巨人、山口俊をめぐる問題が、プロ野球選手会が介入してややこしいことになっている。
時系列で整理すると、今季FAでDeNAから巨人に移籍した山口俊は、故障で出遅れたが6/14のソフトバンク戦でデビュー、以後4試合に投げたが、

7月11日未明、東京・目黒区の病院で警備員の男性に体をぶつけるなどして腰と胸に全治2週間のケガを負わせた上に、病院の木製のドアを蹴って破壊。山口は器物損壊容疑で書類送検された。

7月19日になってこの事件の報告を受けた巨人はこの日、山口を登録抹消、練習もできない謹慎処分とした。

8月18日、巨人は山口を今シーズン終了までの出場停止と、1日につき報酬の300分の1に相当する金額の罰金と減俸の処分にした。山口は3年7億の契約だったが、罰金の総額は1億円を超えるとされた。

8月23日、検察は山口を不起訴処分とする。

8月28日、プロ野球選手会は、山口俊の処分について、重過ぎるとして巨人に抗議し、処分の再検討を求めたことを明らかにした。また、熊崎勝彦コミッショナーと日本野球機構(NPB)の実行委員会に対して、適切な調査や裁定を要求した。

8月29日、選手会の森忠仁事務局長は、トラブル発覚後に球団側から契約内容の見直しを迫られたことを明らかにし「全体のフリーエージェント(FA)の契約見直しにもなるので放っておけない」と問題視した。今回は逮捕事案でなかったことや、すでに示談が成立していることなどから、前例からみても処分が重すぎるとしている。

山口は選手会から事情聴取を受けたが、「もう済んだことだから」と口をつぐみ、選手会の対応に困惑の様子を見せたという。

山口は結局、書類送検されたが不起訴処分だった。MLBでは、こうしたケースは有期の出場停止処分になるのが一般的だ。

MLBでは選手が馬鹿をやったからといって、球団が管理責任を問われることはない。
しかし日本社会では、球団の管理責任が問われるという考え方もあった。野球賭博の際に球団首脳が総退陣したのはこのためだ。ただ、今回は球団は管理責任は負わず、山口一人を厳罰に処した。

確かに、山口の処分は特に金額面で重すぎる。全く異例だ。

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下司の勘繰りをすれば、巨人フロントは、昨年オフの「失敗補強」の損失を、山口俊の処分にかこつけて回収しようとしているのではないか。
今季、巨人主要な新入団選手の年俸と契約。

 マギー 1.9億円 1年
 陽 岱鋼1.6億円 5年15億円 FA
 カミネロ1.4億円 1年
 森福允彦1.2億円 3年4億 FA
 吉川光夫0.95億円 1年
 山口 俊0.8億円 3年7億 FA

FAで取った3選手は故障、出遅れ、不振もあって十分な活躍とは言えない。そのうえ、長期の契約が残っている。ナベツネも怒っているという声が聞こえてくるし、フロントは、山口の不祥事を奇貨として、損失をちょっとでも取り戻そうとしているように思える。
外聞を気にせず、己が保身に走るのは、古い会社にはよくあることだ。みっともないことだ。

この不祥事が、生え抜きの、大事な大事な菅野智之が起こした事件だったら、対応も処分も全く違っていたことだろう。その点でも不公平だ。
山口は、フロントから「お前なんかもういらないんだ、置いてほしかったら何でも言うこと聞け」と迫られたのだろう。

選手会がこれに猛反発したのはよくわかる。こういう処分は前例になるからだ。
酒に酔って暴れた選手が、FA権まで失うということになれば、選手の権利がゆらぐ。一球団が勝手に選手の契約を変更できるとなったら、契約そのものがおかしくなる。

選手会は熊崎勝彦コミッショナーと日本野球機構(NPB)の実行委員会に対して、適切な調査や裁定を要求したが、まあ、これが期待できないんだなあ。
熊崎コミッショナーは右左の顔色を見て、どうでもいい訓示めいたことを言うだけだろうし、球団側の面々が並ぶ実行委員会は、選手会の意見を擁護しないだろうし。

この問題は、すべての選手にかかわりがある重要な問題だが、選手にもそういう意識はないだろう。

山口の処分が少し軽くなる可能性はあるが、大きな動きは期待できないだろう。残念ながら。




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