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ゲーム・スポーツなどについての感想と妄想の作文集です 管理者名(記事筆者名)は「O-ZONE」「老幼児」「都虎」など。
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打者の成績というものは、4打数で1安打なら2割5分で、並みの打者。4打数で2安打なら5割で、奇跡の打者。1試合だけで見るならば、並みの打者と奇跡の打者との差はヒット1本の違いでしかない。しかし、1試合にたった1本のヒットでも、打てない奴にはまったく打てないのが野球なのである。もちろん、選ばれてプロ野球界に入ってくるくらいの人間なら、最悪でも通産打率2割程度は残すものではある。
しかしまた、ポジションによっても打率の価値は変わる。
たとえば通産打率2割7分というのは、どの程度の価値かと言うと、捕手なら、超一流の成績である。最近引退した阪神の矢野が残した成績がそれだ。彼の打撃は、落合が褒めていたほど優れた打撃であったが、それでも生涯成績は2割7分程度である。おそらく、古田で2割8分くらいかと思う。野村も2割7分台だろう。それ以外の選手で2割7分以上を残した選手は日本にはほとんどいないのではないだろうか。城島がもしかしたら2割7分を超えていたかもしれないが、打てる捕手として知られた木俣あたりでも2割6分台だろう。
大リーグは捕手王国であり、マイク・ピアッツアなどは毎年のように3割を超えていたから、通算成績でも3割を超えていたかもしれない。こういうのは、化け物である。そして最近は、イチローよりもヒットを打つのが上手で、捕手で首位打者も取ったマウアーなんて化け物もいる。
捕手と同様に、守備力優先のポジションが遊撃手で、日本の場合は、遊撃手で2割8分も打てば、他のポジションでの3割の値打ちがある。しかし、守備の内容が激務であるという点では、やはり捕手が一番である。したがって、捕手の打撃の合格ラインは2割3分くらいと見てよい。捕手にそれ以上を求めるなら、特別ボーナスを出すべきだろう。
捕手というポジションは、グラウンドの監督と言われる。実際にプレーする選手の中で、グラウンド全体をその中心の位置から見渡すことができるのは捕手だけなのである。そして、投手への指示を出し、相手打者と頭脳の対決をするのは捕手である。この点では実際の監督よりも試合に関与しているのである。捕手は、守備面での監督、そしてチーム監督が攻撃面での監督だと言えるかもしれない。
したがって、優れた捕手がいるかどうかは、チーム成績に大きく関係するのは言うまでもない。
捕手に求められる資質は、① 盗塁阻止率4割以上を残せるだけの肩の強さ。 ② 投手リードの上手さ。 ③ キャッチングの上手さ。 などであり、打撃力はその次にしか来ない。打撃が必要なら、他の楽なポジションの選手がその役目を果たせばいいのである。
そして、③のキャッチングの上手さは、長い間やっていれば誰でも上達するものなのだから、結局、捕手を探す場合には「最低限度の肩があること」「野球頭脳があること」の2点が重要ポイントだということになる。しかし、ほとんどの野球チームは、新人捕手を探す際に、まず打力を見るのである。なぜなら、捕手の野球頭脳は、外面からは分からないからである。コンビを組む投手の能力によっても、捕手の野球頭脳の評価は変化する。
しかし、一つのチームをずっと観察していれば、そのチームの捕手のレベルは分かるはずだ。長期に亘って低迷しているチームは、まず捕手を変えることが必要だ。
すぐれた捕手は、投手の能力を2割以上向上させる。場合によっては4割も5割も向上させる。防御率が4.0の投手陣の能力が2割向上したなら、防御率3.2である。1試合に取られる点数が4点であるのと、3点であるのとでは、シーズンを通しての勝率も大きく変わるはずである。チーム成績が同じように2割向上したとすれば、勝率5割のチームなら、勝率6割となり、一躍、優勝を争うチームになるわけだ。
