横浜DeNAが“奇跡”を起こしている。昨季までの8シーズン中7季でチーム防御率がセ・リーグ最下位。毎年のように惨状を呈してきた投手陣が、今季は17日現在で同トップの3・18をマークしているのだ。セは指名打者制を採用していないため、あくまで“参考記録”となるが、パのソフトバンク強力投手陣の3・19をも抑え、12球団トップだ。チームの順位は最下位だが、湿っていた打線が復調傾向にあり、他球団は“ラミちゃんベイ”に警戒を強めている。 (宮脇広久)
「まさか、そんなはずはないだろう」
昨季まで10年連続Bクラス。今季も一見変わりばえしない最下位とあって、チームOBの評論家でさえ気付いていない人もいるが、リーグのチーム防御率トップは紛れもなくDeNAだ。
篠原投手コーチは「シーズンは先が長い。本拠地が(両翼94・2メートルの)狭い横浜スタジアムである限り、低めに球を集めないと」と表情を引き締める。それでも「(以前は)先発左腕が1人もいなかったが、昨季途中から砂田、石田。今季はドラフト1位の今永(駒大)も台頭してバランスの取れた顔ぶれになった。救援陣も頑張ってくれている」とうなずく。
実際、一昨年は先発して勝利投手になった左腕はゼロ。昨年6月に砂田が育成選手から支配下登録され、左肩痛で出遅れた石田も7月に1軍昇格。今季はアマNO・1左腕といわれた今永を加え、球界随一のサウスポー王国に変身している。
先発ローテでは、左腕が2勝4敗ながら今永、石田、砂田とイキのいい若手が並ぶ。右腕が4勝3敗で井納、山口、モスコーソ。2軍にも実績のある三浦、久保康、三嶋らが控える。
就任1年目のラミレス監督が、春季キャンプから「このチームは過去10年、内角を攻め切れていなかった」と内角攻めを厳命。体質改善を図った効果も出ている。
それでもチーム順位が最下位に沈んでいる理由は、例年にわたって強力だった打線が湿っていたことに尽きる。梶谷が左脇腹痛で開幕に間に合わず、主砲・筒香も右脇腹の軽度の肉離れで4月下旬に戦線離脱。おまけに5番定着が期待された新外国人ロマック(前ダイヤモンドバックス)が打率・104、本塁打0の“大ハズレ”では無理もなかった。
だが、ここにきて故障の2人が復帰。5月に入って3カード連続で勝ち越し、前カードの阪神3連戦(横浜)も1勝1敗1分でしのぎ上昇気流に乗っている。15日には新たに両打ちのエリアン・エレラ内野手(前ドジャース)を獲得した。
球界屈指の強力打線を指導するヤクルト・杉村チーフ打撃コーチは「今季もセ・リーグには突出したチームがなく昨季同様混戦になるだろう。今は最下位でも、投手陣の一番いいDeNAは怖い」と警戒する。今季は侮れない。