清宮の試合には常に報道陣が殺到

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 今秋ドラフトの目玉といえば、断トツで早実高・清宮幸太郎内野手(2年)だ。現時点で高校通算78本塁打を量産中の長打力もさることながら、人気、コメント力を含めたスター性も抜群。高校卒業後いきなり米大リーグ入りの可能性すら取り沙汰されている。もっとも、スカウト陣の間では“早大進学説”が根強い。さらに、ここにきて肝心の清宮の実力に疑問符をつける声もチラホラあがっているのだ。絶賛と期待の声にかき消されがちな、担当スカウトの本音とは。 (塚沢健太郎)


 寒風吹き荒れる東京・八王子市の早実グラウンド。5日、和泉実監督(55)のもとに新年のあいさつを兼ね、ヤクルト、DeNA、西武、中日、オリックス、ソフトバンクの6球団のスカウトが足を運んだ。2017年の“清宮詣で”がスタートした。


 特にDeNAは欠端、武居両スカウトの“二頭出し”。前日(4日)には高田繁GMが報道陣の前で「今のままで通用するとは思わないけど、打者として魅力はある。ただ、守るところがない(基本的に一塁のみ)。それでも獲りたいところは指名するだろうけど」と消極的な発言をしていたが、どうしてどうして、他球団以上の熱の入れよう。煙幕あり、カムフラージュあり。各球団間の虚々実々の駆け引きがもう始まっているということか。


 一方、“清宮徹底マーク”とも報じられていた巨人のスカウト陣は結局姿を現さずじまい。他球団のスカウトは「来るようなことを言っていたけど、見かけなかったですね」と首をかしげることしきりだった。


 現行のドラフト制度は最終的にくじ引きのため、逆指名制時代のように、あの手この手を駆使して本人周辺に接触する必要はないが、数多くグラウンドに足を運ぶことは“誠意”と受け取られる。そんな中、巨人の不在は、逆に他球団スカウトを「何か思惑があるのでは」と疑心暗鬼にさせていた。


 しかし、清宮の卒業後の進路はプロ入りと決まっているわけではない。それどころか、ある在京球団幹部は「早大に行くんでしょ」と決定事項であるかのような物言い。


 父でラグビートップリーグ・ヤマハ発動機の清宮克幸監督(49)は早大出身。4年時はラグビー部主将として全国大学選手権を制し、監督としても6年間チームを率いた。球界関係者の間では、その父が清宮の早大進学を強く望んでいるともっぱらなのだ。


 巨人・高橋由伸監督がトークショーで「清宮君もだいぶ注目されているので、プロに行くのか、進学するのか。(東京)六大学に入ったら僕の記録(通算23本塁打)を抜けるか見てみたい」と注目発言したのも、早大進学有力の情報が耳に入っているからだろう。


 一方、ある在京球団スカウトは「どの親も、やはり子供はかわいいですから。最後は子供の意見を尊重すると思いますよ」。最終的には本人が希望しているといわれるプロ入りに傾くと読む。


 自身も長崎・海星高時代の1976年夏に怪物右腕投手として甲子園を沸かせ“サッシー”の異名を取ったヤクルト・酒井圭一スカウト(58)は、この日も姿を見せ「プロ志望届を出すか出さないかはわからないけど、見に来るのがスカウトの仕事だから」。プロ志望を前提に足しげく早実に通っている。


 そんな中、清宮の実力には疑問符もつき始めている。前出の在京球団スカウトは「昨秋の東京都大会決勝(11月3日)で、同じ球に5打席連続三振したでしょ。あれが忘れられない」と衝撃シーンが頭から離れない。


 相手は日大三高。左腕・桜井周斗投手(2年)のスライダーにひねられ、バットは空を切り続けた。チームは勝利し春のセンバツ出場を決定的としたが、大事な試合で「左投手のスライダー」という弱点を露呈し、スカウトの評価は変化し始めているという。


 今春のセンバツ(3月19日開幕=甲子園)には国内球団ばかりか、米大リーグのスカウトも目を光らせるはず。「メジャーで本塁打王を獲りたい」と夢を語ったこともある清宮だけに、いきなり海を渡る可能性もゼロではない。いずれにせよ、その動向から目が離せない、清宮の1年が幕を開けた。