野球の面白いところは、どんなに強いチームでも、10戦して7勝3敗がせいぜいで、年間を通して勝率8割というチームはまず存在しないことである。つまり、勝率6割というのが、優勝を目指す場合の現実的目標の第一段階となる。言い換えれば、3連戦が2回続いた場合に、2勝1敗、1勝2敗という五分の星を残せば、最終局面で優勝争いに加わる可能性はあるということだ。しかし、それが1勝2敗、1勝2敗となると、いきなり最下位争いということになる。その差は、6試合では実に1勝の違いでしかないのである。
しかし、こうして2勝4敗と負け越した場合、その星を五分に戻すには、通常はその後の3連戦2回で、2勝1敗、2勝1敗の勝ち越しを続けないといけない。実際には弱小チームは、ここでも1勝2敗、0勝3敗という星を残し、シーズンを通して最下位争いをすることになる。そういう弱小チームが3連戦3連勝するという甘い夢は、滅多にかなうことはないのである。なぜなら、弱小チームには信頼できる先発投手が3人いるということはほとんど無いからだ。2勝1敗、あるいは1勝2敗というペースを平均して維持するには、年間を通して5分の星を残せる先発投手が5人から6人必要である。そして、投手陣の能力を最大に引き出すには、優れた捕手が必要なのである。
もちろん、完成された投手ならば、捕手が誰だろうと実力を発揮できるだろう。しかし、そういう投手、いわゆるエース級の投手は、各チームに2名前後しかいない。あるいは一人もいないというチームもあるはずだ。横浜などがそれである。三浦など、鳥無き里の蝙蝠でしかない。一方、成績はふるわないが、楽天という球団には、岩隈、田中とエース級が二人もいる。
先発投手6人が贅沢なら、それを5人か4人に絞ってもいいが、エース級以外の投手はそれほど力の差があるわけではないから、そこで捕手の力とベンチワーク、つまり監督の力が発揮されることになる。つまり、1試合で4点取られる投手の失点を3点までに抑え、1試合で3点しか取れない打線が4点取る、というのが捕手と監督の仕事なのである。相手チームの投手が絶対的なエースでない場合、捕手と監督の能力によって試合の勝ち負けは大きく変わってくる。
言い換えるならば、相手チームがエースを出してきた場合、「この試合は8割がた負けだ」という覚悟で戦うしかないのである。それがエースという存在だ。しかし、仮に、こちらの出した2流投手が絶好調で、最小失点で抑えていたなら、こちらにも勝つチャンスが生まれる。たとえば、1対0でこちらが負けていても、9回裏、相手エースが死四球を出し、その後、失投してど真ん中に投げたボールをこちらのへぼバッターが一世一代のスイングをしてホームランにする、ということもあるわけである。これが、プロ野球には完全な記録、つまり打率10割の選手も、生涯防御率0.00の選手もいない理由である。
だが、だいたいの場合は、チームの成績は、個々の選手の能力の足し算になることが多い。3割打者3人と30本塁打を打つ打者3人を揃えたチームは、3割打者0人、30本塁打の打者0人のチームよりも、得点能力は2~3倍高いだろう。つまり、通常なら、この両チームは2対0とか、3対1とかいう得点で前者が勝つはずだ。しかし、野球には無数の戦法がある。チームの全員が快速選手なら、単打しか打てなくても、盗塁をどんどんやって塁を進め、犠打やスクイズもどんどん使って点を取ることもできる。ただし、その間に相手チームがどかんどかんとホームランを打って、その倍以上も点を取る可能性は高いが。
要するに、3割打者やホームランバッターというものは、やはり価値があるのである。
したがって、チーム作りをする場合には、だいたいにおいて次の要素を満たすことが必要である。
    優れた捕手が一人と、その控え捕手が一人。
    ある程度の安定性のある先発投手が5、6人。
    安定性のある守備をする遊撃手が一人と、二塁手が一人。
    3割打者が2~3人。
    ホームランバッターが2~3人。(3割も打てるホームランバッターならなお良いが、その場合はそういう選手がチームに2人以上いるというのは、かなり恵まれた状態だと言える。)
