日本ハムになかなか面白いルーキーが入ってきた。ドラフト7位の郡拓也捕手(18)=帝京高=だ。遠投120メートルの強肩に加えて、50メートル走は6・0秒という俊足の持ち主である。
幼少時代から、俊敏性は飛び抜けていた。本人談では、保育園で友達と毎日のようにやっていた「鬼ごっこ」では、捕まった記憶がない。つまり鬼になったことがないという。「小さい頃から素早い方でした」と笑う。
帝京高3年時、夏の東東京大会3回戦の正則高戦では、珍しいサイクルスチールまで決めた。左前打で出塁し、二盗、三盗に続き、「ノーアウト三塁で、ホームスチールもできるかなと思っていたんです。ベンチからは『走るな』のサインも出ていなかったし。そして、バッター2人が倒れて、2アウトになったから、何としても点がほしかった」と二死三塁からの初球に本盗を成功。あまりのスピードに捕手はタッチもできなかった。
「盗塁王を目指しています」と郡は本気で言い切る。獲得に尽力した日本ハム・岩舘学スカウトは「何よりも郡のいいところは積極性。打撃も走塁にもすごく意欲がある。守備も二塁への送球はだいたい2秒は切る」と野球センスの高さを絶賛する。捕手は高校から始めたが、すでに二塁送球はプロレベルの1秒台に達している。
「高校のときには初球か2球目には走れていたけど、プロではそんなに簡単じゃない。もっともっと研究しながらやっていきたい。ファイターズだったら、西川さんにいろいろ話を聞いてみたい」と意欲を燃やす。元ヤクルト・飯田や元阪神・関川ら捕手からスタートした俊足の選手たちはいるが、いずれも外野などにコンバートされた。正捕手として盗塁王に輝いた選手は、日本プロ野球はおろかメジャーリーグにもいない。日本でのシーズン最多は1952年に大洋・荒川昇治が記録した「32盗塁」だ。
「自分の持ち味は足と肩。体を大きくしつつ、足ももっと速くしたい。打って、走って、守れる捕手になりたい。盗塁王を目指しています」と郡。大谷が投打で成功したように、日本ハムから新たな歴史を作る選手が誕生するかもしれない。(桜木理)