なぜ前評判の高かった金本阪神は敗れたのか-。デイリースポーツでは4回にわたって「金本阪神V逸の影と逆襲への光」と題して検証する。今回は最終回。
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チームの顔でもある鳥谷は03年度ドラフト自由枠で入団した。もちろん希望の選手をクジで逃した年もあり、一概にドラフト戦略を責められないが、レギュラーと言える生え抜き野手が鳥谷以降、出てきていないのは事実だ(上本は不運な負傷もあったが)。そこをFAや外国人で補っても、本当の意味での厚みは生まれない。
ひるがえってカープ3連覇の原動力となっている現主力、1軍選手をドラフトの変遷と共に追ってみる。ここでは野手のレギュラークラスの選手に限定するが、希望枠が06年を最後に撤廃された中、07年からを見ると-。
07年度高校生ドラフト1巡目で安部、同3巡目で丸。大・社ドラフト4巡目で松山。
09年-2位で堂林
11年-2位で菊池
12年-2位で鈴木
13年-3位で田中
15年-5位で西川
ここに広島との大きな差がある。金本監督就任時から3連覇を許しており、この3年にフォーカスされがちだが敗因はそこだけではない。この点が根本的な問題として存在し続けている。現場の指導などに責任はあっても、一方で、球界を代表するスターの育成、素材の獲得は球団としての課題でもある。
金本監督は「ベテランや中堅たちが活躍してこその育成」と話す。ベテラン、中堅、助っ人らが傘となり、並行して若い芽を育てる。それが「勝ちながら育てる」条件だ。積年の「ツケ」に、主力の故障やロサリオの誤算も重なった。育ちきれていない若手が中心となるには、あまりに早すぎた。苦しんだのは当然の結果だった。
ある球団幹部は「もちろん毎年優勝するつもりでやっている。ただ、星野さんも言っていたように来年が本当の勝負だと思う」と話す。思うようにいかなかったここまでの戦いの中でも、金本監督が種をまき、あとわずかでの開花を予感させる選手も出てきた。それが未来への光となる。
理想郷とも言える広島の黄金期。何事も耐え忍ぶ時期はある。一方で、我慢にも限界は存在する。来季をまだ道半ばの4年目ととらえるか、もう4年目と見るか。19年は大きな分岐点にもなりえる。=おわり=