    8割以上の確率でリードを守れる抑え投手が一人。
 
 
現実のプロ野球球団を見ても、だいたいにおいて、これらの条件を満たしているチームが強豪チームであるはずだ。
しかし、問題は、これらの条件を満たす選手は値段も高いということである。そこで、貧乏球団は前記の条件ではなく、他の要素を満たす選手を使ってチーム作りをすることになる。たとえば、次のような選手だ。
 
    打撃力はあるが、守備がへたくそな野手。
    守備は上手いが、打撃力はまったく無い野手。
    守備も打撃もダメだが、足だけは速く、盗塁の勘もいい野手。
    球は速いがコントロールが悪い投手。
    球は遅いがコントロールはいい投手。
    三振が多いが、長打力はある打者。
    三振は少ないが非力な打者。
    肩は強いがリードが下手な捕手。
    野球頭脳はあるが、肩が弱い捕手。
 
きりが無いので、これくらいにするが、実は野球を見るならこうした貧乏球団を応援するのが一番面白いのである。私が昔応援していたのは広島カープで、山本浩二、衣笠祥男らが台頭する以前の、つまり「赤ヘル」以前のカープであった。その二軍選手を応援し、彼らが一軍で起用されてヒットでも打ったら、我が事のように喜んだものだ。
その頃の広島の二軍選手の渋谷とか上垣内とかいう名前を今でも覚えている。佐伯投手なども、その時代だっただろうか。まだ安仁屋、外木場が現役だったころだ。 
その広島に法政大学から山本浩二外野手が入り、もちろん私は彼を応援した。強肩で有名な外野手で、最初は守備の人だったのだが、30歳を過ぎるころから長打力が出てきて、何度かホームラン王を取るまでになった。ジャイアンツの黄金時代が終わり、掛布、山本浩二が打のスーパースターになったのである。同じ頃、鉄人衣笠も安定した成績を残すようになって、赤ヘル黄金時代となったのである。
しかし、そのように強くなった広島には、私はもはやあまり関心がなかった。私の興味は不人気リーグの王者、阪急ブレーブスに移っていた。
それまでは弱小球団を応援していたのが、今度は、力はあるのに人気に恵まれないという不運な球団に肩入れするようになったのである。
そして、その頃の阪急は素晴らしい球団だった。
日本球界史上最高の盗塁王福本、いぶし銀の大熊、(のちにはハンサム蓑田)強打者加藤、長池、代打男高井、サブマリン足立に山田(のちには佐藤義則など)、守備の名手大橋、そして後には快速球の山口崇志など、実に役者揃いの魅力的な球団であった。そして、それを率いるのは、名将西本、智将上田である。
これだけの魅力的な選手を持った球団が、パリーグであるというだけで、低い知名度に甘んじているという理不尽さが、私をいっそう阪急びいきにしたのだろう。
今思っても、この頃の阪急にまさる魅力のある球団は存在しない。私は知らないが、黄金時代の西鉄ライオンズくらいだろうか。V9時代の巨人はもちろん素晴らしいが、それは王・長嶋の二人の魅力によるものだ。この二人がいない巨人などに、何の魅力があろうか。
だから、もちろん、現在の巨人にも私は魅力を感じない。
それよりは、かつての弱小時代の広島のような球団を、応援してみたいと思っているのである。
 
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往年の巨人の好打者、清水崇行のブログから。打球にスライスをかける方法について。
本人は、「物理的には不可能だと思うんですが」と言っているが、落合はそれをはっきり可能だと言っている。しかし、落合の場合はその具体的な方法を述べていないのだが、清水氏は、それを「体を開かず、しかもハンドファストで、インサイドアウトに打て」と明確に言っている。これは「物理的に」言っても、明らかにスライス打球になる打法である。この打法を身につけることができたら、打率をかなり上げることができるだろう。これは、自己形成の途上にある野球人にとっては「黄金の価値を持つ言葉」なのである。野球の技術の中には言語化できないものや言語化しにくいものがある。その中で、このように明確に言語化されたものは、本当に貴重なものなのだ。


