ゲーム・スポーツなどについての感想と妄想の作文集です
管理者名(記事筆者名)は「O-ZONE」「老幼児」「都虎」など。
カテゴリー
フリーエリア
最新CM
最新記事
(01/22)
(01/22)
(01/21)
(01/20)
(01/20)
(01/19)
(01/19)
(01/19)
(01/18)
(01/18)
最新TB
プロフィール
HN:
o-zone
性別:
非公開
ブログ内検索
アーカイブ
最古記事
(09/04)
(09/04)
(09/04)
(09/04)
(09/04)
(09/04)
(09/04)
(09/04)
(09/04)
(09/04)
P R
カウンター
その九 魔法使いロレンゾ
ハンスはこれまでこんなごちそうは食べたことがありません。しかも、食後には、砂糖のはいったケーキまででてきました。砂糖どころかハチミツだってふつうの人間にはめったに食べられないころですから、ハンスにとっては夢のようです。
食事の前に、二階からひとりのおじいさんがおりてきていましたが、そのおじいさんはハンスを見て、少しおどろいたような顔をしました。ハンスのほうは、むこうがなんでおどろいたのかわかりません。
「そうか、お前たちはグリセリードに行くのか。わしももう少し若かったらいっしょに行ってみたいところだが、最近めっきり足腰(あしこし)が弱くなってな。もう長旅はむりじゃ」
老人はロレンゾとよばれてましたが、そのロレンゾが言うと、ピエールが聞きました。
「若返りの魔法ってやつはないのかよ」
「あるにはあるが、人間、老いるときには老いるほうがいいのじゃよ。無理に命をひきのばすのは、やらねばならないことがある時だけだ。わしはじゅうぶん生きたから、もうまんぞくじゃ」
「そういえば、ずいぶん老いぼれたようだぜ」
「ピエール!」
とヤクシーが注意します。でも、この話だと、このおじいさんは魔法使いのようです。ハンスは思い切って聞いてみました。
「おじいさんは魔法使いなのですか?」
「そうじゃよ。この国でも一番えらい魔法使いじゃ」
「あれ? ぼくのお師匠のザラストもそう言ってましたよ」
「ザラストか、あれもなかなかやるが、賢者の書が無ければふつうの魔法使いじゃ。その賢者の書はわしがあいつにやったんじゃよ。わしにはもう用がないでの」
ハンスは部屋のすみでリンゴを食べているジルバを見ました。ジルバが言っていた魔法の本とはその賢者の書のことでしょう。
「おじいさん、ぼくに魔法を教えてください」
「お前も魔法使いであることはわかっとったよ。だが、魔法というものは、やりかたを聞いて、すぐにできるものではない。いろいろためして、そのうちにこれだ、というものを自分でつかむしかないのだ。一つができれば、次のものもやりやすくなる。そんなふうに少しずつ力をつけていくのじゃ。体を動かすのとおなじじゃよ。心の使い方を工夫するのじゃ。ある意思をもってなにかをすれば、それがある時、きゅうにできるようになる。すると、それがこれまでできなかったことのほうが不思議に思えるのじゃ」
ロレンゾの言う事は、ハンスにはよくわかりません。ハンスのほしいのは、呪文をとなえたら、なんでもできるような魔法なのです。
その十 魔法の教え
しぶしぶではありましたが、ロレンゾはハンスに魔法をいくつか教えてくれました。その一つは、グラムサイトと言って、ふつうの人間には見えないものを見る力です。たとえば妖精などが見えるし、地底の小人の抜け穴などもわかるそうです。また、隠れた宝物を見つけることもできるそうですが、いつでも思いどおりに見えるとはかぎらないそうです。
「心がちょうど、見たいものと調子があったときに見えるのじゃ」
ロレンゾはそう言いました。皆さんは、ラジオのチャンネルを合わせるようなものだと思えばいいでしょう。
やり方は聞きましたが、ハンスにはなにも見えません。
「そのうち見えるようになるさ。気長にれんしゅうすることだ」
ザラストと同じことを、このロレンゾも言ってます。まったく、ハンスのまわりの魔法使いって、なんて地味なやつばかりなんでしょう。作者のわたしもあきれてしまいます。マンガなら、原子爆弾くらい強力な魔法がどんどんでてくるのにね。
そのほかに、ハンスは空中浮遊の魔法を教わりました。
「もっとも、実はこれはわしも成功したことはない。だが、できたら面白いだろうな、と思っておぼえたんじゃ。れんしゅうすれば、お前はできるかもしれんぞ」
なんだか、たよりない魔法使いです。
「わしはもう魔法にはあまり興味(きょうみ)がないんじゃよ。神さまの作ったこの世界でじゅうぶん満足じゃ。花や木や太陽がこの世にあることくらい素晴らしい魔法はない。人間がどんな想像力をはたらかせても、こんなものは考え出せないのじゃ。それを考えると魔法でカエルを一匹つくりだしたところで意味もないことじゃが、魔法にはそれすらできないんじゃよ」
ロレンゾはそんなことを言います。ザラストもカエルを例にだしましたが、カエルになにか意味でもあるのでしょうか。それとも、二人ともカエルコンプレックスなのでしょうか。(カエルがこの話になにか関係すると思った方は、忘れてください。作者自身が、なんだかカエルってのは魔法的な生き物だな、と思っているだけですから。あの顔も体も魔法使いを思わせます。そうじゃありませんか?)
そのほか、いくつか魔法を教わりましたが、そのどれも、じっさいにできるためにはれんしゅうが必要(ひつよう)だ、ということで、それが本当の魔法かそうでないかは、今のところはわかりません。
ところで、この家の主人マルスは、まだ二十二、三歳の若者でしたが、マチルダのような美人がなんでこんな若者と結婚したのかな、と思うくらい平凡でおとなしい若者です。もっとも、体だけはたくましく、農夫としてはすばらしいはたらきができるだろうな、と思われます。彼は他の人々とあまり話が合わないようで、他の人々の会話が昔話になると、とほうにくれたような顔をします。すると、マチルダが気を使って話題を変えるのです。
PR
この記事にコメントする