だいたい予想していたとおりの内容だが、プロが言明している重みがある。
私の考えでは、打者の予測と下手投げ投手の軌道の違いは、通常の投手の場合は基本的に上から下に落ちるだけだが、下手投げ投手の場合は、一度上がってから落ちる、その上がった後、どこで落ち始めるか、どこまで落ちるかの判断が難しいということで、しかも右投手の場合、右打者はかなり首を回さないと球の軌道が見えないし、球が自分に向かって正面から浮き上がってくる感じもあるのではないか。つまり、上下の動きの判断が、左打者より難しい。
上下動の判断だけでも難しい上に、変化球のいい投手だと左右の動きも加わるから打者にとっては、慣れて本能的に判断できるまで時間がかかるわけだろう。
特に根拠があるわけではないが、フォームのしっかりした打者より、フォームがぐちゃぐちゃで勘で打つ打者のほうが対応能力はありそうだ。フォームの固定した打者がなまじ対応しようとすると、自分のフォームが崩れる原因になる。巨人の長野が阪神の青柳(下手ではなくサイドスローだが)が相手の時には最初から打席の一番後ろに下がり、まったく打つ気も無かったのもそれだと思う。まあ、ぶつけられるのが嫌だというのが一番の理由だろうが。
落合なども、横浜の盛田という死球の多い投手を嫌がり、盛田が出てくるのが分かると試合途中からベンチに下がったという話がある。打者というのは一度の死球で野球生命が終わりになることもあるのだから、ある意味当然の自己防衛だろう。つまり、野球選手というのはチームの一員であると同時に個人営業主であるわけだから、すべての試合に選手生命を賭けるわけにはいかないということだ。
国際試合でアンダースローが通用する理由/谷繁元信
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- 日本対プエルトリコ 2回表プエルトリコ2死、バレンティンに投げ込む高橋礼(撮影・山崎安昭)
<プレミア12:日本4-0プエルトリコ>◇1次ラウンドB組◇6日◇台湾・桃園
侍ジャパン先発の高橋礼投手(24)が6回1安打無失点と好投。スーパーラウンド進出に貢献した。
国際試合でアンダースローが通用するのはなぜか。もちろん「下から」の独特の軌道が最大の要因。打者はリリースポイントから「ここに来る」と軌道予測して振りにいく。その点で下手投げは見た数が絶対的に少ないため、軌道も自分の感覚の中に入りづらい。高橋礼はこの優位性に加え、130キロ台後半の直球が「これしか出てないの?」という印象を与える。これは球持ちの良さが生む。より捕手に近いポイントでリリースするため体重が乗り、ベース付近でも球速が落ちないように見える。
この真っすぐに差し込まれるから打者はより前で捉えようとし、ここでスライダー、シンカーが生きる。直球での高低、そして変化球での左右と奥行きで揺さぶる。象徴的だったのが3番オルティスとの対戦。第1打席は1、2球目に直球で高低をつけ、内へのシンカーを挟んで、外低めの真っすぐで遊ゴロ。第2打席は低め→高めの直球2球で追い込み、最後も高め真っすぐで空を切らせた。
もう1つ、下手投げが抑えられる肝は対応するまでの打席数にもある。06年WBC。ともに出場したアンダースロー渡辺俊介の登板時の打者反応を振り返ると
・1巡目 タイミングに合わせづらそうで、ボールの軌道にも対応できない。
・2巡目 タイミングは合ってきて「あっヤバイ」と感じる場面はあるが、軌道にアジャストできない。
・3巡目 タイミング、軌道とも合ってきて、捉えられたような凡打が増える。
高橋礼も3巡目に入った6回は、この試合イニング最多の22球を要した。この点を考えれば6回での降板は妥当だったと言えるが、スーパーラウンドではブルペン待機もなしではない。先発の枚数、本人のコンディションもあるが、相手が一番嫌がる投手が毎日スタンバイする。先発とリリーフ両面で切り札となり得る。(日刊スポーツ評論家)
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