ゲーム・スポーツなどについての感想と妄想の作文集です
管理者名(記事筆者名)は「O-ZONE」「老幼児」「都虎」など。
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その五 旅立ち
「ハンス、お前も少しは魔法ができるようになったから、旅に出るがよい。あちこちの国をめぐり歩いて、いろんな魔法使いに会い、魔法の勉強をするのだ。そして、この世界のどこかにある天国の鍵をさがしなさい」
「天国の鍵?」
「生きている人間が、生きたまま天国に行ける鍵だ。これまでいろんな魔法使いや騎士たちが探したが、まだ見つけた者はいない。それを見つければ、この世から悪はなくなり、この世がそのまま天国のような平和な世の中になると言われておる」
「飢えも寒さも、戦争も憎しみも無くなるのですか?」
「そうだ」
「それなら、ぼくはそれを探します」
「まあ、どこにあるかわからぬものだから、気楽(きらく)に気長(きなが)にやりなさい。お前にこれをあげよう」
ザラストはハンスの前のテーブルにいくつかの品物(しなもの)をおきました。
まず、世界地図、それから短剣(たんけん、ナイフのことです)、帽子、マント、長靴、ベルト、上着、ズボン、下着、皮袋(かわぶくろ、これは水筒の代わりです)、薬草や傷薬、少しの食べ物などです。
「それから、ジルバ、パロ、ピントをおともにつれていきなさい。きっとお前の役に立つだろう」
ピントとは犬の名前です。白くてまだ小さな犬ですが、いったい本当に役に立つのでしょうか。
ハンスはさっそくザラストの家をでることにしました。
「気をつけていくのじゃぞ。悪い魔法使いや魔女、泥棒や山賊(さんぞく)がとちゅうには、いっぱいおるからな」
ザラストに手をふって別れをつげ、ハンスは驢馬(ろば)のグスタフにのって進みます。猿のジルバはハンスといっしょにグスタフにのり、オウムのパロはハンスの肩にとまっています。ピントはグスタフの前や後ろを歩いています。時々、かってに走り出して猫や兎をおっかけますが、すぐにもどってくるので、まいごにはなりません。
季節は夏の終わりで、まだ日ざしが強く、街道(かいどう)はほこりっぽい感じです。
夜は野原で野宿(のじゅく)します。火をたいて夜食を食べ、星をみながらねむるのです。マントの下に草をしけば、即席(そくせき)のベッドができますから、土の上でねても体がいたいことはありません。
やがて目の前に大きな山脈(さんみゃく)が見えてきました。これを越(こ)えれば東の国グリセリードですが、この山脈を越えるのはたいへんです。
とりあえず、ふもとの宿屋にとまろうと思いますが、お金はありません。
その六 若者と美女
ハンスは、猿のジルバにたのんで宿屋の前で芸(げい)をしてもらいました。芸とは、たとえば逆立ち(さかだち)とか宙返り(ちゅうがえり)です。ジルバが犬のピントや驢馬のグスタフのせなかの上で逆立ちや宙返りをすると、宿屋のお客さんたちは感心してそれをながめ、芸が終わると、みんな少しずつお金をくれました。ぜんぶかぞえると、七リムと六十五エキュ、七千五百円くらいになりました。
なかでも気前のいいお客は一人で五リムもくれたのです。
その人は感心して言いました。
「いやあ、よく仕込まれた犬や猿だなあ。まるで人間のことばがわかるみたいじゃねえか」
言葉づかいは少し下品(げひん)ですが、気の良さそうな若い男です。もっとも、子供のハンスから見れば、大人はみんなオジサンですが。
「坊やたち、どこから来たの?」
その若者のそばにいた恋人らしい女の人が言いました。こちらは、ものすごい美人です。ハンスは思わずその人に見とれてしまいました。生まれてから今まで、こんなに美しい女の人を見たことはありません。でも、この国の人ではなさそうです。色が浅黒く、目鼻立ちが非常にはっきりしています。目は大きくて、瞳が黒いダイヤモンドのようにきらきら輝いています。きっと南国の人なのでしょう。言葉も少したどたどしい感じです。
「トエルペンです」
男の方が女の人に説明(せつめい)しました。
「トエルペンってのは、アスカルファン中部の町だ。アルプ郡の、三番目に大きい町だな」
この男はアスカルファンの地理にくわしいようです。旅なれているのでしょう。
「で、これからどこへ行くの?」
「グリセリードに行くつもりです」
男の人と女の人はおどろいて目を見合わせました。
「おいおい、坊や、グリセリードがどんなところか知ってるのか? アスカルファンとは仲が悪くて、この前も戦争をしたばかりなんだぜ」
そう言えば、そんなことを聞いたような気がしますが、でも、十歳の子供にとって四、五年前のころの話は大昔です。
「入るのはむずかしいのですか?」
「そんなこともないが、アスカルファンの人間だと知られるとまずいだろうな。殺されるかもしれん」
ハンスは少し考えて言いました。
「じゃあ、口がきけない人間のふりをします。どうせ、よその国の言葉はしゃべれないんですから」
