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今日アメリカの議会で可決された政府の歳出法案の中に、マイナーリーガーは公正労働基準法の最低賃金と時間外労働の保護の対象外となることを定める条項が含まれていると現地メディアが報じています。


”Save America's Pastime Act”というタイトルがつけられたこの条項によると、マイナーリーグの選手たちは、野球に関連した活動に費やした時間にかかわらず、週40時間の最低賃金に相当する給料しかもらう権利がないことになります。

マイナーリーガーの給料はマイナーリーグではなくMLBが設定しています。マイナーリーグの公式サイトには、1年目のマイナーリーガーの月給は最大で1100ドルであると書かれています。

現在マイナーリーグの選手たちが公正な賃金を求めていくつかの訴訟を起こしていますが、今回の法案の成立によってそれもストップすることになるようです。

MLBは、マイナーリーガーを公正労働基準法の保護対象外であることを法に盛り込ませるために、ここ2年間ロビー活動に費やす金額を大幅に増やしていたということです。OpenSecrets.orgの調べでは、2016年、2017年にそれぞれ132万ドルを使っています。

このニュースを受け、2009年にヤンキースから1巡目で指名を受けてプロ入りしたスレイド・ヒースコットは「マイナーリーガーの最初の5年の賃金は犯罪のようにひどい。立ち上がって言いたい。選手たちは半年しか給料が払われず、シーズン中の生活費もすべて自分で払うことがほとんどだ。自分で契約を結んだんだからといって正当化されている。野球選手は夢の職業だからと言って正当化されるわけではない」とツイート。

ヒースコットは、テイラー・ブレイク・ウォードという記者の「私たちがプロのアスリートであるマイナーリーグの選手の賃金が時給4.63ドルで十分だと思っているとしたら、何かがおかしい。彼らは1年のうち3~6か月しか給料が払われない」というツイートのキャプチャ画像を添付しています。

また、NBCスポーツの記事ではマイナーリーガーにもっとまともな給料を払ったときのコストを試算しています。

各球団の傘下には6つ(球団によっては7つか8つ)のマイナー球団があります。それぞれ25人のロースターだとすると、6球団の場合、全部で150人。全員に3万ドルの賃金を保証すると仮定すると、450万ドル。これは、このオフにフェルナンド・ロドニー、クレイグ・スタメン、ジャレッド・ヒューズが結んだ契約と同じ額。球団の数が7つや8つだったり、もっと高い賃金を払おうと思えば450万ドル以上になりますが、十分に支払える金額です。

また、アイスホッケーのマイナー選手は自分たちの労働組合を持っているそうです。1年目の選手で比較すると、野球のマイナー選手の2倍にあたる1万790ドルの賃金を得ており、家具付きで公共料金も支払われる部屋が提供されているとのこと。もちろん、ホッケーのマイナーリーグが破綻しているということはありません。

ハングリー精神を持つようになるからこれぐらいでいいんだ、という人もいるかも知れません。しかし、上に挙げたNBCスポーツの記事にはこう書かれています。

「深夜勤務でUberの運転手として働くよりも、家で映像を見て野球の研究をする方がいい選手になれるだろう。ガソリンを買うお金があれば、1ブロック歩いてピザやマクドナルドを買いに行くのではなく、新鮮なフルーツや野菜を簡単に買いに行けるようになるだろう。不健康な選手より健康な選手の方がいいはずじゃないか?ソファーではなく、質のいいマットレスの方がよく眠れるだろう。いい睡眠はいいプレーにつながる。いい選手が増えるということは、ドラフトで当たりを引く可能性が高くなるということだ。そうすれば、より多くの選手がメジャーに到達し、6年間は安いコストで雇える選手が増えることになる。私たちが目にしたように、チームはFA市場で割高な選手を取るより、自前の選手を育てたほうがいいと考えるようになっている」と述べ、「つまり、チームのオーナーや、彼らのために働く人たちの、近視眼的な強欲だ。...マイナーリーグの選手たちがファンのための商品であって、彼らがいなければオーナーたちは何もできない」と批判しています。

近い将来に状況が変わることはないかもしれません。しかし、マイナーの選手がメジャーリーガーになりたいという夢のために搾取されている状況はファンとしても気持ちのいいものではないので、できるだけ早く改善されることを願います。

Photo: Dinur