プロ野球は交流戦が終わり再びリーグ戦へ。各チームとも70試合前後を消化した。野球評論家の西本聖氏に話を聞いた。



 -ペナントレースも約半分が終わった。最近、気になったことは


 西本氏 今年は同じバッターに同じように打たれることが目立つ。交流戦でオリックスが広島鈴木誠也に3試合連続本塁打されたり、先日も巨人がDeNA桑原に2試合連続猛打賞された。昨日(26日)はDeNAモスコーソが巨人ギャレットに3打席連続本塁打を浴びた。


 -何が原因なのか


 西本氏 バッテリーの攻め方に問題があると思う。例えば昨日のギャレット。打たれたのは真っすぐ、真っすぐ、真っすぐ。いかがなものか。2打席目はうまく打たれたけど、変化球を使うとか、誰もが首をひねったリード。あのリードによってDeNAは3連勝を逃したと言っていい。


 -捕手のリードが悪いのか


 西本氏 リードが偏り過ぎていると感じる。外角一辺倒のリードが目立つ。投球の8割ぐらいが外角。ピンチになると9割ぐらいに増える。


 -もっと内角を使うべき


 西本氏 外を生かすためのインコース。最近の投手は内角の使い方が下手になっていると思う。内角の厳しいところ攻める。ボールになったとしてもストライク2つ分くらいの価値がある。バッターというのは内角に速い球を投げられるのが一番嫌。腕が伸びないし、何より当たる(死球でケガ)のを嫌がる。投手は打者が嫌なことをしないといけない。それなのに捕手のリードは外一辺倒。大量点を取られたくないから安全策という考えなのだろうがバッターも目が慣れてしまっている。打者への攻め方には緩急、高低、両サイドとあるが、もっと両サイドを使うべき。ロッテのコーチ時代、石垣キャンプでブルペンの打席に人形を置いて内角攻めの練習をさせたことがある。キャンプでしっかり練習しておくことも大事。


 -西本さんは現役時代、決め球のシュートを武器に内角を攻めた


 西本氏 いかにインコースを意識させるか。僕の直球は135キロ程度。それでも抑えることができた。ボールになってもいい、当たっても仕方がないという強い気持ちで内角に投げた。


 西本氏は巨人時代の1987年(昭62)4月10日の中日戦で開幕投手を務めた。中日の4番はロッテから移籍した3冠王・落合博満(現中日GM)だった。落合と4打席対戦。第2打席で詰まり気味の中前打を許したものの、あとの3打席はすべて三ゴロ。落合に投じた9球はすべて内角シュート(130~134キロ)だった。その試合は6-0で完封勝利を収め、同年巨人はリーグ優勝した。


 西本氏 相手は3冠王。オープン戦のビデオを見たけどどのコース、どんな球種も打っていた。どこに投げても打たれるイメージ。でも開幕戦。(3冠王を取った)パ・リーグとは野球も違う。(セ・リーグの投手という)意地もあった。ここは自分の一番自信のあるボールを投げよう、それを打たれたら仕方がないと。ゲームの流れもあったけど、結果的に全4打席すべてシュートになった。初めての対戦だったしシュートを印象づけたいという気持ちもあった。


 -あらためて内角を攻めることの大切さとは


 西本氏 バッテリーは外中心の攻め方を変えていかなくてはいけない。ピンチになればなるほどインコースを攻めないと。また、ボールになってもいいからいかに内角を意識させるかが大切だ。感じるのはチャンスで初球からインコースを待っている打者は少ないということ。ほとんどのバッターが外を狙っている。野球というのは確率の世界。それを変えていかないと。主導権は打者ではなく投手にあるということを忘れてはいけない。