(以下引用)
東京五輪、暑さで選手のパフォーマンスが「落ちる」可能性=英報告書
7月に開催予定の東京五輪では、気候変動の影響で選手のパフォーマンスが「落ちる」可能性があると、スポーツ選手などが主導した調査が指摘した。
「Rings of Fire(炎のリング)」というタイトルのこの報告書は、スポーツ選手や英スポーツ持続可能性教会(BASIS)、英リーズ大学国際気候センターの研究者らの調査によって作成された。
報告書では、東京で過去3年間に観測された夏の熱波から、今年の五輪の気候条件は厳しいものになると予測している。
暑さへの懸念はこれまでにも指摘されており、五輪のマラソン競技は東京から北海道札幌市に会場が変更された。
新型コロナウイルスの影響で延期となった東京五輪は、7月23日から8月8日にかけて行われる予定。
<関連記事>
報告書に携わった英ポーツマス大学のマイク・ティプトン教授は、東京五輪は「気温の観点では近年で最もストレスの大きい大会」になるだろうと述べた。
「大事なメッセージは、開催地や競技時間を変えるのではなく、大会を開く時期を動かさなくてはならないだろうということだ。国際オリンピック委員会(IOC)も今後、考え始めなければいけないと思う」
「多くの競技でパフォーマンスが落ちることはまず間違いないと言える。選手のパフォーマンス・レベルの観点で、ショーとしてのスポーツの価値も損なわれるだろう」
2008年と2012年の五輪にイギリスのマラソン選手として参加したマーラ・ヤマウチ氏も、この報告書の内容を支持している。
「気候変動が加速する中で、スポーツにとって広い範囲で影響が出る危険性がある。気候変動の影響を最小限に抑え、未来の世代にスポーツや五輪を残していけるよう、みんなが少しでも努力するべきだ」
熱中症で入院も
今回の報告書では、東京五輪では準備段階の気候についても懸念があると指摘。東京の気温は1900年から2.86度上がっているが、これは世界平均と比べて3倍の速度だという。
イギリスのトライアスロン選手、アリスター・ブラウンリー氏は報告の中で、厳しい暑さの中で競技を行う危険性について説明している。
ブラウンリー氏は2010年にロンドンで行われた大会に出場した際、スタートから300メートル以降の記憶がなくなり、競技終了後には集中治療室(ICU)で手当てを受けたという。
報告書ではまた、2019年にカタールの首都ドーハで行われた世界陸上競技選手権大会に言及。この大会の女子マラソンでは、暑さと湿度で選手68人のうち28人がゴールできなかった。
イギリスのボート選手、メリッサ・ウィルソン氏は、「高温下では筋肉や心臓に影響を与えることが分かっている。選手がタイムを競う中で、そうした身体的な影響が出ることになる」と指摘した。
「厳しい環境条件では、新記録が生まれるチャンスは限られるだろう。それに、誰かにフライパンの中に投げ入れられ、そこでベストを尽くさなければならないのは、選手にとって決して心地いいものではない」