「1位指名するなら、即戦力という考え方をやめて1、2年はリハビリにあてる覚悟が必要だ」
球界関係者が険しい顔でそう指摘するのは、20日に迫ったドラフト会議の目玉、156キロ右腕の創価大・田中正義投手(22)について。
田中は15日の東京新大学秋季リーグ、流経大戦(県営大宮)に先発し5安打3失点完投勝利。翌16日の同カードでも6点リードの9回、無死満塁のピンチに登場し押し出し四球と犠飛で2点を許したものの勝ち切り、チームのリーグ戦優勝を決めた。
ネット裏に集結したプロのスカウト陣からは「やはりいい投手。150キロを超える球を投げられる投手はそういないからね」(在京球団スカウト)と安堵の声が上がっていた。
春先まで「即戦力No.1」と高く評価されていた田中だが、右肩の炎症で今春リーグ戦の登板はわずか2試合。今秋リーグ戦でマウンドに復帰したが、今月8日の杏林大戦(岩槻川通)では5回3失点と炎上していた。
スカウト陣は15日のマウンドをドラフト会議に向けた最終チェックの場と位置づけ、内容次第では、競合覚悟で1位指名を考えていた球団も戦略の見直しを迫られるはずだった。
それだけに今回の力投に安堵の声があがったワケだが、ある球界関係者は「このままでは、田中はプロ入りしても短命におわる可能性がある。体の強さに頼った投げ方で、しかも肩の関節が緩んだ状態の“ルーズショルダー”気味。再び故障する可能性が高い」と警告する。
「それを防ぐには肩回りをしっかり鍛え直すこと。そのための期間を与える必要がある」というのだ。
素材は一級品だけに、じっくり磨けば球界を代表する投手に成長する可能性は高い。その代わり、指名するなら遠回りする覚悟が必要というワケだが、各球団はどんな決断を下すか。