ゲーム・スポーツなどについての感想と妄想の作文集です
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「副島隆彦の学問道場」を久しぶりに覗いてみたら、思いがけずいい記事があったので、備忘と拡散のため転載しておく。
この記事は副島の弟子である「アルルの男ヒロシ」が書いたものだが、お師匠の副島が3.11の後発狂して「福島は安全だ!」と喚き散らし、社会的評価がどん底に落ちた後、弟子のヒロシはけなげに堅実着実な政治研究と報告をし、今では師匠を上回る書き手になったようだ。
以下の記事は橋下徹のバックにいる存在を洗いだした労作であり、これを見れば橋下がどういう存在かが明らかに見えてくる。官僚・公務員批判を楯に橋下が権力を取った後に来るのは完全な財界支配の政治である。
(以下引用)
この記事は副島の弟子である「アルルの男ヒロシ」が書いたものだが、お師匠の副島が3.11の後発狂して「福島は安全だ!」と喚き散らし、社会的評価がどん底に落ちた後、弟子のヒロシはけなげに堅実着実な政治研究と報告をし、今では師匠を上回る書き手になったようだ。
以下の記事は橋下徹のバックにいる存在を洗いだした労作であり、これを見れば橋下がどういう存在かが明らかに見えてくる。官僚・公務員批判を楯に橋下が権力を取った後に来るのは完全な財界支配の政治である。
(以下引用)
「1296」橋下首相を誕生させようと目論む、関西財界ネットワークの正体とは 2012年4月3日
アルルの男・ヒロシ(中田安彦)です。今日は2012年4月3日です。
今日は、大阪市長・橋下徹(はしもととおる)をめぐる財界人ネットワークについて簡単に報告しておこうと思います。
橋下徹という人を私はほとんど去年まで注目して来なかった。しかし、重要なのは、橋下徹が、大阪府知事に選ばれた後の2009年に彼が世界経済フォーラム(ダボス会議)のヤング・グローバル・リーダー(Young Global Leaders)の1人に選ばれているということです。橋下という人は、2008年の2月に大阪府知事になるまでは、弁護士とタレントに二足をわらじを履いた文化人に過ぎなかった。それが、大阪府知事になるや、翌年にはダボス会議のグローバル・ヤングリーダーに選ばれている。これはなにかあると思って調べたわけです。
ダボス会議の理事の一人はあの竹中平蔵が務めている。それから、竹中は人材派遣会社のパソナの役員であり、今は取締役会議長(会長)です。竹中が会長になるまえのことですが、08年1月、つまり府知事選の直前に橋下を支える財界人として、パソナ社長の南部靖之(なんぶやすゆき)が、文化人の堺屋太一や、JR西日本の井出正敬らと一緒に橋下を支援する「勝手連」を作っている。
パソナ社長の南部靖之と会長の竹中平蔵・元総務大臣
橋下徹という人は、大阪府知事を3年9ヶ月やって、今度は自らが掲げる大阪都構想を実現しようと、府知事に自分の側近の松井一郎府議会議長を立てて、今度は自分が大阪市長に立候補して当選している。府知事としては、大阪府財政非常事態宣言を出し、コストカットを行った他、治安強化や教育改革と、彼が尊敬すると言われる石原慎太郎都知事の初期の都政改革とよく似た改革路線を打ち出しているが、今度は2000人の塾生を集めて、「維新政治塾」という勉強会を初めて、国会議員候補を育成するという。メディアによっては橋下は首相を狙っていると公然と書くところも出てきた。
私は、この橋下徹が急速に注目を集めていく様子を見るにつけ、また、最近になって浮上してきた、橋下を支える財界人ネットワークの片鱗を垣間見るにつけ、この人物とアメリカ大統領である、バラク・オバマとの共通性を感じるようになった。オバマも奇しくも橋下と同じ弁護士出身である。
オバマという政治家は、いわばあまり実績のない地方政治家がマスコミに持ち上げられて、上院議員のわずか一期目の途中であるにもかかわらず、いきなり大統領になっていったという事例であるわけだ。
オバマ大統領も失敗した
