ゲーム・スポーツなどについての感想と妄想の作文集です
管理者名(記事筆者名)は「O-ZONE」「老幼児」「都虎」など。
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カウンター
その六十五 セラフィム
ハンスは、天国の鍵をさがすために、もう一つの道に行く決心をしました。たった一人で、この世界に別れを告げて。
「みんな、ぼくは洞窟にもどるよ。でも、さっきの左の道にはぼく一人で行く」
ハンスが言うと、アリーナが不思議そうに「どうして?」と言いました。
「あの道を行くと、二度とこの世界にもどれないらしいんだ」
他の三人は、ハンスの言葉に、ちょっと考えこみました。
「ぼくはいっしょに行くよ。ここまで来て、最後をたしかめないんじゃあ、来たかいがない」
チャックが言うとセイルンも
「おれもそうだ。なあに、どこの世界で生きるのも同じさ」
と言いました。
「セイルン、君はだめだ。君がいないとアリーナは地上に帰れない」
ハンスは言いました。
「あら、私も行くわよ。仲間はずれなんていやよ」
アリーナは怒ったような声をあげました。
しかたなく、ハンスは他の三人とともに洞窟にもどりました。
洞窟の薄暗がりの中を歩いて、歩いて、……。
やっとさっきの分かれ道のところに来ました。
こんどは左の道に行きます。
そしてまた薄暗がりの中を歩いて、歩いて、歩いて、歩いて、……。
いったいどのくらい歩いたのでしょうか。
なんのまえぶれもなく、あたりは突然、白い光に満たされました。
そして、ハンスたちの目の前に一人の男が現れたのです。白いローブを着たその人は、体全体から白い光を放っています。
天使かな、とハンスは思いましたが、背中には羽根ははえていないようです。
顔は非常に美しく、どことなくアンドレにもトリスターナにも似ています。
「お前たちは天国に行く気か。生きた人間のままで天国に入ることはゆるされぬことだ」
男はおだやかですが、威厳のある態度でハンスたちに言いました。思わず、このままここから帰ってしまおうかとハンスは思ったくらいです。
「わたしたちは天国の鍵を持っています」
ハンスは勇気をふりしぼって言いました。
「天国の鍵? 見せてみなさい」
男の前にハンスは水晶の湖の魚が吐き出した指輪を差し出しました。すると、男は首を横に振り、「これは天国の鍵ではない」と言いました。
その六十六 天使のテスト
「天国の鍵とは、見者の夢の中にしか存在しないものなのだ。お前の持っているこの指輪は、太古の神々を呼び出す力を持つ不思議な指輪だが、天国の鍵ではない。それに、お前の持っているもう一つの指輪は、悪魔をも従わせる恐ろしい力を持った、ダイモンの指輪だ。そのどちらか一つでも持っていたら、お前は地上すべてを支配する大王になれる。もしもお前が地上をそのまま天国にしたいのであれば、この二つの指輪で地上をお前の好きなように作り変えればよいではないか」
天使の言葉に、ハンスは考えこんでしまいました。その時、ハンスの心に浮かんでいたのは、ソクラトンの部屋で見た、あの印です。あの印は、永遠の未完成としての人間を表していたはずです。ハンスは自分自身をふりかえってみました。そして、これを読んでいるみなさんなら、思わずハンスに向かって、「この間抜け!」と言いたくなるような返事をしました。
「この指輪は二つともお返しします。一人の、ふつうの人間がそんな力を持てば、その人自身が大魔王になってしまうでしょう。この指輪は、人間が持つべきものではありません」
天使は、その返事を聞いて、にっこり笑いました。
「お前は正しい答えをした。たいていの人間なら、この誘惑(ゆうわく)に負けて、私の提案を受け入れただろう。その場合、その者は、永遠に地獄に落とされることになっていたのだ。お前は、自分自身を知るという、最高の課題を克服したのだ」
この言葉に、思わずチャックが、問い詰めるように口を出しました。
「天使のくせに、嘘をついたのか?」
「おや、お前は悪魔の一族ではないか。嘘ではない。私の言った事をたしかめるがよい。私は、この指輪の力を話し、ハンスに、この指輪を使ってみろとすすめただけだ。そうすればどうなるとは言わなかったはずだ」
「ちえっ。天使ってのがソフィストだとは知らなかったぜ」
と言ったのはセイルンです。ソフィストとは、哲学者の一派で、口先たくみに相手をだますような議論をする人たちです。
「お前も、竜のくせに人間の世界で暮らして、人間のような考え方をするようになったようだな、セイルン」
天使はセイルンを見て、にっこり笑いました。
「では、天国には入れてもらえないのですか」
ハンスはがっかりして言いました。
「そうだ。だが、ここまでやってきたお前たちの努力には報いてやろう。こちらにきなさい」
天使は後ろを向いて歩き出しました。
ハンスたちは、その後をついて行きました。
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