(以下引用)

ンコースを打つときは、
体の近くで打つようなイメージでした。
インコースを近くでというと、詰まってしまいそうと思うかもしれませんが、
僕の場合はそういう感覚で打つのがいいんです。
インコースを前で捉えてしまうと、
絶対にファールになってしまいます。
体を回さずにバットだけ先に体の前を通すイメージで振ると、
インコースをひきつけて打つことができるんです。
物理的には不可能だと思うんですが、
ひっぱった打球にスライス回転をかけるようなイメージです。
こういうバッティングをするためには、
絶対に体を開いちゃいけません。
そして、バットがインサイドアウトの軌道を描くことが大事です。
中日が巨人を破って日本シリーズ出場を決めたが、昨夜の試合では、落合の投手起用に迷いが見られた。その前の試合で阿倍にホームランを打たれて敗戦投手になった岩瀬を投入しなかったのだ。そのために浅尾を続投させ、その結果、同点に追いつかれることになったのだが、二日連続の救援失敗となった場合岩瀬が駄目になるマイナスの方を重視してそうなったのだろう。
ある野球サイトで分析されていたのだが、岩瀬の球威・球速、すなわち基礎投手能力はここ数年落ちてきている。その分、キャリアによる投球術が上達しているので、セーブ数は稼いでいるが、打者を力で抑えることは、難しくなってきているのである。(力で抑えるという点では現在は阪神の藤川が最高であり、おそらく現在の彼は大リーグでも上位レベルだろう。)
現在はまだ名前勝ちという面もあって、岩瀬攻略は難しいと思われているが、来年以降はそうではなくなるはずだ。落合も、岩瀬の後継者を探すことを考えなければならないだろう。
さて、日本シリーズはロッテ対中日となったが、ここはやはり超一流投手はいないが先発の粒のそろっている中日が有利かと思われる。吉見、チェン、山本のうち一人が成瀬との対戦で負けても他の二人が勝つだろう。そして、成瀬との対決で勝てば、ワンサイドの結果になることも考えられる。しかし、中日も打線はそれほど強力ではないので、なかなかの好勝負になりそうな予感がする。
私が落合ならば、第一戦の先発は山井を立てる。そう、あの日本シリーズ完全試合目前で落合に投手交代を命ぜられて物議をかもしたあの山井である。彼が、この季節に調子を上げてくるタイプならば、また大仕事をやりそうだし、失敗しても成瀬相手なら、覚悟の敗戦だ。ロッテはすでに成瀬という大駒を使ったのだから、かえって中日が有利なくらいだ。また、失敗したら失敗したで、「やはり前の日本シリーズでの落合の判断は正しかった」となる。「また」完全試合をしたら? それはないでしょう。
甲子園で活躍した選手、あるいは才能を評価されながら甲子園では不完全燃焼で終わった選手たちが、軒並み六大学や東都大学への進学を希望している模様である。特に、私がごひいきの興南高校の真栄平一塁手は明治、我如古三塁手は立教、島袋投手は中央大への進学を希望している。そうなると、東都大学では東浜対島袋という黄金カードが毎季のように見られるし、六大学に進む甲子園球児も例年になく多そうだから、六大学を見るのも面白そうだ。東京近辺に住む野球ファンは、この機会に大学野球をご覧になってはどうだろうか。それで大学野球が盛り上がれば、選手も発奮して、その力をより伸ばすだろう。長嶋、杉浦時代は古すぎるにしても、田淵、星野、富田時代や、江川時代の大学野球を懐かしく思うオールドファンもいるだろう。特に真栄平選手にはホームラン記録の更新、我如古選手には通算安打数か通算打率記録の更新を、ぜひ目指してもらいたいものである。そして4年後には、興南出身選手がそろってドラフト1位で指名されるという快挙を期待したい。
