蔵さんごひいきの上茶谷は「気になる箇所が見受けられた」らしい。さて、蔵さんの鑑識のように10勝レベルが期待できるだろうか。連続写真だと、まあ、普通の投手という感じだ。球が上ずり易そうな感じで、ポカの多そうなタイプに見える。アマではそれでも打者が打ち損なうだろうが、プロでは見逃さないだろう。初年度は中継ぎが主で、怪我がなくずっと一軍にいたら、3勝8敗、防御率4.30と予想。ただし、大学時代の実績や数字をまったく知らないので、下の連続写真からの印象にすぎない。
下の3投手の中では私はやはり吉田輝星のフォームが一番いいと思う。流れるような体重移動で、柔らかい。ただ、打者からしたら打つリズムが取りやすく、ボールは見やすいかもしれない。それを上回り、打者を圧倒する球威が保持できるかどうかがカギだろう。しかし、試合を作れる投手になることは確かだと思う。フォームの完成度、安定性は3投手の中で一番ではないか。1年目から無理なく使えると思うのは私の贔屓目だろうか。高卒1年目で10勝、という、江夏ばりの働きをする可能性もあるとすら思う(日ハムの現状なら、それだけ使われることもありうる。)が、それは、毎度言うが、変化球をブラッシュアップできるかどうかにかかっているだろう。
西武松本航しなり◎ローテ入りの力量あり/西本氏
<解体新書 特別版西本聖氏>
これが金の卵たちの現在地だ。日刊スポーツ評論家の西本聖氏(62)が、春季キャンプ恒例企画「解体新書」の特別編として、日本ハム吉田輝星投手(18=金足農)西武松本航投手(22=日体大)DeNA上茶谷大河投手(22=東洋大)の投球フォームを分析。ドラフト1位の右腕トリオを比較しながら、それぞれの長所と気になる箇所を指摘した。
【写真】投内連係で軽快な動きを見せた西武松本航
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3人のルーキーに共通しているのは、下半身に力があること。軸足の使い方で松本航の<5>、吉田輝の<4>、上茶谷の<4>の瞬間を比較すると、みんな膝を外側に割るように使えていて、軸足に体重を乗せるのがうまい。さすがドラフト1位の評価を受けるだけのことはある。
3投手を分析した結果、大卒と高卒の違いはあるが、現時点で一番完成度の高い投球フォームをしているのは、西武の松本航だと断言できる。それに続くのが日本ハムの吉田輝。DeNAの上茶谷は、気になる箇所が見受けられた。3人ともキャンプ序盤の投球だけに、これからもっと良くなってくるだろう。
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最も完成度の高い松本航は、最近では少なくなったワインドアップ。足をゆっくりと上げて投げる独特のフォームだけに、全身をゆったりと使いたい気持ちが強いのだろう。大きく振りかぶって始動している。左足を上げてきた<3>から<5>の時点でつま先を三遊間の方向に放り出すように“間”を取っている。変則の“2段モーション”で、軸足にしっかりと体重を乗せられる。左足もゆっくりと下ろしていくだけに、この2段モーションとの相乗効果で、打者はタイミングを取りづらいだろう。
素晴らしいのは<8>の「しなり」。全身が弓のようにバランス良くしなっている。この角度からだと分かりづらいが、テークバックでもボールが頭の後ろに隠れている。打者からすると、いきなりボールがリリースされるような感じがして、かなりの体感スピードになるのではないか。下半身をゆっくり使うと、上半身とのバランスを取るのが難しくなり、フォームが崩れやすくなる。難易度の高いフォームだが、下半身と体幹の筋力が強いから実践できている。<8>から<10>での左足の曲がる角度も良く、安定感がある。フォームを見ただけでも、ローテーション入りする力量があると感じさせる。(日刊スポーツ評論家)
◆松本航(まつもと・わたる)1996年(平8)11月28日、兵庫県朝来市生まれ。小2から梁瀬少年野球クラブで野球を始める。明石商では1年夏からベンチ入りも、甲子園出場なし。日体大では2年春に6勝2敗でMVPに輝くなど、リーグ戦通算30勝。3年から大学日本代表に選ばれ、日米大学選手権などに出場。今季推定年俸1500万円。176センチ、84キロ。右投げ右打ち。