セ・リーグはマジックを4とした広島が25年ぶりの優勝をほぼ確実にした。野球評論家の西本聖氏に広島の強さの理由を聞いた。(記録はすべて5日現在)
-4日のヤクルト-広島戦を神宮で見た
西本氏 あらためて広島の強さを感じた。野球って流れがある。2回裏1死一塁で西浦の打ったセンター前に抜けるかっていう打球を二塁手の菊池が横っ跳びで捕ってそのままグラブトスして4-6-3のゲッツー。思わず球場にどよめきが起こって独特のムードになった。守備ってすごいなと。遊撃手の田中もうまかった。強かったころの中日の「アライバ」(荒木-井端の二遊間)を見ているかのよう。流れを相手に渡さない守備。これが今年の広島の強さの一番の要因だと思う。
-チーム打率(2割7分5厘)本塁打(138本)盗塁(108個)防御率(3・31)などリーグトップの成績
西本氏 打率や防御率、ホームランは数字に出るもの。ただ菊池が見せたファインプレーは数字には出てこない。数字に表れない守備力が広島の快進撃に大きく貢献しているのではないか。
-投手力は
西本氏 飛び抜けて勝ち星の多い投手はいないが、ベテランの黒田がうまくまとめたと思う。マエケンが抜けて不安視されたりもしたが黒田がすごくいい影響力を持って引っ張ったと思う。
-打線について
西本氏 打率15位までに鈴木、菊池、新井、丸、田中の5人が入っている。さらに新井以外の4人全員が走れる。この4人でチーム108盗塁のうち73個を記録している。私の現役時代も広島は「走ってくる」というイメージがあったが、それ以上に今年は走る。とにかく思い切りがいい。投手のクセや捕手の配球、データを集めながらやっているんだと思う。それでないとあれだけ思い切り良くスタートは切れない。
-打者の思いきりの良さも目立った
西本氏 6月の交流戦(対オリックス)で鈴木が3試合連続で決勝ホームランを打った。「神ってる」って言われたけど、あれも思い切りが良かった。中途半端な打撃が少ないと感じる。やはりデータをしっかり取って配球や捕手のクセなども含めて狙い球をしぼっているんだろうね。そうじゃないとあれだけフルスイングできない。
-投手のまとめ役が黒田なら野手は新井の存在も大きかった
西本氏 黒田が200勝を達成、新井も2000安打を打った。肩の荷がおりてひと皮むけた感じがした。いいところでしっかり打っているし心の余裕というのかな人間的にも大きくなった。2人のベテランの存在は大きかった。
-緒方監督の采配について
西本氏 「こういう野球をやるんだ」という監督の思いが選手に浸透しているなと感じる。方針がぶれない。選手に納得させ、理解させている。信頼関係があれば放っておいても選手は動く。選手がベンチと野球をしていないのがいい。
-MVPを選ぶとしたら
西本氏 う~ん、難しいですね。20近く勝っている投手もいないし、打者でも飛び抜けた成績を残している選手もいない。やはり数字には出てこない部分。チーム全体の「守備力」で勝ち取った優勝と言える。