ゲーム・スポーツなどについての感想と妄想の作文集です
管理者名(記事筆者名)は「O-ZONE」「老幼児」「都虎」など。
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第二十八章 口論
ボワロンの北西海岸にたどり着いたグリセリード船は、九十五隻だった。
「八百隻の大船団が、僅か九十五隻だと?」
デロスは激怒したが、エスカミーリオはまったく動じなかった。
「デロス殿の方こそ、十五万の大軍を、半分に減らしてしまったではありませんか。しかも、別に敵がいるわけでもない陸上を通ってですよ」
「敵がいたからこそ、こうなったんだ」
「では、敵に対する備えが出来てなかったということで、どちらにしても誉められませんな。責められるべきはむしろそちらでしょう。こっちは、初めての海上軍、多少の戦力の損耗は計算の上です」
「七百五隻の損害が、多少の損害か」
「まあ、いつまでも水掛け論をしていてもしょうがないでしょう。今後の戦略を話し合いましょう」
「戦略も何も無い。この戦は中止だ。僅か九十五隻の船で、どのようにして兵を運ぼうと言うのだ。上陸すると同時に敵にやられてしまうわ」
「敵が恐ろしいのですか。勇猛を以て鳴るデロス殿とも思われない」
周囲の諸将は、二人の口論をはらはらしながら聞いている。
「馬鹿を言え。戦は兵力の勝負だ。こちらに十二万の兵力があっても、一度に二万人しか運べないのでは、二万の兵しかいないのと同じなのだ。お主のような、経験の浅い将ほど奇策に頼ったり、味方の勢力を過信して失敗するものなのだ」
将官の一人が立ち上がって言った。
「デロス殿、我らグリセリード軍の勇猛さなら、一人がアスカルファン兵五人十人に相当しましょう」
「勇猛さだと? その勇猛さという奴をわしの目の前に出してみろ。魂など、目に見えるか! どんなに勇猛な兵だろうが、腰抜けの敵の放った一本の矢の前に死ぬ、それが戦だ」
「しかし、今さら戦を中止して帰ったら、シルヴィアナ様からどんなお叱りがあるか」
もう一人の将が、困惑したように言った。
「仕方あるまい。責任はわしが取る」
「では、どうあっても、アスカルファンには向かわないと?」
エスカミーリオがデロスを問い詰めた。
「ああ、そうだ」
デロスはそっぽを向いた。
「そうですか。では仕方がない」
エスカミーリオは腰の剣を抜き、一刀でデロスを斬った。
「あっ!」と一同は声を上げた。
マルシアスは駆け寄ってエスカミーリオを斬ろうとしたが、その前にエスカミーリオの副官ジャンゴが剣を抜いて立ちふさがった。
「騒ぐな! これを見ろ」
エスカミーリオは懐から一通の書状を出して、それをぱらりと開いた。
「宰相ロドリーゴ様の命令書だ。誰であれ、この戦の遂行を邪魔する者は切り捨てて良いという内容だ。シルヴィアナ様の署名もある。デロスは臆病風に吹かれて戦を中止しようとしたので、俺が切り捨てた。これからは俺が戦の総指揮を執る」
エスカミーリオは諸将を睨み回した。その気迫に押されて、周りの者は何も言えない。
「デロス様こそが、この全軍の総指揮者だったはずだ。お前のやった事は、反逆罪に当たる!」
マルシアスが叫んだ。
「これ以上戦の邪魔をするなら、お前もデロスと同じ目に遭うぞ」
「何を言う。デロス様が死んだ後は、私が全軍の指揮を任されている」
「たわ言だ。デロスこそが国家への反逆をしようとしたのだ。反逆者の命令など、何の効力がある。それに、大将軍とはいえ、シルヴィアナ様の了解もなく勝手な任命はできぬはずだ」
「戦時中は、大将軍に任命権があるはずだ」
「その軍議に俺は加わっていない。それこそ、俺を追い出すためのデロスの策謀だ。裏切り者デロスの命令はもはや無効だ」
二人の間の言い争いは、結局軍の中心的な将官全員の軍議に掛けられたが、このまま戦を続行するべきだという意見が大半を占め、デロスの後の総大将はエスカミーリオに決まった。それは、アスカルファンの軍は弱兵であるという先入観のためと、戦で戦功を上げて褒賞を得たいという思いが各将に強かったからである。
デロスの死を聞いたヴァルミラは、すぐさまエスカミーリオを殺しに行こうとしたが、その前にエスカミーリオの手の者によって逮捕された。
「臆病者のデロスは、これだけの人数では戦えんと言ったが、十一万五千の兵に、船の二万人を加えて、十四万五千。これだけの兵があればアスカルファン侵攻には十分だ。それに、我々がアスカルファンに入れば、すぐにアルカードに駐留している一万の軍勢が北から攻め寄せることになっておる。わずか七万余のアスカルファン軍と、五万程度のレント軍相手に、これ以上何が必要だと言うのだ」
エスカミーリオの言葉に、諸将は、その通りだ、とうなずいた。
「まして、レント軍は海の向こうにいるのですから、奴らが救援に来る前には戦は終わっているでしょう」
将校の一人がエスカミーリオに迎合するように言った。
将官の中でマルシアスだけは、デロスの死以来、沈黙を守り続けていた。エスカミーリオは、その存在を目障りに感じていたが、当面は見逃しておこうと考えていた。
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