今回の参院選から選挙権年齢が18歳以上に引き下げられた。若者の政治意識を高めた「SEALDs」に続けとばかりに、新たな政治運動が始まっている。ノンフィクションライター、西谷格氏がレポートする。
* * *
SEALDsに対抗意識を燃やす団体も現れている。東大生4人が今年1月に旗揚げしたのが、「国際勝共連合 大学生遊説隊 UNITE」だ。「国際勝共連合」とは、世界平和統一家庭連合(旧・統一教会)の創始者である文鮮明が設立したアンチ共産主義団体で、UNITEを立ち上げた4人も全員が家庭連合の2世だ。
UNITEは全国に支部を持ち、現在は約400人の学生が月2回の街頭演説を行っている。国防や憲法に関する彼らの主張は、安倍首相と思想的に近いものを感じさせる。
代表の小村聡士(東大文学部3年、22)に都内ホテルで会うと、安倍政権と近いとはいえ、それは結果的にそうなっただけで、共産主義に勝利するための勝共理論がまず先にある、と強調する。
「勝共理論」について知りたければ国際勝共連合のホームページに書いてある、という。読んでみたが、「マルクスの人間疎外論」から始まる哲学講義は、残念ながら私にはとても理解できなかった。
ただし、全面的に安倍政権支持というわけではない。
「女性には家庭の役割もある。どんどん社会進出していきましょうというのは、ちょっと違うかなと思う」
純潔を理念として掲げる家庭連合は、結婚するまで童貞や処女を守らなければならないなど独特の価値観を持つ。家族のあり方についても一家言持ち、小村はその後も熱心に語った。
ちなみにUNITEは国際勝共連合と協力関係にあるものの、あくまで学生たちが自主的に立ち上げたものだという。彼らの主張には共感しがたい点も多々あるが、その純粋な思いは伝わってきた。
個人的には、若者の政治参加の流れは加速してほしい。その動きに一役買ったSEALDsは、8月15日をもって解散する。そして、公式ツイッターにはこんな言葉を残した。
「また何か始めるでしょう。でも、期待しないでください。次はあなたの番です」
(文中敬称略)
※SAPIO2016年9月号