ゲーム・スポーツなどについての感想と妄想の作文集です
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第二十七章 海峡の戦い
ボワロンの北西海岸にやっと到着したグリセリード陸上軍だったが、疫病のため砂漠に残した一万人と、その後に出た死者や重症患者のため、全体の兵力は僅か十万人程度になっていた。幸い、患者の中には回復に向かう者も少しはいたが、完全な健康体の者も、水と食料の欠乏した過酷な砂漠越えで体力を消耗していた。
「今戦いが始まったら、五百の兵士にも負けそうだな……」
デロスは海岸の木陰でぐったりと休んでいる兵士たちを見て呟いた。
「戦う前からこれほどの兵力を消耗したのは初めてだ。この戦は呪われているのか」
デロスの呟きを聞いて、傍らのマルシアスが笑った。
「デロス殿とも思えない弱気なお言葉ですな。なあに、少し休んだら兵たちも体力を回復しますよ」
「そうだな。……ところで、マルシアス、戦の指揮の事だが、もしもわしが死んだら、お主が全軍の指揮を執ってくれぬか」
「死ぬとはまた不吉な事を。一体どうなされたのです」
「はは、気にするな。別に迷信深くなっているわけではない。いつ不測の事があっても良いように戦の指揮体系を決めておくのも将の仕事の一つだ」
「はあ。しかし、序列から言って、デロス殿の次はエスカミーリオ殿でしょう」
「お主のこれまでの軍歴は、エスカミーリオなど話にならん。他の将官の中で、一万以上の軍を動かす力のあるのはお主以外いない」
「ヴァルミラ殿では?」
「何を馬鹿な事を。あれはまだ一度も戦をしたこともない子供だ」
「デロス殿の娘だというだけでも兵は信服して付いて行きます。それに、彼女の武芸の腕は国中知らぬ者は無い。戦略の面でも、アベロンの兵法書を深く読んでいる様子ですよ」
「戦は書物通りにはいかんさ。二、三度戦場に出た後なら考えんでもないが」
デロスは将官たちを集めて、自分に不測の事があった場合の指揮をマルシアスに任せる事を告げた。将官の中には、それを喜ぶ者もあり、不服そうな顔をする者もあった。
海上のエスカミーリオ軍は、ポラポス海峡に近づきつつあった。マルスたちがアンドレと再会してから五日後であった。
「エスカミーリオ様。レントの船はいっこうに現れませんな」
エスカミーリオの副官のジャンゴが言った。
「うむ。別に不思議ではないが、張り合いがないな。この大船団なら名に負うレント海軍でも一蹴してみせるものを」
空は良く晴れ渡っているが、海上は波がある。航海に出て以来、これほど雲一つ無い天気も珍しい。
やがて、前方にポラポス海峡が見えた。
「あそこがポラポス海峡です。あそこを過ぎれば、アスカルファンもボワロンもすぐです」
船の乗組員がエスカミーリオにそう告げた。
「そうか。海底の岩に船底をこすらぬよう、注意して進めよ」
およそ三百隻の船は、一列になって海峡に入った。先頭からおよそ三分の一が海峡の中に入った時、突然中団の船の一つが轟音を立てた。
「何事だ?」
船団の分隊の指揮をしている副将軍が慌てて、部下に聞いた。その間にも、轟音は続いている。
「はっ。どうやら、海峡の上の崖から投石器で攻撃を受けているようです」
「応戦しろ!」
「はっ。しかし、敵ははるか上方におり、こちらの矢はほとんど届きません」
間もなく、崖の上からは石だけではなく、火矢も降り注いできた。
海峡に入りかかっていた後続の船は、慌てて進路を変えようとしたが、狭い海峡では船がすれ違うことは難しい。後から進んでくる船と、戻ろうとする船の何艘かがぶつかり始めた。
その時、西の海上に大船団が現れた。レント海軍である。
海峡への侵入を諦めたグリセリード軍は、新たな敵を迎えて困惑した。全軍の指揮を執る旗艦はとっくに海峡の中に入っており、海戦を統率する者がいないのである。
仕方なく、グリセリード軍およそ二百隻は、百五十隻のレント海軍にばらばらに立ち向かうことになった。
アンドレの指揮下に、何ヶ月も石弓の訓練を積んでいたレント海軍と、一月近い航海の間、何の訓練もできなかったグリセリード軍との技量の差は明らかだった。
レント海軍の石弓隊は、波に揺れる船を物ともせず、正確に敵船に矢を射掛けた。
グリセリード軍の船は、マルスの放つ火矢によって次々に炎上し始めた。
「思ったよりグリセリードの船が少ないな」
マルスは、矢を射る手を止めて、傍らのアンドレに言った。
「百隻くらい海峡の中に入ったと思うが、それにしても少ないようだ。おそらく、航海の間に先頭から遅れた船が半分くらいあるんだろう。そんな船は気にする必要はない。海上でのんびりと各個撃破すればよい」
アンドレはマルスに答えた。
「半分の船でアスカルファンに兵を輸送するのはできるか」
「一回におよそニ万人くらいずつだ。海岸でなんとか迎え撃つことができる人数だろうな」
「では、だいぶこちらが有利になったわけだな」
「そう言っていいだろう。アスカルファン軍がよほどヘマをしなければな」
ほっと一息ついて、マルスは笑顔になり、アンドレと握手した。
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