だが、その成果はやはり惨憺たるものであった。他に有力な候補者もいないので、民主党は今年の大統領選挙では仕方なくオバマを現職ということで推すようだが、もともとオバマには国政経験がなく、やっていることといえば、スピーチライターが書いた演説の原稿をいかに効果的に読み上げるか、ということだけとすら皮肉られている。
橋下市長だが、国政に意欲を見せている。
(貼り付け開始)
衆院選擁立「300とか200とか」橋下氏、報道番組で言及
産経新聞(2012年3月4日)
大阪維新の会代表の橋下徹大阪市長は4日、フジテレビの「新報道2001」に出演し、次期衆院選で擁立する維新の候補者数について「300とか200とか。ただ、僕らは政党交付金を受けていませんから、全部自己資金で出てもらう」と述べた。
橋下氏は古川元久国家戦略担当相、自民党の林芳正政調会長代理らと議論。維新の国政進出について「国会議員が僕らの意思をくんでいただければ、国政に足をかける必要はない。そんなのは絶対やっちゃいけない」と述べる一方、「今の国政の状況では、国民はついてこない」と語った。
生活保護問題に関する議論では、橋下氏が大阪市で生活保護受給率が高い西成区で税減免などの特区構想を掲げていることに関し、林氏が、自民党で生活保護問題のプロジェクトチームを立ち上げたことにふれ、「これとこれだけ(大阪市の)権限でやらせてほしいと(要望を)いただければ、すぐ法案にまとめられるよう厚生労働省と議論する」と協力を約束した。
(張り付け終わり)
このように、橋下は自ら代表を務める政治団体である「大阪維新の会」を使って近畿一体に比例区の候補を中心に200人近くの候補者を立てると言われているが、既成政党である自民党・民主党が官僚機構に骨抜きにされて、野田佳彦首相を始めとする現政権の執行部がこの景気情勢を考えずひたすら増税路線に突き進めば、近畿ではある程度議席を取るかもしれない。
橋下は、「国家の自立と個人の自立を確立するために、国家の統治機構の大改造を行う」などとまるで小沢一郎の『日本改造計画』の中にあるような事を演説でよく言う。小沢一郎自身、朝日新聞のインタビューなどでは、「『自立する個人、自立する地域、自立する国家』という主張は全く同感。我が意を得たりだ」と語っていることもあり、一見、この二人には共通点があるように見える。ただ、橋下のこの主張がいつ頃からのものかはわからないし、小沢の主張をうまく取り入れただけという可能性もある。
小沢一郎
また一方で小沢は、橋下については、「彼は小泉純一郎的な大衆を引き付ける力と、小泉氏にない理念的なものを持っている」とも同じインタビューで評しており、橋下のパフォーマンスぶりに小泉純一郎元首相と同じものも感じているようだ。ただ、この二人は小沢が岩手の政治家であり、橋下が大阪という都市の政治家であることからもわかるように、政治目的とするところはだいぶ違うように私には思える。ただ、可能性は少ないにしても、消費税と政治制度改革というテーマで、二人が一時的に手を組むということは考えられる。
小泉旋風を一時的巻き起こした小泉元首相
アメリカの大統領選挙でも候補者の政策が似通ってしまって、これは借用・盗用ではないかと揶揄されることはよくある。橋下の主張が小沢や他の政治家から学んだものであるにせよ、そうではなく元からの主張であるにせよ、いずれにせよ、小沢と橋下が、ともに官僚主導政治に対する国民の反感という時代性をうまく捉えていることは間違いない。
橋下はまるで全方位外交ともいうべき形で、自民、民主、それから小沢一郎から石原慎太郎まで、異なるタイプの政治家に会いに行っている。これについても後で述べる。しかし、一番、これから影響を受けそうなのは、渡辺喜美の「みんなの党」だろう。
みんなの党の渡邉喜美と橋下徹
一方で、敵に対しては容赦がない。自らを批判する左翼系の知識人たちに対しては、容赦なく罵倒にちかい批判を行う。山口二郎や香山リカ、内田樹といった知識人たちは、橋下に批判された知識人たちの代表格だ。彼ら自身の橋下に対する批判も、あまり頭のいいものとは思えないが、要するに橋下は自分が上回っていると思える相手には強くに出る一方で、そうではなく、今後連携が可能と見る政治家たちにはできるだけ下手に出る。
