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ゲーム・スポーツなどについての感想と妄想の作文集です 管理者名(記事筆者名)は「O-ZONE」「老幼児」「都虎」など。
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その2


 


 関根金造監督はベンチでお茶を飲みながら居眠りばかりしていたわけではない。試合を眺めながら、自軍選手の能力や性格、勝負強いか弱いか、何が得意で何が苦手かを観察していたのである。選手とは野菜のようなもので、瓜や茄子がトマトやカボチャにはならないが、丹精こめて育てれば大きく育ち、それなりに美味い野菜になる。


 監督の見た所では、現在のチーム力は、昨年の成績が示している通りであり、じたばたしても始まらない。しかし、昨年のドラフト及びドラフト外で取った選手の中には、磨けば光る素材が多いと睨んでいた。中でも、ドラフト1位の荒野拓と2位の中矢速人、それに4位の田畑耕作の3人は、かなりの潜在力を持っているようである。2位の中矢は外野手で、大学野球でそれなりに名が売れていたが、荒野と田畑はまったくの無名選手である。これはスカウト部長の倉の大ヒットだった。彼は自分の足で見て回るだけではなく、インターネットを駆使して各地の有望選手情報を集め、勘がひらめいた場合は自分で見に行ってドラフト候補を決めたのである。荒野は北海道出身の投手で、野球経験はまだ少ないが150キロ近い剛速球を投げる。甲子園大会は予選2回戦で負けたために、全国的な知名度はゼロである。田畑は南の果ての、八重山の出身で、これも同じく甲子園に出ていないが、県大会では3回戦まで進み、打率8割、本塁打3本を放っている。もっとも、予選でその程度の成績を残す選手は珍しくないが、彼の場合は、肩も良くて、通算の盗塁阻止率が(それがどれほど正確な数字かはわからないが)9割以上であるということだ。野球マンガなら、一度も盗塁をされたことがないという捕手などが登場したりするが、盗塁というものは、半分は投手の責任であり、100パーセントの盗塁阻止率というのはありえない。高校生なら7割以上の阻止率ならば抜群の肩であり、プロなら4割程度でも十分に合格ラインである。それよりも、主将としてチームを引っ張り、出ると負けの離島チームを3回戦まで進めた根性が、買いだと関根は考えた。


 この3人以外にも楽しみな選手が多く、時間をかければこのチームは案外いいチームになりそうだ、と関根は考えていたが、来年再来年、自分がこのチームの監督でいられるかどうかは別問題である。関根はそれほど監督の座に執着はしていなかったが、このチームの行方を自分の目で見てみたいという気持ちはあった。


 一軍にもいい選手は数人いるが、数人では野球はできない。レギュラー野手8人と投手陣の粒がある程度揃わないと、野球にはならないのである。現在は、先発投手陣では藤井秀介、伊藤和明、ベバリンの3人しか一軍の能力を持った選手はいない。野手陣ではラミレスとベッツの二人以外では外野手の因幡一宏くらいが一軍レベルで、あとは他球団なら二軍というレベルの選手だけだ。しかし、この秋の入団テストで面白そうな選手が何人か入っていた。


 まず筆頭が、牙武という外野手である。高校卒業後、ノンプロの野球で3年を過ごし、今年の都市対抗試合で頭角を現した選手である。外野手としては守備が少し雑だが、足は速く、肩も強い。それに、何よりも打撃に迫力がある。三振も多そうだが、長打力は本物のようだ。名前の荒々しさとはうらはらに、顔は外人の血が混じっているような感じのハンサムで、ロシア人風の短い顎鬚がギャングの幹部めいた感じを与えている。そして、もう一人が、北海オーシャンズを整理された投手の東海林誠人である。球速が130キロ台という、球の遅さがプロレベルではないとして、一軍に上がることもなく首になったようだが、低めに集まるコントロールの良さと、打者に的を絞らせない頭の良さは、案外拾い物ではないかと思われた。


 投球というものは不思議なものである。野球マンガの好きな子供は、160キロの速球を投げれば誰にも打たれないと思いこんでいるが、日本最速の記録を持っている横浜シティボーイズのクレーン投手の防御率は3点台である。救援投手の防御率は低いのが普通だから、3点台というのは良くない数字だ。つまり、160キロの速球を投げても、プロは打つのである。160キロが170キロになっても、少し練習すれば打てるだろう。確かに、速球は、一番打ちにくい球ではある。しかし、速球一本槍で抑えられるほどプロは甘くない。大昔にあったヤクルトという球団の安田投手や、阪急ブレーブスの星野投手などのストレートは130キロ台であった。高校生でも140キロを投げる投手は珍しくないのに、130キロのボールしか投げきれない彼らが、なぜプロで好成績を残したのか。それは、投球術の有無である。つまり、頭のいい投手なら、プロで生き残ることはできるということだ。その反対に、150キロ台の速球を投げきれても、頭の悪い投手は生き残れない。


 投球にくらべると、打撃のほうが、まだ肉体的才能の関わる余地が大きいようだ。簡単な話、才能の無い人間は、ホームランは絶対に打てない。プロの投げるスピードボールにバットを当てることでさえ至難の業だが、しかもそれをバットに乗せて45度の角度で弾き返し、100メートルの彼方にあるフェンスを越えさせることができる人間は、プロでも限られている。もちろん、年間に1本か2本のまぐれ当たりは、プロレベルの肉体能力があれば可能性はあるが、それ以上に打つのは、能力によるしかない。その能力は、普通人には絶対に無いのである。だから、打撃の神様テッド・ウィリアムスも、「野球で一番難しいのがバッティングだ」と言っているのである。


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