一二三あたりも、今のような中途半端な状態でプロ入りしても潰されるのがオチなのだから、大学野球でその能力を確立してからプロ入りを目指すほうがベターだろう。(プロ野球は、自己管理の世界であり、意思が強く、自分自身の頭で考える力を持った選手以外は大成できない。二軍の指導者も、「選手を育てたことへの報酬など無い」のだから、実はそれほど選手を育てる意欲のあるコーチはいない、と私は見ている。菊池雄星など、1年前はあんなに騒がれたのに、今は名前もまったく聞かないではないか。)他に、素質からはナンバーワンと言われる有原(字はこうだったか?)投手なども早稲田を目指すそうだから、実に面白いメンバーになりそうである。
「逆境ナイン」という映画をこの前DVDで見た。この映画の原作である島本和彦の漫画を読んだのはずいぶん昔だが、やっと時代が島本和彦に追いついたか、という感じである。「小林サッカー」の大ヒットで、漫画的表現と実写的表現の融合が世界的に許容されるようになってきたのだが、この作品もその一つである。主人公と、ヒロインを演ずる役者が島本和彦好みでないこと、したがって、原作漫画を愛する人間にはかなり違和感の残る風貌であることが欠点だが、それ以外の点では大健闘の出来である。お馬鹿な漫画の良さを映画に移植しようとしたそのチャレンジ精神だけでも大したものだ。
この映画、あるいは漫画には、様々な教訓が含まれている。自分の普段のポリシーにとって都合の悪い方向に話が行きそうになった時の「それはそれ、これはこれ」という名言は、島本ファンなら誰でも知っていて、座右の銘にしていると思うが、実は野球というゲームにとって、最大の教訓がこの話のプロットの中にある。それは、こちらがたとえ112点取っていても、ゲームセットになるまでは、試合に勝ったわけではない、ということだ。
野球は、27個のアウトを取らない限り、終わらないゲームである。26個のアウトを取っていても、そこから113連続安打が起こるかもしれない。そして、最後の1本は、当然、さよならホームランである。9回裏の1イニングだけで112対0という点差をひっくり返したという漫画は、数ある野球漫画の中でも、さすがに私の記憶ではほかにないが、少なくとも、可能性の問題としては、現実にもありうる話である。まあ、宇宙誕生から宇宙消滅の長い時間の間には、きっと1回くらいは起こるだろう。野球というゲームは、もう滅びてるよ、というサッカーファンの声も聞こえるが。
野球に興味のある人間なら、たいていが知っているだろうが、「マネー・ボール」という名著がある。この本は、他球団がほとんど興味を示さないクズ選手を集めて、優勝争いをしてきたあるチームの、選手集めにおける方針が出塁率にあったということ、そしてその発想は、あるアマチュア分析家の自費出版していた小冊子にあったことを描いている。
専門家というものは自分の成功体験だけにとらわれて、それ以外の要素が見えなくなる傾向がある。その道の専門家が自分の専門分野について一番、目が見えていないということもあるのである。たとえば、彼がAという方法を取って成功したとする。しかし、Aという方法を取らなかったら、それ以上に成功した可能性があったということには気づかないのである。これは経済学では「機会損失」という基本的な考え方だが、経験主義のまかりとおるスポーツの世界では自分の成功体験だけが判断基準になるのである。
なるほど、肩が強く、足が速く、頑強な体を持った選手はプロで成功する条件を持っているだろう。「俺がこいつを鍛えて、成功させれば、それは俺の手柄になる」とコーチは思うし、スカウトも、野球であまり実績のない「素材型」選手を掘り出せば、目利きの評判が得られるだろう。
だが、そうして「発掘」された素材型選手の中で成功する例が一つあるとすれば、失敗した例はその百倍もあるのである。そうして、毎年のように膨大な無駄な金が「素材型選手」の獲得のためにドブに捨てられていくのである。
あなたがもしこれからプロ野球の球団を持とうと思うのなら、まずはそうした「専門家」の言葉を無視して球団の選手獲得方針を自分の頭で考えるのがいい。ちなみに、「マネー・ボール」で描かれた、アマチュア分析家の発想を用いて球団作りに成功したゼネラルマネージャーは、自分自身、「素材型」の野球選手で、自分の失敗体験から学んだ男である。
