右投手の左膝(前足)の突っ張りと言うと、斎藤ハンカチを思い出すが、この投げ方だと上半身主体の投げ方になる、という西本の指摘は頷ける。まあ、それはそれで(投げる時の注意点が少ないから)コントロールなどはかえって安定するのではないか、とも思うが、球速などはこれ以上伸びる可能性は少ないような気がする。また、これだと
という懸念もあるようだ。つまり、「腕の振り過ぎ」が肩や肘の故障につながるわけだろう。「ボールが見えやすい」については、確かに、今日の試合でも、打順が一回りした後は結構球を捉えられてはいたようだ。ただ、相手打線の打者レベルが低い(ボールが見えても、きちんと打てない)から、打球速度が遅く、あまりヒットや長打にはならなかったのではないか。今の履正社などが相手だとどうだろうか。
だからといって、前がこれから奥川のレベルになるとも言えないわけで、前は前で、すでに「大学生レベル」の投手だと思う。つまり、大学生が高校生に混じっているのだから、普通の高校生チームなら抑えて当然、というわけだ。では、その大学生投手がプロ入りできるか、と言うと、そうとは限らない。それが「早熟型選手」か、「本物のドラフトレベル」かの判断の難しいところだ。前の場合も履正社あたりとの対決の結果次第で判断できるだろう。履正社とか大阪桐蔭というのは、チーム全体が「大学生レベルの選手が大半」なのである。(注意したいのは、「プロレベルが大半」なのではまったくないと言うことだ。ドラ1候補が3人いても、それは「プロ候補生」が3人いただけでしかない。だが、「プロ候補生含む大学生レベルのチーム」は、甲子園では圧倒的なチーム力になる。)
夏の甲子園が開幕した。プロ注目の星稜(石川)奥川恭伸投手と津田学園(三重)前佑囲斗投手を野球評論家の西本聖氏がチェックした。
- 星稜対旭川大高 完封勝利した星稜エース奥川恭伸(撮影・上田博志)
-星稜の奥川が3安打完封。最速は153キロをマークした
西本氏 高校生のレベルでは文句のつけようがない内容。ただ期待しすぎなのかどうしても気になる点がある。
-センバツで見た時に指摘していたのが踏み出す左膝が突っ張り重心が高いことだった
西本氏 そう。そこがどう変わっているかに注目していたが、左膝が突っ張るのがどうしても気になる。上半身に頼った投げ方、手投げになってしまっている。肩や肘を壊さないか心配。ボールが見えやすく、空振りが取りづらいからプロのレベルだとどうなのかと心配してしまう。
-制球も良くプロでも即戦力になりそうに見えるが
西本氏 う~ん。もしかしたら時間がかかるかもしれない。けっして悪い投手ではないし、次の試合をまた見てみたい。
-その前の試合で1失点完投勝ちの津田学園・前もプロ注目の好投手
西本氏 下半身の使い方に関しては奥川君より前君の方が良い。まだ1、2、3、1、2、3のリズムで投げているが、右足で立つ時間を長くすれば間が取れる。下半身の使い方が良いから腕も良く振れている。今は2段モーションもOKだから将来的に大きく化ける可能性があると思う。
- 津田学園対静岡 力投する前佑囲斗(撮影・奥田泰也)