平松邦夫前大阪市長と評論家の内田樹(右)
私は、4年前に『アメリカを支配するパワーエリート解体新書』(PHP研究所)という本の中で、オバマという全く無名の政治家がいかにして短期間で大統領にまで成り上がっていったのかということの秘密について、それをオバマの周辺の支援人脈を手がかりに、オバマがそれらの支援する人脈(パワーエリートネットワーク)による「作品、プロジェクト」であると論じた。大統領というのは国民皆の代表というのは実は「幻想」であり、その大統領としての人事は大統領を選挙で支援した、財界人たちの周辺の利害を反映する形で分配される。これがアメリカの大統領選挙の政治であり、猟官政治(りょうかんせいじ)というものである。
今後、日本が官僚主導の政治から脱していく場合、否応なしに、この猟官政治というかアメリカ型の「政治任用制」(ポリティカル・アポインティー)の採用という形で、財界の影響が強まる政治体制になることも考えられる。あるいは政財官のトライアングルが、これまでの単なる「天下り」方式ではなく、アメリカ型の「回転ドア」方式で、政府の一定位以上の高官が民間から登用されていく可能性もある。そこで、私はこの橋下徹という政治家の周辺を見ていくことで、オバマ大統領を生み出したような、財界のネットワークがあるのではないかと思ったのである。
オバマ大統領を誕生させるにあたって重要であったのは、オバマの地元シカゴにおける財界人による「シカゴ・ハイドパーク人脈」であり、地元の電力会社の名士の息子である元左翼過激派のウィリアム・エアーズとのつながりであった。シカゴの名士の中に中央につながる人物がおり、このネットワークをきっかけにオバマ大統領は地方の州選出の上院議員から、合衆国上院議員へ、そしてやがて本命であったヒラリー・クリントンを打ち破って、大統領の座を射止めた。
もう一つ、オバマにとって重要であったのは、民間の重鎮からなる政策ブレーンの存在であった。アメリカの様々なシンクタンクや研究所から前の民主党政権であったクリントン政権時代に活躍した人物たちが、オバマ政権入りしている。
このように、「地元人脈」「ブレーン」という観点で私はオバマ大統領の誕生について、前掲の『アメリカを支配するパワーエリート解体新書』の中で論じてきたわけだが、それ以上にオバマがアメリカだけではなく世界に股をかけたエリート集団である「ビルダーバーグ会議」の主要メンバーによっても注目されてきたことを、そのメンバーであり、シカゴ財界とつながりを持つ、ヴァーノン・ジョーダンという弁護士・企業家を例に出して解説もした。
そこでこのような要素を橋下徹の周辺に見出せないかと思い調べた。すでに述べたとおり、橋下自身が、09年のダボス会議でのグローバル・ヤングエリートに選ばれており、ダボスといえば日本の総代表(ダボスのボードメンバーの唯一の日本人)が竹中平蔵である。竹中の意向がダボスに参加するメンバーの選定に大きく働いているだろう。また、その竹中と関わりが深い、パソナの南部靖之が「大阪府の就労支援サービス」などの外注を受けていた関係で、大阪府とつながってもいることもわかっている。
官僚主導政治を打破するということは一方で、こういう「憂鬱」な問題も抱える。すなわち財界が政治を支配するという構図である。興味深いのは、橋下が既成の財界人であるいわゆる経団連の重厚長大型の代表格である、原子力発電を行う関西電力に関しては、「脱原発」の立場を鮮明にしている点だ。これは一種の大衆迎合と見る向きと、別に「発送電分離」による電力業界への新規参入を目論む財界人らとの共同関係があるという見方もありうる。
それでは、以下では順番に「地元人脈」「ブレーン集団」「政界人脈」の順番で橋下徹がどのような財界人らの「プロジェクト」として打ち出されているのかを見ていく。(なお、本論に当たっては、ブログ「書に触れ、街に出よう」の中の「選挙で選ばれぬ新自由主義者によって売りに出される大阪:大前研一と竹中平蔵の影」の中のリストも参考にしました)
