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ゲーム・スポーツなどについての感想と妄想の作文集です 管理者名(記事筆者名)は「O-ZONE」「老幼児」「都虎」など。
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別ブログで書きかけの小説で、完成するかどうか怪しいが、最初の3章くらいまで、ここにも転載しておく。

(以下自己引用)

(1)

「言いにくいんだけどねえ」
と勤め先の食堂の奥さんから切り出された時、その用件が何かはすぐに想像がついた。
「うちもこのご時世で経営が厳しくて、どうしてもこれ以上あなたを雇えないのよ。こういう商売だから、退職金も出せないし、せめて、来月分の給料は払うことにするわ」
「すまんなあ、日吉君、君はよく働いてくれたんだが、コロナで次々と飲食店は潰れているし、うちも、あと半年も持つかどうかなんだ」
「はい、覚悟していました。今までお世話になりました」
退職金代わりの来月度の給料12万円を貰って、これまで2年働いた店とはお別れだった。
「あ、そうそう、余っている食材を持てるだけ持っていっていいわよ。食費の足しにはなるでしょう」
奥さんの好意に甘えて、愛用のリュックサック(買い物籠代わりである)に保存の利く食料品を詰めるだけ詰め込んだ。
帰り道は、何だかボンヤリした気分だった。懐に財布の6千円と封筒に入った12万円あるのは嬉しいが、明日から仕事が無いのである。つまり、この12万6千円と今月の残りとして郵便貯金に入れてある3万円が全財産だ。
電車から降りて、アパートまでの道をとぼとぼ歩く。
アパートの近くに小さな児童公園があるが、このご時世だしこの時間だから人もいない。ここを突っ切っていくと近道なので、いつものように中に入った。
公園の真ん中を通った時、目の前に突然、凄い光が一瞬走り、目がくらんだ。
何が起こったのかと思ったが、目が再び周囲の闇に慣れると僕の前に一人の奇妙な男が地面に座って顔を地面に向けていた。奇妙な、と言うのは、その男は白い着物姿、それも夜着か浴衣らしい着物を着ていたからだ。
「あの、どうしたんですか」
男は顔を上げた。何だか、どこかで見たような感じの顔だが、僕は未だかつて、こういう、頭がちょんまげで鼻の下に短い髭を生やした中年男を見たことは無い。当たり前である。誰がちょんまげ姿の侍(たぶんそうだろう)などに遭った経験のある人間がいるだろうか。
「ここはどこであるか」
男は立ち上がって(背は僕より少し高いが、僕はかなりのチビなので、この男の身長はさほど高くはない。やせ型で鼻が高く色白なようだ。)周りを見回した後、偉そうなくちぶりで言った。
「鷺宮ですが」
「ミヤコではないのか。さて、先ほどまでは寺にいたのが、なぜ外にいるのか」
男は、そこで気が付いたように、自分の腹を撫でた。
「はて、わしは腹を切ったはずだが、傷も無く血も出ておらぬ」
(キチガイだな。話し方がヘンだし、顔つきもヘンだ)
「あの、特に何もなければ、僕はこれで」
僕はさっさとその場を離れた。
20歩ほど歩いて、不吉な予感に襲われて後ろを振り向くと、男が付いてきていた!
僕は男を引き離そうかと思ったが、しかし、目の前はもう僕のアパートなのである。
「あの、僕はこのアパートに入るんで、ここでお別れです」
と愛想を言って鉄の階段を上がり始めたが、男は付いてくるのである。
「困ったなあ。あなた、家はどこですか。警察に行ったほうがいいんじゃないですか」
「ケイサツとは何であるか」
「あなた、お名前は?」
「織田上総介信長じゃ」
「はあ、とにかく、警察に行ったほうが」
「じゃから、ケイサツとは何じゃ」
僕は根負けして自分の部屋のドアを開いた。後からこのキチガイが入ってくるだろうとは分かってはいたが、こんな真夜中に騒ぎを起こしたくはない。
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