というのは、むしろ完封勝ちした広島の大瀬良投手にピッタリの言葉だろう。特に、「ボールが続いてもストライクが取れる」というのは高橋への言葉としてはあまりピンと来ない。
それ以前に、なぜあれだけ球威があるのにボール先行の投球になるのか。ど真ん中にストライクを投げてもある程度抑えられる投手だろう。最初からボール先行になるリードをするキャッチャーはいないだろうから、立ち上がりとかランナーが出た時の高橋は平常心を失っており、制球が乱れる癖がある、と見るべきだと思う。彼を攻略する方法もそこにある。バティスタの満塁ホームランも、それまで打席でまったくいいところの無かったバティスタでも、満塁でストライクゾーンに投げるしかない相手だから、好球だけを待てばいいという余裕の生んだものであり、つまり、満塁にした時点で高橋は勝負に負けていたのである。
ちなみに、この高橋と対極的だったのが、先日好投した中日の19歳山本投手である。投げている間じゅう、はっきりとボールだと判定できる球はほとんどなく、ボール球もすべてストライクゾーンすれすれだった。あれでは、打者は好球、つまり投げ損ないのイージーボールを待つことはできない。彼が好投したのは当然だったわけだ。
なお、権藤の発言の中で阪神内野陣の守備を批判しているのは同感するが、掛布の解説によると、広島松田スタジアムの内野は非常に守備が難しいという。まあ、矢野は金本同様に守備を軽視しすぎるというのは、あまりに頻繁な内野手の守備位置移動にモロに現れている。あれでは落ち着いて守備に集中できないだろう。
阪神高橋遥人投手は敗れはしたが、この男に対するわたしの評価は不動だ。彼のピッチングをみるのはこれが3試合目だが、あらためていいピッチャーだと思った。
とにかく「軸」がぶれない。そして、どの球もスッと投げる。別に迫力があるわけではない。普通に投げる。でもこの普通ってのが、なかなか出来ない。
とても球速が150キロを超えるイメージは、打者も、こちらにも伝わってこない。でもボールが続いてもストライクがとれるし、なによりボールが生きている。
広島に負けたといっても、高橋遥を完璧にとらえた打者はほとんどいなかった。ボールが動くし、どこでどうつかまえたらいいのか、タイミングが合っていなかった。
だけど、これほど立派に投げるピッチャーを、チームは生かせないでいる。いまさらだが、阪神のこの守りはなんとかならんか…。この守備力ではピッチャーはたまらない。
だれとは言わんが、普通に捕ってゲッツーで終わっていたし、6回に奪われた7点にしても、広島のポテンヒットには捕球できる当たりもあった。立ち上がりのミスさえなければ、今頃、0対0の堂々たる投手戦ですよ。
阪神は守りを固めないといけない。出来ることをやらないとね。野球は8割が投手で決まるというが、ディフェンスがピッチャーを支えるのだ。その原点に立ち返らないと話しにならない。