◇矢野阪神2年目の光と影~猛虎に何が起こったか
阪神は15年連続でリーグ優勝に届かず、矢野燿大監督(51)が公言してきた1985年以来の日本一達成の悲願は今年もかなわなかった。6試合を残し、56勝51敗7分けで2位。2連覇した巨人には直接対決で8勝15敗と水をあけられた。コロナ禍で開幕が約3カ月も遅れた特別な1年を5回連載で振り返る。
開幕前、球団フロントと他球団スコアラーから巨人との戦力分析について同じ言葉を聞いた。「選手個々の力の差はあまりない」。実際に始まれば、予想とは違う戦績が残った。特に大きく響いたのが6月19日からの巨人との開幕3連戦だった。
第1戦は梅野、2戦目は原口、3戦目は坂本。昨季まで2年連続ゴールデングラブ捕手の梅野を擁しながらの日替わり起用は早々に物議を醸した。捕手出身監督だけに明確な理由はあったはずだ。就任以来掲げてきた「競争は(シーズン中も)続く」の方針を貫き、選手の底上げによるチーム力の向上を狙う用兵だったとみられる。
加えて攻撃陣は直前の練習試合終盤から低迷。指揮官肝いりの「2番・近本」は開幕からの2試合で計9打席凡退に終わり、3戦目から1番に戻さざるを得なかった。この3連戦はわずか計4得点。いきなりつまずいた。
くしくも巨人・原監督はリーグ連覇を決めた10月30日深夜に出演したテレビ番組内で「3つ負けていてもおかしくない試合でした。そこをわずかな差で勝つことができた。そこで勢いがつきました」と開幕カードを振り返った。巨人との開幕3連戦3連敗は球団史上初。開幕から4カード連続で負け越した7月2日の時点で2勝10敗、チーム打率・201に沈み、スタートダッシュに失敗した。
課題だった守備力も巨人との明確な差となって独走を許す大きな要因となった。昨季102失策は両リーグ最多。昨年CSファイナルステージで巨人に敗れた直後に矢野監督は「一番エラーしたんだから」と受け止めていた。昨秋と今春のキャンプは守備練習に費やす時間も増やし練習メニューも工夫。意識を高めて臨んだ今季も拙守は目立った。2日時点で81失策は昨季と同じ両リーグ最多。143試合換算なら101・6となり、ほぼ同じだ。特に巨人戦では23試合で19失策。対照的に巨人は両リーグ最少39の堅守だった。
13年連続で巨人戦の勝ち越しが消えた9月16日、矢野監督は「球際がうちの課題。巨人との差というところ」と認めた。東京ドームでの開幕連敗を8で止めたのは翌17日。反撃に転じるには遅すぎた。10月23日の対戦では1試合5失策の屈辱も味わった。
総失点443のうち、自責382。ミスに起因する失点が多いことは数字の上からも明らかで、失策だけでなく記録に残らない走塁やバッテリー、作戦ミスなども含めて王者に差をつけられた。結果がすべてのプロの世界では許されない事象。球団主導によるコーチ陣のテコ入れは必至だが、コーチだけの責任ではない。当然選手にも責任がある。来季へ向けて守備面を見直さなければ希望はない。 (山本 浩之)
◇阪神20年開幕巨人3連戦
(6月19日 東京ドーム)
阪 神 001 010 000 |2
巨 人 000 100 20X |3
(神)西勇、●岩崎、エドワーズ―梅野
(巨)○菅野、中川、Sデラロサ―小林、炭谷
<本>西勇(神)吉川尚(巨)
(20日 東京ドーム)
阪 神 000 100 000 |1
巨 人 100 200 80X |11
(神)●岩貞、小川、谷川、能見―原口
(巨)○田口、沢村、ビエイラ、高木、鍵谷、藤岡―炭谷、大城
<本>原口(神)パーラ(巨)
(21日 東京ドーム)
阪 神 100 000 000 |1
巨 人 000 520 00X |7
(神)●ガルシア、守屋、小川、谷川―坂本、梅野
(巨)○サンチェス、高木、沢村、中川、宮国―小林、大城
<本>近本(神)岡本、パーラ(巨)