大相撲九州場所で新入幕ながら10連勝している幕内最軽量の石浦(宮城野部屋)。そんな石浦を突き動かす、夢があります。中学時代から一緒に稽古を積んできたライバルであり友と、横綱土俵入りで露払い・太刀持ちを務めることです。その力士とは……バセドウ病と闘いながら、十両に返り咲いた同部屋の力士・山口です。
【画像】一度、挫折したと男とは思えない…最軽量の関取、石浦の気迫
破竹の十連勝
新入幕の石浦は身長173センチ、体重114キロ、幕内では最軽量の力士です。持ち味は、素早い立ち合いと思い切りの良い相撲。23日の11日目に、元関脇の実力者・妙義龍にも勝ち、2日目から破竹の10連勝。
11日目を終えて、横綱鶴竜らと優勝争いする活躍に、観客からの期待は高まっています。
大活躍の石浦は、この九州場所から横綱白鵬の露払いを務めています。
横綱土俵入りの露払いと太刀持ちは、同じ部屋か一門の幕内力士が務めるのが慣例になっています。
十両に返り咲いた山口が幕内に入り、石浦が幕内で相撲を取り続ければ、夢は現実になります。
石浦と山口、中学から大学まで切磋琢磨
2人は鳥取市立西中学校、鳥取城北高校、日大と同じ道を歩んできました。地元出身の石浦に対し、東京から鳥取に「留学」してきた山口は、高校横綱などアマ19冠に輝いた大器。中学1年の時点で身長170センチ、体重100キロもありました。一方、中学1年の時点で石浦は150センチ、50キロ。当時は重戦車のような山口の立ち合いに圧倒され、まわしにすら触れられませんでした。その後、高校、大学でも歯が立たなかった石浦ですが、山口との稽古で成長を感じていました。
石浦は「山口より強いやつはいない。大きい力士の懐に入るスタイルの基本もできあがった」と語ります。
日大卒業後、相撲をあきらめかけオーストラリアへ語学留学したこともある石浦。土俵に再挑戦したのも、山口の角界での活躍に刺激を受けたからでした。そして、同じ宮城野部屋に入門しました。
けが、バセドウ病、苦しむライバル山口
山口は入門後は幕下15枚目格付け出しから、所要3場所で新十両に昇進、幕内も1場所務めました。しかし、大きな挫折を味わいます。2年前の夏に十両から陥落。その後、腰のけがの手術をしたほか、バセドウ病になっていたことが発覚したのです。
本来の力を全く出せず、一時は三段目まで番付を下げました。地道に復活を期し、先場所では幕下優勝。2年ぶりの十両に返り咲きました。
「どん底」を見た山口の姿に心を痛めながらも、その復活を信じていたのが石浦でした。
夢まもなく「あとは自分次第」
先場所、山口が幕下優勝し十両復帰を濃厚にした時、石浦は山口との「露払い・太刀持ち」という夢について「あとは自分次第」と語っていました。――山口の幕下優勝についての感想は?
「驚くことはないです。(苦しんでいる山口のことを)あいつはもう終わったから、おまえが頑張れという人もいた。でも信じていた」
「(山口が苦しんでいる時は)何も声はかけなかった」
「自分の言いたいことも山口はわかっている。山口がどれだけ悔しいかわかっていたから」
――夢だった2人での露払いと太刀持ちが近づいています
「山口は大丈夫なんで、あとは自分次第じゃないですか」
小兵ながら気迫あふれる相撲で注目されている石浦。闘志を胸に秘めながら、夢に向かって、一歩ずつ、進んでいます。