『セーラー服と機関銃-卒業-』公式サイトより

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 2016年の映画界は、15年ぶりに興行収入200億円を突破した『君の名は。』を筆頭に大いに盛り上がった。しかし影ではファンや評論家からの酷評だらけとなった“爆死映画”もやはり相次いだ。その背景には、企画やPR内容などがもたらした“爆死の悪循環”もあるようだ。今回は、今年の主だった爆死映画を4本振り返る。


■“大根演技”も爆死に影響?評価落とした役者陣●橋本環奈は薬師丸ひろ子・長澤まさみになれず「セーラー服と機関銃 -卒業-」

 一つ目に紹介したいのは、“1000年に一人の美少女”と話題の橋本環奈(17)を主役の星泉に抜擢し、角川映画40周年企画記念作品として映画化されたのが『セーラー服と機関銃 -卒業-』。脇は長谷川博己(39)や武田鉄矢(67)で固められ、3月5日に満を持して発表された。


 同映像シリーズの多くは人気を博してきた。薬師丸ひろ子(52)版はもちろんのこと、長澤まさみ(29)によるリメイク版なども話題になり、“ドル箱コンテンツ”になる気配を見せつつあった。


 しかし2016年の橋本版は、公開2日間の興行収入が約2700万円前後とふるわず爆死。一部観客は「薬師丸ひろ子版への侮辱」「橋本がとんでもないダイコン! おまけに、ハスキーボイス!」「『観ていてしんどい映画』ダントツ1位でした」と怒りまじりの感想を漏らし、「橋本環奈のビジュアル先行」の演出に難を唱える批評も出た。


「橋本が“星泉を演じられなかった”、の一言に尽きるでしょうか。一時期『キムタクはキムタクしか演じられない』と揶揄されたアレと似た感じ。また長谷川は当時、『進撃の巨人』(2015年に2部作公開)でシキシマを演じてボロクソに叩かれた後だった。『セーラー服~』の舞台挨拶でも、どことなく元気なさげな表情が印象的だった」(報道関係者)


●TBSも逃げた!「神の舌を持つ男」劇場版

 テレビドラマが放送された当初から、世の女性たちに「ベロ出しがキモい」「ギャグが寒い」と嫌悪された『神の舌を持つ男』(TBS系)。絶対舌感をもつ蘭丸を演じた向井理(34)は死体でも何でも舐めまわり、「事件の謎は、この舌が味わった」という決め文句を言い放つ。金曜22時枠で放送され、平均視聴率は最低3.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録するなど大コケした。


 それにもかかわらず、最終回直後には劇場版『RANMARU 神の舌を持つ男 鬼灯デスロード編』(中略)の公開が発表された。公開前から爆死予想が絶えず、公開直後の12月3・4日の興行成績ランキングでは、全国272スクリーンで公開されるも8位と無様な結果に(当時、映画『この世界の片隅に』は上映スクリーンが87で4位)。二日間の興行収入は約3100万円を記録しており、その後の経過を見ても“製作費回収のボーダーライン”と言われた20億円どころか10億円を下回る大赤字の模様。


 この「神の舌」シリーズを通じて、『TRICK』『SPEC』『20世紀少年』などエンタメ作品に定評があった堤幸彦監督(61)は、その評価を一挙に下落。またTBSは映画版のクレジットに記載がなく、一部メディアは「(劇場版の)製作費を負担していない」と報道した。


「『神の舌』はドラマと映画が連動した企画だった。PR動画内で、企画書に映画版のスケジュールの記載があったのも有名な話。あまりの爆死っぷりにTBSは結果を考えずに逃亡した」(前出・関係者)


●下馬評どおり!豪華俳優陣でも爆死した『テラフォーマーズ』

 『神の舌』同様、公開前から爆死予想が相次いだのが4月に公開された実写映画『テラフォーマーズ』だ。宇宙船のセットには約1億円を費やし、伊藤英明(41)や武井咲(23)、山下智久(31)、山田孝之(33)らを擁するも見事に砕け散った。


 映画評価サイト「超映画批評」の前田有一氏は、同作について3月、「進撃騒動を上回る可能性すらある」と波乱を予感させるツイートを展開。その後、本サイト上で「長年私が指摘してきた邦画の問題点が凝縮されたような映画である」「あまりに原作破壊っぷりがいきすぎて、腹も立たないほどではあるが、そんなわけで原作ファンは覚悟の上で出かけることをオススメする」と酷評し、100点満点中5点とブッタ切りにした。


 公開後も酷評の嵐となり、伝説の大爆死映画『デビルマン』に勝るとも劣らないという評価まで出た。総興行収入は10億円弱と伸びず、続編の計画は白紙になったと目されている。またネット上では、同作でメガホンを取った三池崇史監督(56)の次回作『無限の住人』や『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』も爆死するのではないかと不安の声が広がっている。


●なぜ作った?“貧乳”西内まりや主演の最新『キューティーハニー』

 人気の巨乳グラビアアイドルを起用したら結果が違ったかも? そう思わせたのが西内まりや主演の『CUTIE HONEY -TEARS-』だ。10月の公開前には西内のハニー姿が披露されるも、巷では「キューティーハニーじゃない」などと非難の嵐。公開日の興行成績ランキングのトップ10に入らず、興行成績は1000万円前後に着地し、案の定爆死した。


 要因には、ハニーの変身シーンの定番台詞「ハニーフラッシュ」の削除や西内の“貧乳”が挙げられている。過去の実写化シリーズは、佐藤江梨子(34)や原幹恵(29)など第一線で活躍していたグラビアアイドルを起用していた。西内版も、せめて同じ路線でキャスティングすれば異なる結果になっていた可能性があるだけに惜しまれる。


「今年の爆死映画は、世間に求められていない、安易な企画が土台になっている傾向がある。まずそこに尽きる。さらに“あの役者の◯◯を起用!”なんて大々的にPRするもんだから、試しに観た人の怒りを買う。さらに主役がダイコン役者だったら槍玉に挙げられる。まさに悪循環」(前出・報道関係者)


 2017年は一体どんな爆死映画が登場し、観客の怒りを買うのだろうか。登場しないことを祈るばかりだが……それはムリな話!?


文・海保真一(かいほ・しんいち)※1967年秋田県生まれ。大学卒業後、週刊誌記者を経てフリーライターに。週刊誌で執筆し、芸能界のタブーから子供貧困など社会問題にも取り組む。主な著書に『格差社会の真実』(宙出版)ほか多数。