ゲーム・スポーツなどについての感想と妄想の作文集です
管理者名(記事筆者名)は「O-ZONE」「老幼児」「都虎」など。
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P R
カウンター
その六十一 戦争
グリセリードの上空からグリセリードをながめると、奇妙な感じです。とくに、自分たちが通った後を上から見ると、まったく変な気持ちがします。あの時、あそこの木陰で休んだな、とか、あそこでアリーナが川に落ちたな、とか。
「どうする? 家にもどるかい?」
ハンスはアリーナに聞きました。アリーナは首を横に振りました。
「家なんてないわ。もどったら殺されちゃうわよ」
たぶん、そうだろうなあ、とハンスも思いました。アリーナを育てた人も、アリーナを殺せという女王の命令にはさからえないだろうし。
ふと下を見ると、何やら異様な気配がしています。南西から北東に向かって、何万人もの人や馬の群れが移動しているのですが、それは軍隊のようなのです。でも、グリセリード軍ではなさそうです。
「戦争だ。グリセリードで戦争がおこっている」
ハンスは遠視の力を使って、軍隊の様子をながめました。すると、軍隊の先頭にいるのは、ヴァルミラではありませんか。そのとなりには、鎧(よろい)を着たピエールもヤクシーもいます。
セイルンにたのんで雲の高度を下げてもらい、ハンスはヴァルミラのそばに近づきました。
「これはこれは。ハンスとシルベラではないか。セイルンもいるな」
ヴァルミラは、にっこりと笑いました。相変わらずりりしい美しさです。
「この軍隊は何です?」
ハンスは聞きました。すると、ピエールがヴァルミラに代わって答えました。
「グリセリードとの戦争だよ。パーリのボワロン軍とグリセリード軍は追い払ったが、どうせまた新手が来るだろうから、こちらからグリセリードに攻め込むことにしたんだ。どうせ、今、グリセリードの内部はがたがただ。ろくな武将はいないし、みんなシルヴィアナとロドリーゴを嫌っている。あちこちで内乱が起こっているんだ。今のグリセリードは、図体はでかいが、張子の虎だ。ヴァルミラは、グリセリードの名将デロスの娘で、人々の信望を得ている。この戦、こっちが勝つよ」
ヴァルミラは、アリーナを見て、すまなそうな顔をしました。
「シルベラ、すまない。お前の母の女王と私は敵になってしまった。もしも相手が降伏すれば、おだやかにすませたいと思っているが、戦のことだから、場合によっては、お前の母を殺すことになるかもしれん。聞きにくい願いだろうが、私たちの軍の神輿(みこし、事業の飾りや象徴となるもの)になってくれないか。そうすれば、全軍の士気が上がるんだ。お前を次の女王にしてもいいと私は思っているのだよ」
ヴァルミラの言葉に、シルベラは首を横に振りました。
その六十二 アトラスト山
「自分の母親を相手に戦うなんて、そんな事、できません」
アリーナの言葉に、ヴァルミラもうなずきました。
「そうだろうな。これは無理な願いだった。なんとか、おだやかに女王を退位させるだけでこの戦を終わらせようと思うが、先のことはわからないからな。いずれまた会おう」
ヴァルミラやピエールに別れを告げ、ハンスたちはまた上空に上がりました。
「さて、どこへ行こうか」
セイルンの言葉に、アリーナが言いました。
「頂きが天に届くほど高い山なら、アトラスト山じゃないかしら」
アトラスト山とは、グリセリードとアスカルファンの境い目の大山脈の中の最高峰です。もちろん、まだ人間が登ったことはありません。
ハンスたちも、うなずきました。
「アトラスト山に登ってみよう」
西へ西へと進んで、やがて大山脈が見えてきました。
地面から数十メートルの高度を保ったまま、山の斜面にそって進みます。あっという間に、ふもとははるか彼方になりますが、山頂はまだまだ上です。なにしろ、エベレストの二倍、富士山の四、五倍ほどもある山なのです。当然、その山頂は雲の上にあり、下界からはほとんど見えないのです。
高度が上がるにつれ、どんどん寒くなります。ふるえているアリーナに、ハンスは自分の上着をかけてやりました。
「だめだ。これ以上、俺の雲では上れない」
セイルンがくやしそうに言いました。山の、およそ八合目、つまり全体の十分の八くらいの高さです。
「どうする。おりるか?」
チャックがハンスに言いました。
「いや、横に飛んでみてくれ」
ハンスはセイルンにたのみました。きっと、どこかに、天国への入り口があるはずだ、という確信のようなものがハンスの心にありました。
山の横肌をながめながら、ずっと飛んでいくと、アリーナが声を上げました。
「あっ、洞窟があるわ!」
なるほど、アリーナが指差したところには、ほとんど垂直に切り立った岩壁に、ぽっかりと洞窟らしい穴が開いています。
ハンスたちは、雲をその穴に近づけて洞窟の中に下りました。あらためて下を見ると、何という高さでしょう。下界は、ほとんど雲にかくれていて、雲の切れ目からわずかに見える部分も、藍色のもやのようにしか見えません。下を見るのも恐ろしいほどです。
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