第98回全国高校野球選手権大会第9日第1試合(市和歌山4-6日南学園、15日、甲子園)日南学園(宮崎)が6-4で市和歌山(和歌山)に勝ち、3回戦に進出した。二回途中からリリーフした身長1メートル60のエース森山弦暉投手(3年)が7安打1失点の粘投で逆転勝利を呼び込んだ。広島新庄(広島)はエース堀瑞輝投手(3年)が90球の1失点無四球完投で、富山第一(富山)に勝利。花咲徳栄(埼玉)は樟南(鹿児島)を倒し、これで16強が出そろった。
九回二死一塁、藪井を中飛に打ち取ると、森山はガッツポーズを作って笑顔を見せた。小さなエースが、踏ん張った。
「監督から『ピンチになったらいくぞ』と言われていた。心の準備ができていたからこそ、抑えることができました」
先発・蓑尾が二回、失策などもからんで3失点。早々に出番がやってきた。二死一、三塁を一ゴロで切り抜けると、その後は7安打を許しながらも要所を締めて7回1/3を1失点。「味方が4、5点取ってくれると信じていた」と話した通り、打線が五回に追いつき、六回には押し出し四球で勝ち越しに成功した。
“ビッグ3”の寺島(履正社)は1メートル83、藤平(横浜)は1メートル85。高橋昂(花咲徳栄)は1メートル81。今大会でエースナンバーを背負う選手ではもっとも小さい1メートル60で、MAXも130キロと平凡だ。その武器は「(今大会で)ナンバーワンのつもりです」と豪語する制球力。1回戦の八王子学園八王子(西東京)戦では8回で2四球。24アウトのうち18度もゴロを打たせた。この日も低めに変化球を集め、1四球の丁寧な投球でゴロやフライを打たせた。
甲子園に来る前にウエートアップしすぎて70キロを超えたため、宿舎ではチームメートが朝からどんぶり3杯食べるところを2杯に節制。好きな炭酸飲料も控えて現在69キロのところを67キロまで落とし、さらにキレを出す。
3回戦進出は9年ぶり。もう1つ勝てば寺原(現ソフトバンク)を擁した2001年以来の8強だ。「まずは目の前の1試合。自分たちは自分たちと考えてやりたい」と森山。17日の北海(南北海道)戦も全力を注ぐ。(須藤佳裕)
甲子園の小さな大投手あらかると
★飯田長姫(長野)光沢毅=1メートル57 1954年春に出場し、初戦の2回戦で浪華商相手に4安打完封勝利。決勝でも小倉を完封し、長野県勢初の選抜優勝に導いた。4試合で3完封、わずか1失点。明大に進学し、社会人野球の三協精機で活躍した
★磐城(福島)田村隆寿=1メートル65 1971年夏に出場し、決勝まで3試合連続完封勝利。決勝・桐蔭学園戦で初失点し、0-1で準優勝。日大に進学し、社会人野球のヨークベニマルへ。母校などの監督を務めた
★秋田商(秋田)石川雅規=1メートル67 1997年夏に出場し、1回戦・浜田戦で和田(現ソフトバンク)との投げ合いを制して完投勝利。2回戦敗退も青学大に進学し、2002年に自由枠でヤクルト入り
森山 弦暉(もりやま・げんき)
投手。1998(平成10)年11月2日生まれ、17歳。宮崎県出身。小1から五十市タイガースで野球を始める。五十市中から日南学園に進み、2年春からベンチ入り。左投げ左打ち。1メートル60、69キロ。背番号「1」