トヨタが優勝できたのは、佐竹ほかの投手陣の力を最大限に引き出した細山田の力が働いていたと思う。旧横浜フロントや旧チーム首脳の細山田に対する非情な仕打ちに対して私は細山田に深く同情してきたが、彼がこうして再び日の目を見ることができたことを喜びたい。
<都市対抗野球>元プロ「まだ成長途中」 トヨタ・細山田
毎日新聞 7月26日(火)22時38分配信
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社会人野球の頂点を懸けた26日の第87回都市対抗野球大会決勝は、豊田市・トヨタ自動車が日立市・日立製作所を4-0で破り、悲願の初優勝を果たした。
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黒獅子旗の獲得に貢献したトヨタ自動車の細山田武史捕手(30)は、プロ野球で2度の戦力外通告を受け、今季から活躍の場を社会人野球に移した。プロでは減額制限を大幅に上回る減俸を受け入れ、食費に困る時期もあった。苦労を乗り越えた明るさと精神力でチームを引っ張った。
細山田捕手は、早大から2009年に横浜(現DeNA)入りしたが活躍できず、12年秋の契約更改では、前年の1700万円から600万円への減俸を受け入れた。税金を差し引けば、手取りは約150万円にしかならない。更改後の記者会見で「これから食事は、牛丼の松屋か吉野家」と嘆いた。
食費が少ないのは、致命傷になりかねない。見かねた同僚が食事をおごってくれた。「仲間の大切さを痛感した」と振り返る。
大幅減俸を受け入れたが、翌年10月には戦力外を通告された。2カ月後に結婚式を控えていたが、「将来がどうなるかわからない」と延期した。
ソフトバンクに育成枠で入団したが、昨年秋には再び戦力外となり、プロの道は断たれた。球団職員のポストも打診されたが「まだ体は動く」と自信があった。そんな時に早大時代の先輩、佐竹功年投手がいるトヨタから誘われた。「必要とされる場でプレーするのが幸せ」と快諾した。
トヨタでは嘱託職員として社業にも励む。26日、応援席から見守った職場の上司、桑田正規さん(46)は「元プロをひけらかすこともない。いつも笑顔で職場のムードメーカー」と活躍を喜んだ。式の延期を受け入れてくれた妻菜穂子さん(30)も「生き生きと野球をやっている姿を見ると、本当にうれしい」。
細山田捕手は「いつも正しいと思う選択をしてきた。過去の自分があるから今の自分がある」という。初の都市対抗は全試合でマスクをかぶり、決勝は佐竹投手の完封をリードした。「まだ成長できている気がする」。第二の野球人生はこれからだ。【駒木智一、三上剛輝】