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ゲーム・スポーツなどについての感想と妄想の作文集です 管理者名(記事筆者名)は「O-ZONE」「老幼児」「都虎」など。
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タイガー! タイガー! 仮15章(改変予定の仮の章) 2017/10/16 (Mon)

この章は、話の中心から逸れるので、後で削除する可能性があるが、書いたものを消すのももったいないから載せておく。アベンチュラは、副主人公格で登場する予定の人物だが、彼に関する話はまったく考えていないのである。





(第十五章 アベンチュラ)



トゥーランの東から南にかけては海に面しているが、その東南部にある港町のシノーラは商業船と漁船の両方が集まるにぎやかな街で、どちらかというと商業船の出入りが多かった。商業船とは、いうまでもなく貿易船で、各地の物産を交易するための船だが、旅客なども乗せたりする。今も、停泊している帆船が十隻ほどある。

その船の一つから下りてきたのは、かなり背の高いたくましい男で、赤銅色に日焼けし、顔じゅう鬚だらけなので年齢は分からない。赤毛の長い髪もぼさぼさで、赤毛のライオンといった風貌である。上半身は素肌にチョッキだけで裸に近く、ズボンも水夫風だが、水夫ではない証拠が、その腰に帯びた剣である。鞘に入っていても、水夫などが持つ剣でないことはわかる。まあ、もともと水夫は剣ではなくナイフを腰帯に挿すのが普通だが。

眩しい日差しに目を細めて、彼は船のタラップを降りてきた。タラップと言っても粗末な梯子だ。それを軽々とした足取りで、下を一度も見ずに降りてきたところは、やはり水夫のようにも見える。肩に、長い棒に結んだ信玄袋のような袋をかついでいるが、腰の剣は別としておそらく彼の全財産がその中に入っているのだろう。

「ウオゥ、半月ぶりの陸地だ。気持ちがいいなあ!」

地面に降り立つと、彼は無邪気な歓声をあげた。

港に集まる人足や商人の群れを掻き分けて、彼は居酒屋へ直行する。

「酒だ、酒だ、酒をくれえ!」

大声で怒鳴ると、店員が慌てて持ってきた酒杯を一息であける。

「うまいっ! どんどん持って来い!」

陽気な大声に酒場の客たちはもの珍しげに彼を見るが、男の無邪気な喜び方に、誰もが微笑を浮かべている。

「お兄さん、どこから来た?」

彼の前に腰を下ろしたのは、近くの席で飲んでいた男で、年齢は30歳くらいだろうか、黒髪で口髭を生やした洒落た感じの男である。身なりは騎士階級の人間のようだ。

「俺か? ファルカタからだ。知っているか?」

「ああ、インドラの西の港町だな。俺も行ったことはある。暑くて弱ったな。象牙やダイヤや翡翠をそこで仕入れて、高く売ったものだ」

「あんたは商人か?」

「まあ、そんなものだ」

「そうだ、と言わないところを見ると、本物の商人じゃないな」

「いろんな事をしているからな。あんたはシノーラに滞在するつもりか?」

「いや、生まれ故郷に帰るつもりだ。タイラスへな」

「タイラスか。タイラスのどこだ?」

「ランザロートだ」

「ほほう、首都か。あんた、貴族だな?」

「こんな汚い格好の貴族かい?」

「話し方で分かるさ。それに、その腰の剣でな」

「これか。これは俺の命から2番目に大事な剣だ。先祖代々の遺産でな。まあ、俺にはこれしか財産は無いんだが」

「あんた、腕が立ちそうだな」

「まあ、弱くはないと思う」

「どうだい、俺もこれから旅に出ようと思っていたんだが、一緒に旅をしないか? 俺の名はキャリバンだ。」

「いいだろう。俺はアベンチュラだ。よろしく」

「よし、そうと決まれば、ここの勘定は俺のおごりだ」

「すまんな。俺は飲むぜ?」

「大丈夫だ。今のところは、俺の懐は温かい」

「最初に言っておくが、おごられたからと言って、遠慮はしないぜ。まあ確かに、今の俺は懐が寂しいから、あんたがおごってくれるのは嬉しいがな」

「もちろんだ。遠慮は無しだ」

「よし、おい、給仕、酒をどんどん持って来い。それと食い物もだ」

二人の前にはあっと言う間に、酒壺と食い物が並んだ。鉄串に刺して焼いた羊の焼肉や、鍋で炒めた野菜、それに魚の燻製などだ。酒はヤシの果汁を発酵させて作ったヤシ酒のほか、果実酒が何種類かある。

二人は酒と食い物を交互に口に運び、すっかりいい機嫌になった。



タイガー! タイガー! 16章 2017/10/17 (Tue)

第十六章 グエン一座



盗賊たちの歓待を受けた翌朝、グエンたちはフロス・フェリたちに別れを告げて彼らの野営地を離れた。

「もしも、あんたたちが一騒動起こしたくなったら、この森に来るがよい。力を貸すぜ」

フロス・フェリはニヤリと笑いながらグエンに片目をつぶってみせた。

「ああ、世話になった。このお礼はそのうちさせてもらう。では、さらばだ」

「ああ、また会おう。多分、また会えるさ。俺の予感は当たるんだ」

フロス・フェリは片手を上げて別れを告げた。



「さて、国境は越えたが、これからが難しいかもしれん。ランザロートまでは200ピロほどだと言ったな?」

「ええ、国境からそのくらいのはずです」

「ふむ。その間に関所が幾つかあると考えたほうがいいだろう。問題は、タイラス国王が俺たちを歓迎するかどうかだ」

「と言うと?」

「俺たちを捕まえて縛り上げ、ユラリアかサントネージュに送るということもありうるということだ」

「まさか。タイラス王妃のエメラルド様は、サントネージュ王妃の妹君ですよ?」

「だが、国王はべつにサントネージュの縁者ではないだろう。俺がタイラス国王なら、ユラリアから強く言われたら、そうするかもしれん。ユラリアを敵に回したくないならな」

フォックスは考え込んだ。

「では、どうすればいいと?」

「分からんな。一番いいのは、しばらくランザロート近辺に潜んで、タイラス宮廷の状況を調べることだ。幸いに、俺たちの素性はまだ知られてはいない。まあ、俺のこの目立つ頭が少々邪魔になるが……」

