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ゲーム・スポーツなどについての感想と妄想の作文集です 管理者名(記事筆者名)は「O-ZONE」「老幼児」「都虎」など。
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私は山本弘とは趣味が合わないのだが、萩尾望都のこの2冊の短編集については、すべて同感である。彼女はこのころが一番才能があったと思う。

(以下引用)

2010-01-15
『11月のギムナジウム』『ウは宇宙船のウ』
マンガ 少女マンガ SF
 娘に読ませたい本を探しているうちに、本棚からこんなのが出てきた。

萩尾望都『11月のギムナジウム』(小学館文庫)

 1976年、僕が20歳の時に買った本。収録されている9本の短編は、1970〜71年に発表されたもの。

 僕はもちろん『11人いる!』『スターレッド』『精霊狩り』などのSFものも好きなんだけど、実は一番好きなのがこの短編集なんである。

 普通、短編集というと玉石混淆なものなんだけど、この本はどの作品もみんなレベルが高い。ハズレがないのだ。初めて読んだ当時、驚嘆して、「この人は天才だ!」と確信したもんである。

 たとえば「塔のある家」。古い家の塔に住む3人の妖精が、引っ越してきた少女の人生を見つめ続ける話。少女が成長し、幼なじみとの別れ、両親との死別、失恋などを経験し、最後に結婚して子供ができるまでを描ききる。

 たった32ページで!

 濃い。濃すぎる。何で32ページで長編なみのドラマが詰めこまれてんの?

「小夜の縫うゆかた」もいい。こっちは日本の平凡な中学生の少女が主人公。彼女が浴衣を縫いながら、過去のことをあれこれ回想するという内容なんだけど、その日常感覚がリアルで素晴らしい。たった16ページの中に、印象的なエピソードがいくつも詰めこまれていて、その上手さにため息が出る。

 特にストーリーは無いんだけど、これからヒロインやお兄さんやその友人たちがどんな話を繰り広げるのだろうかと想像すると、ここから過去と未来に向かってドラマが広がってゆくのを感じる。

 あと、些細な日常のしぐさを描くのが上手いんだよね。お母さんが「なんの、ほかにぜいたくしとるわけじゃなし」と言いながら布を巻く手つきがほれぼれする。

「雪の子」はエミールというキャラクターが印象的。

 どう印象的かを書くとネタバレになっちゃうんで書けないんだけど、自分の数奇な境遇を明かした後で、「そのことに少しの不満も持ってない」「これっぽっちもきゅうくつな想いなどしなかった」と言い切る姿にしびれた。

 運命と戦うキャラクターもいいけど、ここまで冷静に自分の運命を受け入れているキャラクターも、かえってかっこよく感じられる。

 いちばん衝撃的だったのが「かわいそうなママ」。

 母を亡くしたばかりの少年が、来客に母の思い出を語るという話なんだけど、無邪気な語り口からだんだん背景が見えてくる。ついに少年の口から真相が(さらりと)語られた瞬間、強烈なショックを覚えたもんである。

 十数年ぶりに読み返してみたけど、やっぱりすごい。よくぞこんなインモラルな話を、ここまで美しく描けたもんだ。まぎれもなく大傑作。

 こういう話を21〜22才の頃に描いてたんだよねえ。やっぱりとてつもない天才だわ。

 ちなみに表題作は、僕はてっきり『トーマの心臓』の原型で、これを元にふくらませたんだと思ってたんだが、Wikipediaによれば、『トーマの心臓』の方を先に考えてたんだそうだ。へー、知らなかったよ。

 ちなみに、現在出ている95年版の『11月のギムナジウム』は、76年版とずいぶんラインナップが違い、「雪の子」も「小夜の縫うゆかた」も収録されていないらしい。ご注意。



(「小夜の縫うゆかた」は2008年に出た『萩尾望都パーフェクトコレクションセレクション』9巻に収録されているらしい)

 同時に発掘したのが、『ウは宇宙船のウ』(集英社漫画文庫・1978)。レイ・ブラッドベリの短編小説をマンガ化した作品集。

 これも30年以上前になるんだなあ。当時、連載されていた『週刊マーガレット』を立ち読みしていて、毎回、舌を巻いていたもんでありますよ。

 それにしてもこの頃のマンガって、新作がいきなり文庫サイズで出てたよねえ。何で普通のサイズで出さなかったんだろ。

 僕が感心したのは「ぼくの地下室においで」。日常生活に忍び寄る宇宙からの侵略を描いた話。原作を読んだ時はぜんぜんこわくなかったんだが、萩尾さんの手にかかると、一級のホラーに生まれ変わっていて驚いた。

 特にラスト1ページの「さあ……」というコマのこわいこと。これはマンガでしか使えないテクニックだよなあ。

 せつない怪獣もの「霧笛」、ラストで“死”の意味が反転する「びっくり箱」、悲しくも奇妙な結末が印象的な「宇宙船乗組員」など、どれも忘れがたいんだけど、いちばん好きなのは「みずうみ」。

「みずうみ……みずうみ……タリーを返せ」

 これはおそらく究極のロリコン小説だろう。だって「永遠に歳を取らない12歳の美少女に比べたら、現実の大人の女なんかどうでもいい」という話だもんね。

 しかもこのマンガ版では、萩尾さんの描くタリーの美しいこと! 少女マンガに登場した最強の美少女(誰も勝てない、という意味で)であると断言する。

 ちなみに97年に小学館文庫から再刊されていて、入手可能らしい。未読の方はぜひ。

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