ゲーム・スポーツなどについての感想と妄想の作文集です
管理者名(記事筆者名)は「O-ZONE」「老幼児」「都虎」など。
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その三十七 女性についての真理など
「なんか、すてきな人だったわね、ブッダルタって」
アリーナがつぶやくように言いました。
「うん」
と短くハンスは答えます。
魔法使いになってから、ハンスはどうも無口になったようです。頭の中ではいろいろなことを考えているのですが、それを言葉で他人に説明するのがめんどうに感じられるのです。だから、アリーナはハンスのことを軽く見ているところがあります。女の人にとって、おしゃべりのできない相手なんて、まったく存在価値はないんですからね。でも、ハンスには二度も命を救われているので、それに感謝はしています。だからといってそれでハンスを好きになるとはかぎりません。嫌いではないが、どうも物足りないなあ、というのが正直なところです。まったく、主人公だのに、女にももてない人間なんて、ちょっとつまらないですね。でも、世の中、いい人というのはだいたい女の人にはもてないものなのです。なぜなんですかね。念のために言っておきますが、それだからといって、女にもてない人はいい人だ、ということにはなりません。これは、逆は必ずしも真ならず、という数学的真理です。
さて、ブッダルタに会う用は済(す)んだので、ハンスたちは西に進んで、グリセリードの南西部にあるアズマハルという町に向かうことにしました。思ったより簡単にブッダルタが探せたので、ピエールたちよりはだいぶ先にアズマハルに着きそうです。
アズマハルまで行けば、パーリはすぐです。そこにルメトトという賢者がいるそうですから、その人を見つければ、七人の大魔法使いのうちザラスト、ロンコン、ブッダルタ、ルメトトの四人には会ったことになります。のこりはアルカードのソクラトンと、名前のわからない二人ですが、ハンスは、もしかしたらロレンゾがそのうちの一人ではないかと思いました。じっさい、ロレンゾから教えてもらった魔法で何度も助かっているのですから、彼と出会った事が一番大きな出来事でした。そして、ピエールやヤクシーに出会わなければ、ロレンゾと会うこともなかったのですから、ハンスはまったく幸運だったと言っていいでしょう。皮肉な読者なら、これを単なる作者のご都合主義と言うかもしれません。
ギオン寺からアズマハルまではけっこうかかりましたが、例によって、とちゅうは省略します。ここがお話の便利なところで、人生の大部分をしめる日常的な作業や、あまり大きな出来事のないところは書かなくてもよいのです。だって、物語の主人公だって、本当はトイレにもいくし、顔を洗ったりおふろに入ったり、いろんな事をしているのですが、主人公やその他の人物がトイレに行く場面なんて読みたくないですよね。こっそり教えますけど、あのかわいいアリーナだって、本当はトイレに行ったりするのです。もっとも、旅のとちゅうですから運良くトイレがあるとはかぎりませんし、……まあ、そんなことはどうでもいいか。とにかく、ハンスとアリーナはアズマハルに着きました。
その三十八 海
グリセリードの西の端にあるアズマハルは、大きな河のそばにできた町です。昔はこのあたりに古代文明のひとつがあったということですが、いまはごくふつうの田舎町です。かつての宮殿は、今は廃墟(はいきょ)しかのこっていません。
ハンスとアリーナは旅籠(はたご、昔の旅館のこと)に泊まって、数日をのんびりとすごしました。
二人は町のあちこちを見てまわりましたが、たいして見るものはありません。町の大通りにも山羊や羊がうろうろと歩きまわり、ニワトリがけたたましい声で鳴いたりします。
砂漠に近い南の町ですが、もう冬になっているので、空は曇り気味で、雨の多い日が続きました。
雨のふる日は、旅籠にとじこめられて、たいくつです。雨の日にゆっくり読めるような本なんか持ってませんからね。そこで、ハンスはロンコンからもらった巻物を広げて、パロに詩を読み上げてもらいながら、その巻物をながめました。もとの言葉の発音がわからないので、実際にどんな音かはわからないのですが、これがこの単語かな、というくらいは見当がつきます。
詩の意味はよくわかりませんが、とにかく七つの噴水のある庭をさがせばいいようです。
約束の日にちになっても、ピエールたちは姿をあらわしません。それから一週間ほど待ちましたが、それでもピエールたちは来ないので、ハンスたちはしかたなくここを去ることにしました。
次の目的地はパーリです。アズマハルからは、砂漠を越えて行くことになりますが、海ぞいに行けば、わりと湿地帯も多く、木や草も生えています。
グリセリード生まれのアリーナは、海を見るのは初めてですから、大喜びです。
「これが海か。すげえでっかいなあ」
男の子の言葉でアリーナは言いました。
ハンスにしても、初めての海です。でも、遠目を覚えてからは、すでに何度か遠目では見ていますから、それほど感激はしません。ちょうど、みなさんが、いろんなものをテレビで見て育ったために、本物を見ても何の感激もないようなものです。みなさんは、ハンスの持つ超能力を、科学の力で、みんなが持っているわけです。でも、それが必ずしも幸福につながるとはかぎりませんけどね。
海づたいに南へ進んで、少し内陸部に入ると、そこがパーリの国です。
ここからは完全に砂漠になります。驢馬のグスタフも初めての砂地にとまどって、歩きにくそうです。
子犬のピントは、このころになるとすっかり大人の犬になってました。犬の成長は早いですからね。大人になったピントは、大きくてたくましく、なかなか強そうです。虎やライオンは無理(むり)でも、狼くらいとならケンカもできそうで、たのもしい仲間です。
