要するに、これに尽きる。「ボール球に手を出さない」から、相手投手が苦しくなり、四球を連発することになる。それが7回の奇跡的な8点になったのだ。
もう一つ、投手を苦しめたことがある。
それは、常に満塁のままで攻撃し続けたことだ。ヒットで二塁から本塁突入が可能なタイミングでも無理をせず、三塁に止まって満塁のままにした。当然、投手はこれほど苦しいことはない。押し出し四死球という屈辱の可能性が高いのだから、変化球が投げにくい。打者はそれを読んでいるから、直球の甘い球だけを待って打てばいい。結果、ヒットも出やすいわけだ。実際そうなった。
こうした「満塁の投手心理」を利用した戦法は、これから甲子園の定番化するかもしれない。
ただし、嘉手納自体は強いチームではないから、二戦目(大会内の呼び方では三回戦)でボロ負けする可能性は高いと思う。
まあ、ボール球に手を出さないことを徹底するだけでも好勝負はできるかもしれない。
投手としては、先発の仲地より、二番手に投げた仲井間の方が面白いと思う。クレバーな感じの投手だ。打者としての仲地はなかなかいいよ、というのは、前に書いたとおり。
嘉手納、「名参謀」の見立て覆す逆転勝ち 応援が後押し
朝日新聞デジタル 8月11日(木)21時28分配信
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(11日、高校野球 嘉手納10―3前橋育英)
「ピュイ、ピュイ」という指笛の音とともに甲子園が揺れた。初出場の嘉手納(沖縄)が沖縄ゆかりの関西の人たちも含めた大応援の後押しに乗って、前橋育英(群馬)に10―3で逆転勝ち。「名参謀」の見立ても覆してみせた。
【写真】大歓声にわく嘉手納の一塁側アルプス席=11日午後、兵庫県西宮市の阪神甲子園球場、西村圭史撮影
2点差の七回、一塁側アルプス席では「ハイサイおじさん」が鳴りやまなかった。得点機になると流れる沖縄勢の応援の定番曲。9長短打の猛攻で8点を挙げた大逆転劇を後押しした。
演奏したのは市尼崎(兵庫)の吹奏楽部員だ。総監督が沖縄出身。指笛担当の実重(さねしげ)誠君(2年)は、はっきり音が鳴るまで1週間かけて練習した。「球場全体を包むようで鳥肌が立った」と嘉手納の主将の大石哲汰君(3年)も驚いた。
今夏は市尼崎も甲子園に出場したが、9日に敗退した。その野球部の3年生15人も応援に駆けつけた。主将の前田大輝(ひろき)君(3年)は「自分たちの試合にも嘉手納の選手が応援に来てくれたお礼です」。嘉手納の野球部員は地元で新人戦に臨んでいるため、スタンドにはマネジャーを含めて5人だけだった。控え部員で応援団長の幸地隆輝(こうちりゅうき)君(3年)は「たくさん応援に来てくれてびっくりした。本当に感謝しかない」。
嘉手納は今月に入り、コーチや部長として横浜(神奈川)を春夏3回の優勝に導き、「名参謀」と呼ばれた小倉清一郎さん(72)を臨時コーチに迎え、指導を受けている。練習ではミスが目立ち、「10回やって1回勝てるかどうか」と評されたが、助言を受け続けた。
主将の大石君は、その成果で「高めの球を見極められた」と話した。群馬大会の映像を見て、前橋育英の対戦相手が高めの球に手を出している点に注目した。
この日は3失策とミスも出たが、それ以上に集中打が光った。大蔵宗元監督は「乗れば強い。点数が入ってから、いつもの彼らの踊るような姿だった」。3回戦へ一番乗りを果たした。(西村圭史、伊藤繭莉)
朝日新聞社