だが、横浜球団の根本問題は、横浜球場との理不尽な契約からくる赤字体質にある。そのために内川や相川などの有力選手に逃げられ、成績も上がらないわけだ。
で、その理不尽な球場との契約について下に転載する。
(MSN産経ニュースから転載)
「あそこは球場の資質が悪い」。巨人の渡辺恒雄会長は4日、報道陣の取材に対してこう批判を展開した。横浜スタジアムがJRや地下鉄の最寄り駅から徒歩わずか3分で、中華街に隣接する好立地にもかかわらず、渡辺会長がかみつく矛先は、球団と球場の契約内容に向いている。
スタジアムは1978年に誕生した。「プロ野球も呼べる球場建設」を目指し、地元財界などが中心となって設立に動いた結果、出来上がった。横浜市が管理する横浜公園内にある同スタジアムは、国有地を同市が借りており、その上に建設されている。
運営するのは、同市も出資する民間企業「横浜スタジアム」だが、同スタジアムは当時の大洋ホエールズが本拠地を川崎市から移転した同年、条件付きで同市に寄付された。
このときの条件の柱が、(1)以降45年間に球場内で行われたプロ野球などの興行権(2)球場内の売店などの販売や広告看板の収入について、横浜スタジアムのものとする-だった。代わりに、球場内の維持・管理費用はスタジアム側が負担。横浜スタジアムは市が国から借り受けた好立地で球場運営が行え、市は無償で立派な球場を手にできる仕組みだ。
半面、球団は肩身の狭い立場に置かれた。主催試合を行うために球場を“間借り”するだけ。球場内で手にできる収益の大半は入場料収入だ。球団幹部が「国有地で何かと不便」と嘆くように、建坪率などでも厳しく規制され、施設の増築などはできない。
優良資産を保有する横浜スタジアムの有価証券報告書によると、球団は2009年、入場料収入の25%を球場使用料として払った。この額が約8億円。さらに球場の販売収入は約15億円、看板広告収入は約10億円あるが、球場側からの見返りはこの中の分配金など約3億円にすぎない。
近年の横浜の年間赤字額は20億円超とされる。昨季の観客動員数は約120万人で、1試合平均は収容定員3万人に対し、1万6800人。空席も目立つが、球団幹部は「仮に全試合で満席になっても現行より3億円しか売り上げは伸びない。現行の条件で試合を行う以上、赤字経営は避けられない」と打ち明ける。
昨年、最終的に決裂したものの、横浜球団買収に動いた住生活グループが静岡を最有力に本拠地移転を目指して交渉したのは「横浜スタジアムでは商売にならない」と見たからにほかならない。
05年にプロ野球界に新規参入した楽天を例にとれば横浜との違いが分かる。本拠地のKスタ宮城の使用に関して宮城県と結んだ契約は、年間5千万円の使用料を支払えば、入場料だけでなく、売店や球場広告などの全収入を球団が手にできる。参入1年目で黒字計上した楽天と、横浜が球場と結ぶ契約との差は歴然だ。
慶応大の鈴木秀男教授(応用統計解析)が今年1月、インターネットで実施した「プロ野球のサービスに関する満足度調査」では、横浜スタジアムは立地(アクセス)で3年連続の1位となった。鈴木教授は「集客面で捨てがたい立地」と強調するが、厳しい制約がこうしたプラス要素を削ぎ取っているのも事実だ。
球場側と球団側の球場使用に関する10年契約は昨年末で切れ、今年は交渉が難航し、新たな契約を更新していない。「ドル箱」と呼ばれた巨人戦などのテレビ放映権料の下落が深刻化。各球団が球場内で収益確保に努める中、加地隆雄球団社長は「横浜で試合をやってほしい」と訴えるが、球団内からでさえも、契約見直しを求める声が上がる。