私など、レコードの針とレコードの接触による雑音、あるいはレコードの傷による雑音も、それすらひとつの「味」として味わうべきではないか、と思っている。人間でも、たとえばサッチモのだみ声は、ひとつの味であり、美声だけが「いい声」なのではない。
茶やワインの渋さは、美味のひとつなのである。
米国でレコード人気、CDの販売枚数上回る 35年ぶり
【ニューヨーク=弓真名】米国でアナログレコードの人気が沸騰している。2022年の販売枚数は4100万枚と1987年以来初めてCDを上回った。ストリーミングサービスが主流となるなかで、懐かしさや雰囲気を追求する若者のあいだでアナログとデジタルを組み合わせた音楽鑑賞のスタイルが確立されつつある。
全米レコード協会(RIAA)が9日に公表した資料によると、22年のレコードの販売枚数は前年比3%増の4100万枚と、CDの3300万枚を上回った。レコードやCDなどを含む「フィジカルフォーマット部門」の売上高は約17億ドル(約2300億円)で、前年比4%増だった。なかでも部門売上高全体の7割を占めたレコードの売上高は12億ドルと17%増えた。
アナログレコードは、70年代に音楽メディアとして販売数の過半を占めていたが、カセットテープやCDの台頭によって長年低迷していた。2000年代後半からじわじわと人気を取り戻し、新型コロナウイルスの感染拡大に伴って家にいる時間が増えた21年に急伸した。
レコード需要が復活している背景には、若者を中心とした人気が高まっていることもある。米調査会社ルミネートによると、1990年代半ば以降に生まれた「Z世代」は平均的な個人と比べてレコードを購入する傾向が強いという。
米ニューヨーク市在住のサイモンさん(24)は「CDは商業的で安っぽい印象だが、レコードは懐かしさやぜいたくな感じがする」と話す。普段は便利なストリーミングサービスを使いつつ、週に数回は「外食や旅行をするような気持ち」でレコードの音楽を楽しむという。
RIAAによると、スウェーデンの音楽配信大手スポティファイなどの有料ストリーミングサービスによる収入が、米音楽業界における売上高の8割超を支えている。そのなかでレコードの売り上げも伸び続けており、22年には16年連続の増収となった。配信サービスの普及で各個人が音楽をより手軽に楽しめるようになったいま、アナログとデジタルを掛け合わせた新しい鑑賞の形が広がっている。
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