新時代到来を告げるロッテ 岡田3つの超美技
【野球】
2011年6月16日 掲載
育成ドラフトから入団して3年目、計算、研究し尽くされた外野守備でファンを魅了
●ゲームの流れ変え、逆転弾呼ぶ
「岡田は今や12球団一のセンターでしょう。かつての福本(豊・元阪急。1970年からダイヤモンドグラブ賞=現ゴールデングラブ賞=を12年連続受賞)を思い出させるような外野守備です。今年は飛ばないボールが導入されて、外野手は昨年よりも前に守っている。岡田は後方への打球に自信があるのだろう、他の外野手よりもさらに前に守っている。それでもフェンス際の打球に追い付き、ジャンピングキャッチする。右中間、左中間の深い打球にも追い付く。内野手との間に落ちる打球ももちろん捕る。最初の一歩が速く、打球の判断が的確だからこそでしょう」
こう言うのは現役時代、外野手として活躍した得津高宏氏(評論家)。
この日(15日)の巨人戦。岡田は二回裏1死一塁から阿部の大飛球を背走してジャンピングキャッチ。五回裏の2死一塁では坂本の左中間の当たりをランニングキャッチ。そして八回裏には小笠原の右中間を抜かんとする打球をダイビングキャッチ。後ろ、横の難しい打球をナイスキャッチするスーパープレー3連発だった。
いずれも走者がいた。捕球できなければ失点につながる場面だ。落下地点に最短距離で到達するのに、一瞬の判断の遅れも許されない状況だったが、岡田はドンピシャのタイミングで3つの打球をさばいてみせたのだ。
「岡田の3つのスーパープレーは非常に大きい。ああいうプレーがチームを盛り上げる」(西村監督)
「目の前でああいうプレーを見せられて、それが自分も逆転の2ランが打てたと思う」(九回2死から逆転2ランの伊志嶺)
●「ピンチで難しい打球、飛んで来い」
監督もナインも大絶賛だが、実は岡田にとってはきっちり計算したプレーではなかったか。というのも岡田は日頃から守備に強いこだわりを持っているからだ。先日も親しい関係者に、もっと打撃でもアピールしたらどうか、と言われこう答えたそうだ。
「打撃をしっかりといわれますが、自分としてはまずは守りでしっかりアピールしたい。監督が僕を使ってくれるのは守備を評価してくれているからです。だから実は守っているときには、難しい打球が飛んでこい、と思っているんです。そうすれば目立ってアピールできる。ピンチのときこそ、自分のところに飛んでこい、飛んでこいと思っているんです」
岡田にとっては打者が「抜けた!」と思った打球こそ「よし来た!」と胸躍る見せ場なのである。
もちろん、そのための練習、研究は日頃から人一倍する。例えば地元のQVCマリンでは風速5メートルと10メートルではスタートの一歩が異なる。同じ海(外野)の方向からの風でも、5メートルと10メートルではその風がバックネットに当たってハネ返ってくる間に打球の伸びに微妙な違いが生じるからだという。
すべての球場で、守備位置からフェンスまでの歩幅を計測。フェンスが低い球場では打球を追って、どこでジャンプしてよじ登るかも計算済みだそうだ。
●浦安のマンションで単身住まい
岡田は08年の育成ドラフト6位で全足利クラブからロッテ入り。昨年、中日との日本シリーズで決勝打を放ち、広く名前を知られるようになった。
入団前に結婚。子供が2人いるが、岡田は浦安のマンションでひとり暮らし。岡田は一緒に住みたいというが、足利市役所に務める年上の夫人から「まだまだ今の給料(1000万円)では安心できません。市役所も辞められません。もっと頑張って」とハッパをかけられているという。
岡田もかつて日刊ゲンダイ本紙の取材にこう答えている。
「給料は上がっても(440万から1000万円)、奥さんにプレゼントしたり、子供になにか買ったりしません。ヒーローになったらもらえるロッテのぬいぐるみをあげてます。子供の将来におカネもかかるし、そういうことのために奥さんが毎月、貯金して管理しています。僕はお小遣い制。楽しみ? 入浴剤が好きですね。でも、買ったりしませんよ。マリン球場の選手用の風呂に日替わりで入浴剤が入っているので、それが楽しみ。試合後、リラックスできていい気持ちです」
今年からプロ野球は統一球が導入され、飛ばないボールが使用されている。ボールがよく飛び、本塁打量産球場といわれる東京ドームでさえ、巨人の本塁打は15試合で7本と、前年比で3分の1以下に減っている。
それにつれて球界のヒーロー像も変わりつつある。以前のようなホームランをガンガン連発する打者ではなく、広い球場、飛ばないボールで見せ場が増え、その守備がゲームの流れ、チームの勝敗を左右する外野手の名手こそ新時代を迎えた球界のヒーローだろう。そして今、ロッテの岡田はその代名詞になりつつある。
