ゲーム・スポーツなどについての感想と妄想の作文集です
管理者名(記事筆者名)は「O-ZONE」「老幼児」「都虎」など。
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第十七章 ピラミッド
ダンガルからパーリに向かったマルスたちは、数日の旅の後、砂漠の前方に不思議な物体を見た。
それはマルスたちがこれまで見たことのない建造物で、石造りの巨大な四角錘だった。岩山の前にある、その四角錘を守るように、二体の石像があり、その石像もライオンの体に人間の顔を持った奇妙なものだった。
「あれは?」
マルスの質問に、ロレンゾが答える。
「ピラミッドとスフィンクスじゃよ。ピラミッドは王の墓、スフィンクスはそれを守る神像じゃ」
「王の墓だって? なら中には宝が納められているんじゃないか?」
ピエールが聞いた。
「砂漠にもお前のような泥棒は無数にいるさ。宝があれば、とうの昔に盗まれているに決まってる」
ロレンゾはにべも無く言ったが、ピエールはあくまでピラミッドの中に入ってみると言ってきかない。
ちょうど夕暮れになっていたので、一行はピラミッドの側で夜営することにした。
「ピラミッドの中には、確かに王家の宝が納められている。その中には昔の魔法の道具や書物がある可能性もあるから、ピエールの言う通り、ピラミッドの中に入ってみるのもいいかもしれん。だが、ピラミッドは、宝物を盗掘から護るために、様々な仕掛けや呪文が施されているという。危険を冒す意味があるかどうかが問題じゃな」
食事を作る為の焚き火の火を眺めながら、ロレンゾが言った。
「入ってみなきゃあ、何があるか分からんだろうが。どうせ、悪魔との戦いなんていう、雲を掴むような話なんだから、少しくらい寄り道したっていいだろう」
「まあな。悪魔がなぜ我々を襲ってこないのか、わしにもよく分からん。あのアプサラスだけで終わりだとは思えないのだが……」
マルスとマチルダは慣れない片言のグリセリード語やボワロン語でヤクシーと話している。
「パーリはまだボワロンに占領されているんでしょう? あなたがそこに帰ったら、危険なんじゃないの?」
マチルダが言うと、ヤクシーは笑って言った。
「私には失うものは一つも無いわ。だから、何も恐れるものは無いの。命だって惜しくない。パーリの中には、ボワロンの支配に反抗する気力のある人間も沢山いるはず。そうした人々を集めてボワロンを倒すのが、これからの私の生き甲斐よ。でも、あなたたちには恩があるから、もし私の力が必要なら、ずっと一緒にいるわ」
「そいつは助かる。これからはパーリ語が出来る人間が必要だからな」
側で聞いていたピエールが言った。
「しかし、復讐なんてのはあまり感心しないな。言っちゃあ悪いが、庶民にとっては誰が支配者になろうが同じ事なんだ。どちらの側について戦おうが、死ねば犬死にさ」
「私の父は国民の為に力を尽くして、国民を幸せにしてきた。国民もみな私の父を敬愛していたはずだ」
ヤクシーは、きっとピエールを睨んで言った。ピエールは首を横に振って言う。
「それは支配者の自己満足さ。為政者に不満を持ってない国民はいない。だが、不満を口に出せば殺されるから、表面では王の善政を褒め称えているだけだ」
ヤクシーは黙り込んだ。
「あんたが、ボワロンを倒すために自分の命を賭けるのは勝手だが、そのために他の人間を無駄死にさせちゃあいけないぜ」
「分かった。考えて見る」
ヤクシーは案外素直に言ったので、ピエールは少し意外な気持ちだった。
「まあ、俺のような泥棒がお姫様に説教なんてするのも変だがな」
「『元お姫様』よ。今は只の逃亡奴隷の女よ」
「はは、身分が何であれ、あんたが絶世の美人で、素晴らしい女だってことは変わらんよ」
「あんたも、泥棒にしてはいい男よ」
グリセリード語で話す二人の会話は、ロレンゾ以外はほとんど分からなかったが、どうやら二人が意気投合していることだけは理解できた。
翌日、朝食が済むと、五人はピラミッドの中に入ることにした。
ピラミッドの入り口には別に戸があるわけでもなく、大きな穴が口を開けているだけであったが、下はちゃんと石の敷かれたスロープになっており、穴の広さは五人が横に並んで通れるほどで、高さも頭上一メートル程度の余裕があった。
念のために松明を二十本ほど用意してあるが、中は真っ暗である。だが、ところどころに薄明かりが見えるのは、小さな明り取りもしくは空気穴が通路の上にあいているからである。
先頭を行くピエールは、マルスが常に持ち歩いている六尺棒を借りて、それで通路を叩きながら歩いている。
「おっと、ここには穴が開いている」
立ち止まったピエールが示した所には、確かに通路の幅の五分の四ほどを占める大きな穴が開いており、闇の中を足元を確かめずに歩いた者は中に落ちるようになっている。
マルスが覗き込むと、穴はかなり深く、底にはここに落ちた者の白骨らしきものが積もっている。おそらく、壁の勾配は、登ることが不可能な角度で作られているのだろう。
壁に張り付くように通路の横をにじりながら進み、穴を過ぎて一同はほっと一息ついた。
そこからさらに進むと、通路は三つに分かれていた。
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