「なんか、すてきな人だったわね、ブッダルタって」
アリーナがつぶやくように言いました。
「うん」
と短くハンスは答えます。
魔法使いになってから、ハンスはどうも無口になったようです。頭の中ではいろいろなことを考えているのですが、それを言葉で他人に説明するのがめんどうに感じられるのです。だから、アリーナはハンスのことを軽く見ているところがあります。女の人にとって、おしゃべりのできない相手なんて、まったく存在価値はないんですからね。でも、ハンスには二度も命を救われているので、それに感謝はしています。だからといってそれでハンスを好きになるとはかぎりません。嫌いではないが、どうも物足りないなあ、というのが正直なところです。まったく、主人公だのに、女にももてない人間なんて、ちょっとつまらないですね。でも、世の中、いい人というのはだいたい女の人にはもてないものなのです。なぜなんですかね。念のために言っておきますが、それだからといって、女にもてない人はいい人だ、ということにはなりません。これは、逆は必ずしも真ならず、という数学的真理です。
さて、ブッダルタに会う用は済(す)んだので、ハンスたちは西に進んで、グリセリードの南西部にあるアズマハルという町に向かうことにしました。思ったより簡単にブッダルタが探せたので、ピエールたちよりはだいぶ先にアズマハルに着きそうです。
アズマハルまで行けば、パーリはすぐです。そこにルメトトという賢者がいるそうですから、その人を見つければ、七人の大魔法使いのうちザラスト、ロンコン、ブッダルタ、ルメトトの四人には会ったことになります。のこりはアルカードのソクラトンと、名前のわからない二人ですが、ハンスは、もしかしたらロレンゾがそのうちの一人ではないかと思いました。じっさい、ロレンゾから教えてもらった魔法で何度も助かっているのですから、彼と出会った事が一番大きな出来事でした。そして、ピエールやヤクシーに出会わなければ、ロレンゾと会うこともなかったのですから、ハンスはまったく幸運だったと言っていいでしょう。皮肉な読者なら、これを単なる作者のご都合主義と言うかもしれません。
ギオン寺からアズマハルまではけっこうかかりましたが、例によって、とちゅうは省略します。ここがお話の便利なところで、人生の大部分をしめる日常的な作業や、あまり大きな出来事のないところは書かなくてもよいのです。だって、物語の主人公だって、本当はトイレにもいくし、顔を洗ったりおふろに入ったり、いろんな事をしているのですが、主人公やその他の人物がトイレに行く場面なんて読みたくないですよね。こっそり教えますけど、あのかわいいアリーナだって、本当はトイレに行ったりするのです。もっとも、旅のとちゅうですから運良くトイレがあるとはかぎりませんし、……まあ、そんなことはどうでもいいか。とにかく、ハンスとアリーナはアズマハルに着きました。
その三十八 海
グリセリードの西の端にあるアズマハルは、大きな河のそばにできた町です。昔はこのあたりに古代文明のひとつがあったということですが、いまはごくふつうの田舎町です。かつての宮殿は、今は廃墟(はいきょ)しかのこっていません。
ハンスとアリーナは旅籠(はたご、昔の旅館のこと)に泊まって、数日をのんびりとすごしました。
二人は町のあちこちを見てまわりましたが、たいして見るものはありません。町の大通りにも山羊や羊がうろうろと歩きまわり、ニワトリがけたたましい声で鳴いたりします。
砂漠に近い南の町ですが、もう冬になっているので、空は曇り気味で、雨の多い日が続きました。
雨のふる日は、旅籠にとじこめられて、たいくつです。雨の日にゆっくり読めるような本なんか持ってませんからね。そこで、ハンスはロンコンからもらった巻物を広げて、パロに詩を読み上げてもらいながら、その巻物をながめました。もとの言葉の発音がわからないので、実際にどんな音かはわからないのですが、これがこの単語かな、というくらいは見当がつきます。
詩の意味はよくわかりませんが、とにかく七つの噴水のある庭をさがせばいいようです。
約束の日にちになっても、ピエールたちは姿をあらわしません。それから一週間ほど待ちましたが、それでもピエールたちは来ないので、ハンスたちはしかたなくここを去ることにしました。
次の目的地はパーリです。アズマハルからは、砂漠を越えて行くことになりますが、海ぞいに行けば、わりと湿地帯も多く、木や草も生えています。
グリセリード生まれのアリーナは、海を見るのは初めてですから、大喜びです。
「これが海か。すげえでっかいなあ」
男の子の言葉でアリーナは言いました。
ハンスにしても、初めての海です。でも、遠目を覚えてからは、すでに何度か遠目では見ていますから、それほど感激はしません。ちょうど、みなさんが、いろんなものをテレビで見て育ったために、本物を見ても何の感激もないようなものです。みなさんは、ハンスの持つ超能力を、科学の力で、みんなが持っているわけです。でも、それが必ずしも幸福につながるとはかぎりませんけどね。
海づたいに南へ進んで、少し内陸部に入ると、そこがパーリの国です。
ここからは完全に砂漠になります。驢馬のグスタフも初めての砂地にとまどって、歩きにくそうです。
子犬のピントは、このころになるとすっかり大人の犬になってました。犬の成長は早いですからね。大人になったピントは、大きくてたくましく、なかなか強そうです。虎やライオンは無理(むり)でも、狼くらいとならケンカもできそうで、たのもしい仲間です。
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