男はその言葉に感心したようです。
「ハンス、お前も少しは魔法ができるようになったから、旅に出るがよい。あちこちの国をめぐり歩いて、いろんな魔法使いに会い、魔法の勉強をするのだ。そして、この世界のどこかにある天国の鍵をさがしなさい」
「天国の鍵?」
「生きている人間が、生きたまま天国に行ける鍵だ。これまでいろんな魔法使いや騎士たちが探したが、まだ見つけた者はいない。それを見つければ、この世から悪はなくなり、この世がそのまま天国のような平和な世の中になると言われておる」
「飢えも寒さも、戦争も憎しみも無くなるのですか?」
「そうだ」
「それなら、ぼくはそれを探します」
「まあ、どこにあるかわからぬものだから、気楽(きらく)に気長(きなが)にやりなさい。お前にこれをあげよう」
ザラストはハンスの前のテーブルにいくつかの品物(しなもの)をおきました。
まず、世界地図、それから短剣(たんけん、ナイフのことです)、帽子、マント、長靴、ベルト、上着、ズボン、下着、皮袋(かわぶくろ、これは水筒の代わりです)、薬草や傷薬、少しの食べ物などです。
「それから、ジルバ、パロ、ピントをおともにつれていきなさい。きっとお前の役に立つだろう」
ピントとは犬の名前です。白くてまだ小さな犬ですが、いったい本当に役に立つのでしょうか。
ハンスはさっそくザラストの家をでることにしました。
「気をつけていくのじゃぞ。悪い魔法使いや魔女、泥棒や山賊(さんぞく)がとちゅうには、いっぱいおるからな」
ザラストに手をふって別れをつげ、ハンスは驢馬(ろば)のグスタフにのって進みます。猿のジルバはハンスといっしょにグスタフにのり、オウムのパロはハンスの肩にとまっています。ピントはグスタフの前や後ろを歩いています。時々、かってに走り出して猫や兎をおっかけますが、すぐにもどってくるので、まいごにはなりません。
季節は夏の終わりで、まだ日ざしが強く、街道(かいどう)はほこりっぽい感じです。
夜は野原で野宿(のじゅく)します。火をたいて夜食を食べ、星をみながらねむるのです。マントの下に草をしけば、即席(そくせき)のベッドができますから、土の上でねても体がいたいことはありません。
やがて目の前に大きな山脈(さんみゃく)が見えてきました。これを越(こ)えれば東の国グリセリードですが、この山脈を越えるのはたいへんです。
とりあえず、ふもとの宿屋にとまろうと思いますが、お金はありません。
その六 若者と美女
ハンスは、猿のジルバにたのんで宿屋の前で芸(げい)をしてもらいました。芸とは、たとえば逆立ち(さかだち)とか宙返り(ちゅうがえり)です。ジルバが犬のピントや驢馬のグスタフのせなかの上で逆立ちや宙返りをすると、宿屋のお客さんたちは感心してそれをながめ、芸が終わると、みんな少しずつお金をくれました。ぜんぶかぞえると、七リムと六十五エキュ、七千五百円くらいになりました。
なかでも気前のいいお客は一人で五リムもくれたのです。
その人は感心して言いました。
「いやあ、よく仕込まれた犬や猿だなあ。まるで人間のことばがわかるみたいじゃねえか」
言葉づかいは少し下品(げひん)ですが、気の良さそうな若い男です。もっとも、子供のハンスから見れば、大人はみんなオジサンですが。
「坊やたち、どこから来たの?」
その若者のそばにいた恋人らしい女の人が言いました。こちらは、ものすごい美人です。ハンスは思わずその人に見とれてしまいました。生まれてから今まで、こんなに美しい女の人を見たことはありません。でも、この国の人ではなさそうです。色が浅黒く、目鼻立ちが非常にはっきりしています。目は大きくて、瞳が黒いダイヤモンドのようにきらきら輝いています。きっと南国の人なのでしょう。言葉も少したどたどしい感じです。
「トエルペンです」
男の方が女の人に説明(せつめい)しました。
「トエルペンってのは、アスカルファン中部の町だ。アルプ郡の、三番目に大きい町だな」
この男はアスカルファンの地理にくわしいようです。旅なれているのでしょう。
「で、これからどこへ行くの?」
「グリセリードに行くつもりです」
男の人と女の人はおどろいて目を見合わせました。
「おいおい、坊や、グリセリードがどんなところか知ってるのか? アスカルファンとは仲が悪くて、この前も戦争をしたばかりなんだぜ」
そう言えば、そんなことを聞いたような気がしますが、でも、十歳の子供にとって四、五年前のころの話は大昔です。
「入るのはむずかしいのですか?」
「そんなこともないが、アスカルファンの人間だと知られるとまずいだろうな。殺されるかもしれん」
ハンスは少し考えて言いました。
「じゃあ、口がきけない人間のふりをします。どうせ、よその国の言葉はしゃべれないんですから」
男はその言葉に感心したようです。
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