「いっその事、旅芸人のふりでもしますか」

「旅芸人?」

「そうです。旅芸人なら、そのような頭もわざとやっていると思われますから」

「なるほど。それは気づかなかった。俺はこの頭を隠すことばかり考えていたが、逆にこの頭を隠れ蓑にするわけか。面白い」

「でも、芸人が一人では、寂しいですね。私には何も芸がないので」

「あのう」

とおそるおそる声をかけたのはソフィであった。

「私、歌が歌えます。ダンも」

「へえ、そうなんだ。お足が貰えるくらい上手ならいいけど」

「お母さまはよく僕たちを、世界で一番歌が上手だとほめてくれたよ」

フォックスはグエンの方を見て苦笑いをした。母親のひいき目の言葉を、この子供たちは信じて疑わないのである。

「じゃあ、何か歌ってみてくれる? 幸い、人里や関所は遠いようだから」

ソフィはダンと目くばせをした。

「じゃあ、『バラとナイチンゲール』を」

ソフィのきれいな高音が、まるで銀の鈴を鳴らすように流れ出した。天使の声が空の高みに昇っていく。それにダンの子供らしいあどけない高音が唱和する。

グエンとフォックスはあっけにとられながら聴きほれた。これほど美しく、胸を打たれる歌を聞いたのはフォックスにとっては生まれて初めてであった。なつかしく、悲しく、そして嬉しいような寂しいような、明るく透明な歌声であった。

「まあ、何て素敵な歌なの! こんなにきれいな歌声を聞いたのは初めてよ」

歌が終わるとフォックスは思わず手を叩いて言った。

「これなら、十分に出し物になる。で、俺とお前は、剣劇でもやろう」

「剣劇ですか?」

「そうだ。ソフィとダンがお姫様と王子さまで、お前はそれを助ける剣士だ。俺が悪役をやって、お前と剣劇をするのだ」

「面白そうですね。ちょっとやってみますか」

「ああ、まずは、その辺の木の枝で木剣を作ろう。真剣でやってもいいが、わざと芝居くさくしたほうがいいだろう」

グエンは軽く剣を振って、頭上の木の枝を斬り落とした。それが地上に落ちる前にもう一度剣が動いて、枝の先も切られ、棒きれになる。

同じ要領で棒きれをもう一本作る。細かい木の枝も切りはらう。長さ1マートルほどの棒きれが2本できた。

「やってみよう。最初はお前が斬りかかってこい。俺がそれを受けたり、よけたりしよう」

「いきますよ」

どうせ自分が本気で打ちかかっても、相手がそれをよけるのは造作もないと分かっているので、フォックスには気が楽である。

何度か打ち込んでみて、改めてグエンの剣の技量が自分とは桁違いであることを実感する。「だめです、グエンがあまりにうますぎて、私の下手さが見物人にばれます」

「そうか。じゃあ、もう少しおおげさにやろう。本気で殴ってもいいぞ。棒で殴られたぐらいなら俺は平気だ」

今度は、先ほどのようにわずか一寸ほどで体をかわすのではなく、おおげさに飛び下がったり、飛び上がったりして木剣をよけると、逆に迫力とユーモラスさが出る。それを見てソフィとダンは歓声を上げて大喜びである。なるほど、芝居とはこういうものか、とグエンもフォックスも悟るところがあった。

時にはグエンが反撃に出るが、もちろんフォックスの体に当たる寸前で剣は止める。しかし、見ている方には、フォックスが相手の剣を軽くさばいたように見える。

「真剣でやったら、すごい出し物になるでしょうけどねえ」

「いや、それはまずいだろう。俺たちの正体を隠すのが目的なのだから、べつにそれほど客受けを考えなくてよい」

「グエンの頭はそのままでやるの?」

ダンが聞いた。

「お面をかぶればいいじゃない」

「まあな。それもいいが、お面を作る材料がない」

「人里に出たら、芝居衣装や小道具を作る材料を探してみましょう」

「私はグエンの頭はそのままでもいいと思うわ。どうせお芝居だとみんな思っているのだから、かえってその頭は好都合よ」

ソフィの言葉にフォックスも「そうね」と同意した。

「俺は、怪物の役でもいいぞ」

「あら、そんなつもりじゃないの。お芝居なんだから、奇抜なほうがいいと思うのよ。その頭は、それだけで観客をびっくりさせるわ」

「ふむ、そうだろうな。客を喜ばせるにこしたことはない。では、俺は剣ではなく、棍棒か何かを持とう」

「それもいいわね。で、お願いなんだけど、上半身は裸でやるのはいやかしら?」

フォックスの言葉にグエンは少し考えた。

「できるだけ人間離れしていたほうがいいということだな。まあ、かまわんさ」

「そうじゃなくて、グエンのその素晴らしい体は、それだけで立派な出し物になるのよ。それを服で隠すのはもったいないと思うの」

「まあ、どんな案でも試してみるさ。では、そろそろ行こうか。腹もへってきたし、昼食をするのにいい場所でも探そう」

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