斎藤は沈み込むような、高校時代のフォームに戻そうとしている(撮影・リョウ薮下)

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 【野球放浪記】プロ7年目を迎えた日本ハム・斎藤佑樹投手(28)が米国時間2日、アリゾナキャンプで初のブルペン入り。捕手を座らせて51球を投げ込むなど精力的に動いた。


 今年のテーマは、甲子園を沸かせた早実3年時や大学日本一に導いた早大1年時にみせていた、軸足の右膝を曲げ、膝の力で体を前に推進する投球フォームへの回帰。筆者がずっと疑問に思っていたところだ。


 早実時代のフォームを見たとき、斎藤の体形に向いていると思った。身長176センチ。投手としては大きいといえない。オーソドックスなフォームで投げれば、球に角度がつかず軌道がフラットになるため打者は怖さを感じない。


 だが膝を曲げることで体が沈み、膝の力で体を前に押し出す。球持ちが長く、初速の勢いのまま打者に到達。スリークオーターからの軌道も低いところから低めへ。打者は打ちづらそうだった。


 167センチの“小さな巨人”ヤクルト・石川雅規投手が「ボクみたいに低いところから低めに投げる投手はそうはいない。武器でもある」と話していたことを思い出し、斎藤のフォームは理にかなっていると思った。


 ところが早大3年時のフォームを見た際、アレ?と思った。右足をピンと伸ばし腕も上から振り下ろすスタイルに変更。理由は投球に角度を付けるためと聞いたが、前に踏み込む左足がすぐに着地する“突っ立ち投げ”。球持ちが短く軌道も高く、“おじぎ”する直球にスカウト陣は首をひねっていた。


 そしてプロでも苦戦続き。なぜ以前のフォームに戻さないのか疑問だった。最近になって斎藤が「大学2年時に左股関節を故障した」と明かしたことから氷解。右足から移る体重を左足で支えることができず「ごまかして」投げざるを得なかったわけだ。


 以前のフォームに戻すことには、「加齢で体のバランスも変わってきているのだから難しい」との厳しい意見もあるが、常にスターとして期待され、故障を癒やす十分な時間を取れなかっただろうことを割り引いてあげたい。待ったなしの今年、意地でも逆風を吹き飛ばしてほしい。 (山田利智)