一日に何十回も電話をかけてきたり、「一生どこでも漫画を描けないようになりますよ」と留守電にメッセージを残されたり、家から外に出ることもできないような状況が何日も続き、まぁ、それはその編集者の暴走であったりもしたのですが、すっかり漫画を描くことに嫌気がさしてしまいました。



という訳で、「漫画家なんてクソだ!こんなのクリエイティブでも何でもねぇ!出版社の奴隷だ!豚のほうがよっぽど純粋だぜ!ゴキブリのほうが人生に真実な気がするぜ!もう漫画家なんてやめてやる!だけどその前に雑誌に載せられないようなどす黒い物を叩き付けてやる!載せれるもんなら載せてみやがれ!!漫画家をなめんなよ!!殺せよ!!オラァ!!」と破壊衝動を叩き付けたのが、今回の映画のエピソード部分です。

えーと…、「という感じで描いてたので、映画にもそれを反映させてください」と僕が映画のプロデューサーさんにお願いしても困りますよね。

僕は映画の成功を眺めながら、こっそり周囲に自慢するくらいが身の丈にあっている気がします。




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