楽天が一気にAクラスチームになる方法がある。それは、大リーグで不要とされた日本人選手たちを集めることである。すなわち、松井遊撃手、井川投手、岩村三塁手などをすべて日本に呼び戻すことだ。これらの選手は、大リーグでこそレギュラーになれなかったが、日本では活躍する力を持った選手たちである。日本野球に適応できるかどうか不明のアメリカ人選手よりも、日本で活躍する可能性ははるかに高いのは、大リーグ帰りの井口、城島が日本復帰して残した数字を見ても分かるだろう。まさか彼らにしても大リーガー並の年俸を要求したりはしないだろう。まあ、平均1億円といったところか。それならば、現在の日本人のクリーンアップクラス、あるいは中堅ローテーション投手程度の年俸である。その年俸ではいやだというなら、契約しなければいい。年齢による実力低下を加味すれば、最高でも1億5千万くらいのものだろう。それが日本での彼らの相場だ。岩隈が大リーグ入りするならば、その浮いた年俸に少し加えれば、3人とも雇えるのではないか。野手陣の弱さが楽天の欠陥でもあるのだから、一気にその弱点も解消される。
上に挙げた三人以外でも、福留孝介外野手、川上憲伸投手、田沢純一投手など、大リーグよりも日本のほうが向いている選手に声をかけてもいい。大リーグの二流選手で終わりたいのか、それとも日本の一流選手でいるか、彼らにしても決断のしどころだろう。
新しい選手はどんどん出てくる。大リーグを目指した彼らも、もはや全盛期の力ではない。このままアメリカに残っても、使って貰える可能性は低い。ならば、日本球界復帰が、彼らにとっても賢明な選択ではないだろうか。べつにそれを恥じるには及ばない。残り少ない野球人生で、チームの優勝を味わえるかどうかというのも、選手としては大きな選択要素ではないだろうか。そのためならば、たとえ1年2年の活躍で終わるにしても、日本球界の歴史に自分の名を残すチャンスを選ぶべきだと私は思う。最近は中日の和田や日本ハムの稲葉のように35歳をすぎて成績を伸ばす選手も目につく。日本球界に復帰することで彼らの選手寿命が伸びる可能性もある。彼らの選手生活の晩年が、大リーグの二流選手として終わるのは、もったいない話である。
もちろん、これは楽天だけに限った話ではないが、星野は、オーナーから金を引き出すという才能があるから、楽天を例にとったのである。他の弱小チーム、たとえば大洋や広島が彼らを獲得するのも大いに結構である。金があればだが。
イチローのバッティングの特徴は、バットを振る時、手首(と言うべきか)を返さないことらしい。手首を返すとは、振り始めの時に手の甲が天を向いているグリップエンド側の手と、手のひらが天を向いているヘッド側の手が、インパクトの瞬間に上下が入れ替わることだが、それを返さないのである。これはすべての場合に返さないのか、それともある場合に返さないのかは不明だが、とにかく、手首を返さないままでインパクトする、というのが彼のバッティングの一つの個性のようだ。
これが彼だけにしかできない技術なのか、それとも打撃術として一般化できるものかは不明だが、言えそうなことは、おそらくその打撃ではホームランを打つのは難しいだろうということだ。それが実際に彼のホームラン数の少なさに表れている。イチローは打撃練習の時にはスタンドにポンポン放り込むと言う。オールスターのホームラン競争に出たら優勝するのではないかと、彼の同僚は言っているそうだ。しかし、実際の試合になると、彼の打撃は別パターンになるわけである。もちろん、彼は打撃戦略としてホームランを打たない、打てない打撃法を採用しているのである。
手首を返さない打撃法とは、要するにバントである。彼の打撃はバントを進化させたものと言うことができるのではないだろうか。ならば、彼の打率が高いのも当然である。どんなに下手な打者でも、バントをするくらいはできる。つまり、球にバットを当てるというだけなら、バントが一番なのである。ならば、バスターヒッティングをすればいいと言うかもしれないが、たいていの打者はインパクトの時には手首を返している。つまり、前半のみがバントのポーズで、後半は普通のヒッティングにすぎない。これをイチローはインパクトの瞬間までバントをし、その後で振り切る。ボールは投手が投げたラインのままに打ち返され、バットとの衝突による変な回転もないからポップフライやぼてぼてのゴロになることも少ない。そして、打球はライナー性の当たりで内野の守備位置に達し、内野を抜けるヒットになるか、内野が処理してアウトになるわけだ。そこは確率と偶然の問題だ。