「岡田は今や12球団一のセンターでしょう。かつての福本(豊・元阪急。1970年からダイヤモンドグラブ賞=現ゴールデングラブ賞=を12年連続受賞)を思い出させるような外野守備です。今年は飛ばないボールが導入されて、外野手は昨年よりも前に守っている。岡田は後方への打球に自信があるのだろう、他の外野手よりもさらに前に守っている。それでもフェンス際の打球に追い付き、ジャンピングキャッチする。右中間、左中間の深い打球にも追い付く。内野手との間に落ちる打球ももちろん捕る。最初の一歩が速く、打球の判断が的確だからこそでしょう」
こう言うのは現役時代、外野手として活躍した得津高宏氏(評論家)。
この日(15日)の巨人戦。岡田は二回裏1死一塁から阿部の大飛球を背走してジャンピングキャッチ。五回裏の2死一塁では坂本の左中間の当たりをランニングキャッチ。そして八回裏には小笠原の右中間を抜かんとする打球をダイビングキャッチ。後ろ、横の難しい打球をナイスキャッチするスーパープレー3連発だった。
いずれも走者がいた。捕球できなければ失点につながる場面だ。落下地点に最短距離で到達するのに、一瞬の判断の遅れも許されない状況だったが、岡田はドンピシャのタイミングで3つの打球をさばいてみせたのだ。
「岡田の3つのスーパープレーは非常に大きい。ああいうプレーがチームを盛り上げる」(西村監督)
「目の前でああいうプレーを見せられて、それが自分も逆転の2ランが打てたと思う」(九回2死から逆転2ランの伊志嶺)
●「ピンチで難しい打球、飛んで来い」
監督もナインも大絶賛だが、実は岡田にとってはきっちり計算したプレーではなかったか。というのも岡田は日頃から守備に強いこだわりを持っているからだ。先日も親しい関係者に、もっと打撃でもアピールしたらどうか、と言われこう答えたそうだ。
「打撃をしっかりといわれますが、自分としてはまずは守りでしっかりアピールしたい。監督が僕を使ってくれるのは守備を評価してくれているからです。だから実は守っているときには、難しい打球が飛んでこい、と思っているんです。そうすれば目立ってアピールできる。ピンチのときこそ、自分のところに飛んでこい、飛んでこいと思っているんです」
岡田にとっては打者が「抜けた!」と思った打球こそ「よし来た!」と胸躍る見せ場なのである。
もちろん、そのための練習、研究は日頃から人一倍する。例えば地元のQVCマリンでは風速5メートルと10メートルではスタートの一歩が異なる。同じ海(外野)の方向からの風でも、5メートルと10メートルではその風がバックネットに当たってハネ返ってくる間に打球の伸びに微妙な違いが生じるからだという。
すべての球場で、守備位置からフェンスまでの歩幅を計測。フェンスが低い球場では打球を追って、どこでジャンプしてよじ登るかも計算済みだそうだ。
●浦安のマンションで単身住まい
岡田は08年の育成ドラフト6位で全足利クラブからロッテ入り。昨年、中日との日本シリーズで決勝打を放ち、広く名前を知られるようになった。
入団前に結婚。子供が2人いるが、岡田は浦安のマンションでひとり暮らし。岡田は一緒に住みたいというが、足利市役所に務める年上の夫人から「まだまだ今の給料(1000万円)では安心できません。市役所も辞められません。もっと頑張って」とハッパをかけられているという。
岡田もかつて日刊ゲンダイ本紙の取材にこう答えている。
「給料は上がっても(440万から1000万円)、奥さんにプレゼントしたり、子供になにか買ったりしません。ヒーローになったらもらえるロッテのぬいぐるみをあげてます。子供の将来におカネもかかるし、そういうことのために奥さんが毎月、貯金して管理しています。僕はお小遣い制。楽しみ? 入浴剤が好きですね。でも、買ったりしませんよ。マリン球場の選手用の風呂に日替わりで入浴剤が入っているので、それが楽しみ。試合後、リラックスできていい気持ちです」
今年からプロ野球は統一球が導入され、飛ばないボールが使用されている。ボールがよく飛び、本塁打量産球場といわれる東京ドームでさえ、巨人の本塁打は15試合で7本と、前年比で3分の1以下に減っている。
それにつれて球界のヒーロー像も変わりつつある。以前のようなホームランをガンガン連発する打者ではなく、広い球場、飛ばないボールで見せ場が増え、その守備がゲームの流れ、チームの勝敗を左右する外野手の名手こそ新時代を迎えた球界のヒーローだろう。そして今、ロッテの岡田はその代名詞になりつつある。