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 侍ジャパンが準決勝で散った。試合終了後、小久保裕紀監督(45)は「力を尽くしたと思う。選手はよくやってくれた。感謝したい」と語っていたが、試合前のアメリカ代表指揮官、ジム・リーランド監督の言葉を思い出していたのではないだろうか。

 前日、リーランド監督は侍ジャパンの守備力の高さを称賛し、「ミスをしたほうが負けると思う」と答えていた。自分たちへの戒めとして話していた感もあったが、名手・菊池涼介(27)の失策が侍ジャパンの失点につながった。8回表にも松田宣浩(33)のファンブルが三塁走者を帰還させ、試合を決定づけてしまった。

 「選手は責められません。ただ、守備でリズムを掴めなかったのは、予選6試合との大きな違いです」(現地入りしたメディア陣の一人)

 前日練習でこんなシーンも見られた。緊急招集したクローザー、マーク・メランソンについて話題が及ぶと、リーランド監督は自国メディアからこんな質問を受けた。

 「また、制約が増えるんでしょ?」

 米国人ライターによれば、今回の代表招集にあたって、リーランド監督はかなり苦労したという。日本との準決勝戦で守備についた野手8人は全員、ゴールデングラブ賞の受賞経験者。ホスト国なのに、まだ一度も決勝ラウンドに進出していない屈辱…。メジャーリーグもようやく本気になったのか? 全体会見では「アメリカのために戦うとの思いが強い者を集めた」と語っていた同監督の言葉も思い出されるが、内幕は違っていた。

 「大半の選手と、試合出場に関する契約を交わしているんです。選手本人だったり、所属球団だったりと契約先は異なりますが、契約書があるため、リーランド監督は選手起用に『制約』を受ける形になりました」(米国人ライター)

 その制約を聞くと、たとえば、スタメン捕手は登録したキャッチャーを交互に使う、リリーバーはイニングまたぎをさせない、一度肩を作ったリリーフ投手が登板せず、待機となった場合、二度目の準備はさせないなど…。たしかに、インディアンス所属のアンドリュー・ミラーは、シーズン中、当たり前のようにイニングまたぎをしてきたリリーバーなのに、日本戦では6回途中で出てきて、3分の2イニングを投げたところで交代している。全員ではないが、こうした制約だらけのなかで、リーランド監督は勝ち上がってきたのだ。

 先のメランソンの緊急招集に対し、日本のメディアは「また強敵が加わった」という見方をしていたが、アメリカ側は「どういう制約があって、メランソンを追加招集できたんだ?」と聞きたかったわけだ。

 今さらだが、リーランド監督は96年にマーリンズを世界一に導き、タイガースを指揮した8年間で3年連続地区優勝も果たした名将である。制約があっても必要な選手だから招集したわけだが、「自分の采配でなんとかしてみせる」との強い決意もあったのだろうか。

 同時に、こんな見方もできる。起用法に関する制約を受け入れるのならば、日本人メジャーリーガーも招集できるのではないか…。小久保監督は昨夏、日本人メジャーリーガーのもとに自ら足を運び、侍ジャパン入りの説得を重ねた。その熱意は称賛に値するが、それだけでは国際大会は勝てなくなってきたのだ。

 次の日本代表監督は誰に決まるのか、まだ分からない。しかし、日本人メジャーリーガーの所属球団と対等に話のできる代理人もスタッフに加えるべきではないだろうか。次期監督にはリーランド監督の精神的な強さも見ならってもらいたい。(スポーツライター・飯山満)