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ゲーム・スポーツなどについての感想と妄想の作文集です 管理者名(記事筆者名)は「O-ZONE」「老幼児」「都虎」など。
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その十九 坊さんの正体

「だれだ!」
気配を感じたのか、部屋の中の坊さんが大声をあげました。
 その時、窓から何かが飛び込んできて、お坊さんののどにかみつきました。
 ピントです。
「うわっ」
坊さんは必死(ひっし)でピントをはらいのけようとしますが、ピントの牙は坊さんののどにくいこんでいます。見ていたピエールは心配になりました。もしもこのお坊さんがただの人間で、坊さんとしては悪いことかもしれませんが、生肉が好きだというだけだったらどうしましょう。
ハンスも同じことを考えていました。そこで、大急ぎでグラムサイトの呪文をとなえ、精神を集中して坊さんのすがたを見ました。すると、窓からさしこんできた月の光にうかびあがったそのすがたは、一匹の大猿だったのです。
ハンスは部屋の中にかけこんで、魔法の杖で大猿の頭を力一杯なぐりました。
大猿は「ギャッ」と一声鳴いて、息絶えました。
その晩は、もっと化け物が出てくるかもしれないので、四人は二人ずつ交互(こうご)にねることにしました。
夜が明けると、ピエールとヤクシーは寺の中をさがしてみました。もちろん、大猿の死体はそのままありましたが、そのほかに、気味わるいことに寺の床下には人間の白骨が十三体みつかったのです。
「こいつは、あの狐と大猿が旅人たちを食ったものだな」
「それに、このお寺のお坊さんたちもね」
ピエールとヤクシーは、子供たちにはその死体を見せないようにかくしました。
 この気味の悪い寺からなるべく早くはなれたくて、四人は朝御飯がすむと、さっさとそこを出て行きました。
「ねえ、あんたもしかして魔法使い?」
 アリーナがハンスに聞きます。
「うん」と短くハンスは答えました。
「魔法使いってほんとにいたんだ。ねえ、なにかやってみて。空飛べる?」
「できないよ」
「変身は? 鳥になれる?」
「できない」
「なあんだ」
 アリーナは、ハンスの魔法が、自分の想像していたものとはだいぶちがうようなので、がっかりしたようです。


その二十 社会科のお勉強

西グリセリードと中央グリセリードの境い目の低い山地を越えると、あたりは広くひらけて、畑が多くなってきました。もちろん、山や野原もたくさんありますが、畑の割合が多くて、民家の数も多いのです。
もうだいぶ秋も深くなってきて、麦の収穫はとっくに終わり、稲の刈り入れが始まってます。このあたりは水田ではなく、陸稲(おかぼ、りくとう)が畑に植えられてます。刈り取られた稲が稲架(はさ、はざ)にかけられて干されているようすはのどかなものです。
シャングーの町で身なりをととのえたハンスたちの一行(いっこう)は、見たところはグリセリード人です。もともと、グリセリードはいくつもの国が征服(せいふく)されて一つになった国なので、肌(はだ)の色や顔だちのちがいはだれもあまり気にしません。特に北部グリセリードは、ずっと西のアルカードの民族(みんぞく)が住みついたところなので、肌は白く、金髪や青い目もめずらしくありません。
今のグリセリードを統一したのは、グリセリード南西部の国でした。ルガイアという王様と、その息子のヴァンダロス大王という王様が、二代にわたってこの広大な大陸を統一したのです。
今はヴァンダロスの娘のシルヴィアナがグリセリードの皇帝、つまり女王になってますが、ざんねんながらシルヴィアナは政治の能力が無く、すべてを宰相のロドリーゴにまかせているのは前にお話したとおりです。ロドリーゴは国のことよりは自分の利益(りえき)を先に考える人間でしたから、シルヴィアナの代になってからはヴァンダロスの時代にくらべて国民の政治に対する不満は強くなっていました。とくに、二度にわたるアスカルファンとの無意味な戦いで、何万もの人間が戦場に送り出され死んだ事をうらむ人間は多かったのです。
ヴァンダロスは全国を統一(とういつ、一つにすること)した後も、関所(せきしょ、交通の要所におかれ、旅人の身元を調べる役所)をおかず、分国と分国との行き来は自由にさせていましたので、全国の文化や産物はあちこちに伝えられ、発展していました。ハンスたちが自由に旅ができたのもそのためです。
年に一回か二回の年貢(ねんぐ)か税金を納める以外は、庶民生活への干渉(かんしょう、あれこれ口出しすること。いちいち説明するのも楽じゃないです。でも、言葉をおぼえるのは大事ですからね。このお話は、学習小説でもあるのです。……なるほど、そうだったのか)をしないのがヴァンダロスの方針(ほうしん、やり方)だったので、国民の生活は気楽なものでしたが、前回の意外な敗戦の後、シルヴィアナとロドリーゴへの批判(ひはん、文句を言うこと)は強くなっており、その批判をおさえるために、政治を批判する者は処罰(しょばつ)するというお触れ(おふれ、知らせや命令)が出ており、国全体にいきいきしたところやのびのびしたところがなくなっていました。国民が自由に発言できない社会や国が、悪い社会や国であることは、いつの時代も変わりません。




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