大リーグにおけるイチローの体力は、高校野球での非力なバッターに相当するだろう。ならば、高校野球で自分の非力さを痛感している選手は、「手首を返さない打撃」を試してみてはどうだろうか。これに、最初は両手のグリップを離して持つスライディンググリップを加えれば、君もタイ・カッブになれるかもしれない。

*ジャイアンツの松本外野手がスライディンググリップを採用し、今年の前半、4割近い高打率を残していたことに注目。その後、打率が下がってきたが、それは体力や基礎的身体能力の問題だろう。
昔、ジャイアンツに高田という選手がいた。もともとは守備のうまい名左翼手だったが、長嶋監督の時に三塁にコンバートされ、内野手としても優秀なところを見せた。
この高田の打者としての特徴は、やたらにレフト側へのファールが多かったことである。「高田ファール」と言われていた記憶がある。高田の通算打率は2割7分か8分程度だと思うが、高田ファールの半分でもフェアグラウンドに入っていたら、3割を超えたのではないだろうか。
その反対の例が落合である。彼は、狭い東京球場をホームグラウンドにしていたが、彼が三度も三冠王を取ったのは、狭い球場のせいではない。彼と同じくロッテにいた強打者の誰も三冠王にはなっていないのである。
けっしてパワーに恵まれた体格をしているわけでもない彼が何度もホームラン王を取ったのは、彼がある技術を身につけたからである。これは彼自身が書いた本の中にある。
それは、レフト線付近の打球にわずかにスライスをかけてフェアグラウンド内に運び、ライト線付近の打球に軽くフックをかけて同じくフェアグラウンド内に入れるという技術である。これは体で覚えた技術なので、他人に教えることはできないが、とにかくそういうことが可能だということだ。ゴルフをやる人間ならば、彼のこの言葉が真実だとすぐに理解するだろう。もちろん、ゴルフクラブとバットでは形態は違うが、バットの出し方次第ではスライスもフックも可能だと思われる。
こうして、ライト線やレフト線への打球、特に外野飛球がポールの内側に入るようになったことで、彼のホームラン数は飛躍的に伸びたのである。これが、頭で野球をするということである。
投手にとって一番大事なことは、150キロのストレートを投げることではない。たとえわずか100キロのストレートでも、ボールがバットに当たる瞬間に、打者の予測したコースとほんのわずかなずれがあれば、ヒットにはならないのである。
つまり、ボールがバットに当たる瞬間は、ボールの軌道とバットスイングの起動の直線対直線のイメージではなく、ボールという球体の中のバットと衝突する一点と、バットという円筒のボールに当たる一点とが一致するかどうかという点対点でとらえるべきなのである。
これが分かれば、なぜ球速の遅い投手が打者を抑えることができるのかが分かる。つまり、打者がボールをバットで捉えるその瞬間に、ボールが予測とわずかに違う角度を持って打撃ゾーンに入ってくれば、たいていは凡打するわけだ。つまり、バットの芯に当てさせないために、上下の角度や左右の角度をボールに与えることができるかどうかである。ボールが一直線に打撃ゾーンに入ってくれば、どんな速球でも打者は打ち返すだろう。そのために毎日ピッチングマシンの速球を打ち込んでいるのだから。

甲子園野球などでは、速球派投手たちが簡単に敗退し、球の遅い投手を擁するチームが案外と勝ち残るのを見ることが多い。また、豪打・強打のチームほど、そうした技巧派投手に翻弄されて敗退するものである。
野球は、もちろん才能も必要だが、才能に恵まれない選手でも頭を使うことで対等に戦うことができる。だからこそ、野球は面白いのである。
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