「場末の。」という昨日から読み始めたわたモテサイト(と言うべきだろうか。)に載っていた、今江生徒会長と吉田さんともこっちのレアな絡みの部分である。「なんJ」のわたモテスレでは見たことが無いので、レアだと思う。吉田さんは一貫して吉田さんだ。よく言う、「男前」なヒロインである。最近は漫画のヒーローでも卑怯な奴やひねくれた奴が多くて、こういう男前なタイプは希少価値があるのではないか。
「(一緒に)帰る?」と、(特に挨拶する先輩とか居ないよね?)というニュアンスを含んでいるようにも感じる田村さんの誘い。
……ですが、もこっちは踏みとどまります。前回は勇気を振り絞ることができず、教室の中への一歩を踏み込むことができませんでしたが、言いよどみながらも「挨拶しときたい人がいる」と意思を伝えます。
小さいながらも、もこっちの前進を感じさせてくれる台詞です。
ですが……
今江先輩は既に大勢の生徒に囲まれていました。
「あの人だもんな いくらでも話したい人いるよな……」
「あの人だから」と納得できる理由。
それは、「生徒会長に当選するぐらいの人望がある」という、客観的事実による判断だけではありません。今江先輩が人格者であることをもこっちはよく知っています。
なぜなら一人ぼっちだった頃の自分をよく気にかけてくれた、貴重な存在だからです。
このもこっちの左手が、拳を象っているように見えます。溢れてくる何かの感情を堪えているかのようです……。
ここでも、もこっちは自分を卑下します。
あれほどの人望があるのだから、自分のような少し話した程度の関係の人間よりも話したい相手がたくさんいるだろうと、自分の「挨拶したい」という感情を堪えます。
今までのもこっちなら、この台詞を「なんか人多いし無理、逃げたい」という意思で使っていたかもしれません。
ですがこのもこっちの表情は、それとは大きく乖離しているように見えます。
そんなもこっちに近づく一つの影が……
吉田さんでした。
宝塚もびっくりの凛々しい表情……なんと言って良いのでしょうか。ヒーローです。
吉田さんは前回、教室の前で逃げるように立ち去るもこっちを見ています。
それに今江さんと吉田さんは以前、コンビニに入ったもこっちを待っている間に会話を交わしています。
「あなたが待ってくれてるし いいかな」
「……」
……もこっちに吉田さんという友達が出来たことを、今江先輩はちゃんと見届けていました。
踏ん切りのつかないもこっちの胸ぐらを掴む背中を押す存在として、これ以上の適任は存在しないでしょう。
「じゃあな」
吉田さんは口下手な女の子です。もこっちを送り届ける役目を終えるとすぐに踵を返してしまいました。