西本の言うとおりだろう。千賀相手で序盤に失点した時点で負ける確率は8割くらいあったと思うが、千賀も絶好調というわけでもなかった。だが、クリーンアップが彼をまったく打てなかったところで勝負あり、だろう。井納の不調が最大の敗因だが、それを早い段階で見抜けなかったものかどうか。解説陣は、井納の制球がままならないことを早い回から指摘していた。内角へのストレートのはずの球が大きくシュートして外角まで行くという調子では捕手のリードも何もあったものではない。それに、審判が左右に厳しめであったことで、井納の勝負手は封じられている、という判断ができたように思う。(二番手に田中を出したのも同じ理由で悪手。田中の場合は低めを取ってもらえなかったのだが、球威が無い投手であるのは井納と同じ。)こういう審判の時は、どうしても球威や球速があるか、鋭い変化球のある投手(つまり千賀)のほうが有利である。結果的に10対1の大敗だが、私としては、西本が言うように、5回表に横浜が1点しか取れなかった時点でタオル投入という感じであった。あの後、横浜が点を取れる可能性はゼロに近かったのではないか。
なお、10対1になった時点で、ホークス打線は集中力や緊張感を失っていたので、その後の須田、平田の好投は割引して考えるべきで、今後の試合で通用するかどうかは疑問だが、少なくとも田中健二朗がこのシリーズで使えないことははっきりしたと思う。おそらく井納も使えないだろう。砂田も怪しい。そういう相性というのはあるのだから、それが早めに分かっただけでこの試合の収穫はあったのではないか。短期決戦では相手チームに対して使える投手だけを徹底的に使うべきだ。
問題は横浜のクリーンアップである。さほど好調でもない千賀相手にああも打てないようだと、シリーズを通して他の投手も打てない可能性は高い。桑原も同様で、横浜のリードオフマンとクリーンアップが打てないなら、勝てる可能性は非常に低い。
しかし、実は、横浜の実力から言って、今回は日本シリーズに出ただけでよくやったと言えるのであり、今回、シリーズで負けても、いや、負けたほうが来年以降につながるのではないか、とすら私は思っているのである。横浜のドラフトを見ると、横浜首脳陣やフロントは来季の優勝を本気で考えているように思う。
なお、試合が実質的に決した後の、精神的に余裕がある状況でのリードとは言え、戸柱のリードは良かった。かなり大胆さが出てきたのではないか。そして、戸柱の持ち味である外角中心の攻めが、ホークスにはかなり有効なように見えるから、2戦目以降は戸柱を先発捕手に使い、嶺井は山崎との「抑えバッテリー」にするという策もあり、だろう。
DHに関しては、乙坂の走塁は良かったが、打撃が良かったわけではないので、2戦目以降のDHは誰を使うか悩ましい。細川については私はまるで信頼していないが、しかし、ファーストストライクを積極的に打つ姿勢はとてもいいと思う。追い込まれたら簡単に三振しそうだが、他の選手も打てそうにないのだから、細川をDHに起用しても仕方がないか、と今は思っている。昨日のヒットで自信を持ち、大きく飛躍する可能性もあるのだから、横浜でジョーカーになれるとしたら、彼くらいだろうか。梶谷が、一番打者を務めるのを嫌がるという話もあるが、梶谷が桑原に代わって一番を打ち、大爆発したら、流れが変わるかもしれない。そういう可能性があるのも梶谷くらいではないか。
日本シリーズが開幕。第1戦はソフトバンクが10-1で快勝した。野球評論家の西本聖氏に勝敗を分けたポイントを聞いた。
-5回を終わって10-1。前半で試合が決まってしまった。
西本氏 敗れたDeNAは5回の攻防がすべてだった。
◆5回表のDeNA 乙坂が失策で出塁した後、倉本の安打で無死一、三塁。桑原の内野ゴロの間に1点を返しなおも1死一塁。しかし柴田、ロペスが凡退し1点止まりに終わった。
西本氏 今季のソフトバンクというチームの特徴は何か? 6回までリードしていたら1敗(74勝)しかしていないという驚異的なデータがある。7回以降は強力なリリーフ陣が控えているということ。つまりDeNAからすればこの回に何とか同点、少なくとももう1点は取っておきたかった。しかし1死一塁から何の仕掛けもない。盗塁でもエンドランでもいい。ベンチが動いて追加点を取りにいってほしかった。
◆5回裏のDeNA 先発井納が先頭の今宮を歩かせると二盗、捕手の悪送球で無死三塁。デスパイネに適時打され1-4。内川は右飛に打ち取ったが中村晃に四球、松田に安打され1死満塁となったところで2人目の田中健にスイッチ。しかし2つの押し出し四球などで失点を重ね気が付けば7点を奪われるビッグイニング。試合は決まった。
西本氏 今日の井納の出来を考えたら5回の頭から代えてもよかったのではないか。せめて今宮に四球を出したところで交代という決断をするべきだった。次の3番デスパイネにはすでに2安打されていた。先行逃げ切りというソフトバンクの勝ちパターンを考えれば、攻撃でも守備でも早め早めに動いていかないと手遅れになるということ。6回までが勝負という中でこの5回というイニングが今日のすべてだったと思う。