<「地元人脈」―堺屋塾の財界人が支援の会を結成>
先日の日経新聞に編集委員・堀田昇吾による「橋下改革を支える財界人たち」という記事があった。これには、橋下の「大阪維新の会」の応援団として、企業経営者らで組織する、「経済人・大阪維新の会」(2010年4月結成)があるとしている。中心になっているのは、関西経済同友会や大阪青年会議所、作家の堺屋太一が主宰する「堺屋塾」に集う財界人たちだという。
この「経済人・大阪維新の会」の代表は、洗剤会社「サラヤ」」社長の更家悠介(さらやゆうすけ)だという。この日経の記事には次のようにある。
(引用開始)
ちょうど10年前の02年2月。関西経済同友会の地域主権委員会は府市統合を求める提言をまとめ、公表した。盛り込まれたのは広域行政の一本化、二重行政の弊害打破、新しい行政スタイルの構築など大阪都構想につながる内容である。
更家氏はその直後に同委に入り、大阪再生のためには大胆な地方分権や行財政改革が必要という認識を強めていく。「地域に権限と財源を移し、地域が独自に競争戦略を立て、発展のビジョンを作っていく必要があると考えるようになった」
関西経済同友会はその後も道州制への移行、市営交通の民営化、市の水道事業の統合、教育改革、地方議会改革など府市の運営に関わる提言を相次いで公表。更家氏は04年に同友会常任幹事になり、地域主権改革や教育改革、道州制・地方議会改革に関する委員会では委員長に就任、数々の提言づくりに関わった。
維新の政策にはこれらの提言に沿ったものが多い。「我々の提言の実現を目指す動きが出てきたと感じた。この機会を逃したら当面改革は望めないだろう。だったら応援しようと考えた」と更家氏。過去の延長にあるような小改革ではなく、イノベーションと言えるような大変革が必要――。そんな認識が広まっていったことが、経済人の支援の下地になっている。
http://www.nikkei.com/news/special/side/article/g=96958A9C93819A91E3E4E2E0888DE3EBE2E0E0E2E3E0E2E2E2E2E2E2;q=9694E2E4E2E0E0E2E3E0E4E0E7E3;p=9694E2E7E2EAE0E2E3E3E1E1E3E5;o=9694E2E7E2EAE0E2E3E3E1E1E3E4
(引用終わり)
この記事を読むとわかるのは、橋下の掲げていた「大阪都」構想というのは、基本的にはこの関西経済同友会の提言通りのものになっていることがわかる。関西には、関西経済同友会の他に、関西経済連合会(関経連)という組織もある。いずれも関西電力、ダイキン、パナソニックといった関西の大企業を中心に代表幹事・常任幹事や会長・副会長の人事が組まれている組織である。
経営者の行政改革の狙いは、一言で言えば、民営化推進と労組の排除というこの二点に尽きる。この2つによって、経営者たちにとっての活動の場所が広がるからである。そのためには、政治家に対する影響力を行使しなければならない。ただ、日経の記事によると、人脈では同友会の他、大阪青年会議所や堺屋太一の主宰する「開催再活性研究会」(別名:堺屋塾)のメンバーが多いという。また、橋下は今年になって、オリックスの宮内義彦やソフトバンクの孫正義とも会合を持っている。
孫正義・ソフトバンク社長
橋下ブレーンの堺屋太一(右)
この1月下旬の会合について報じた産経新聞は、「孫に対しては、原発依存度を下げるため市が筆頭株主の関西電力に『発送電分離』に向けた株主提案権行使をする際の協力も求めた」と伝えており、要するに、孫正義やあるいはオリックスも含めて旧来型の火力・原子力以外の発電事業に参加する場合に、発送電分離を行うことで、従来からあった巨大電力会社の独占構造を打破しておこうという狙いが有りそうである。これがどこまでうまくいくかはわからないが、非重厚長大型のソフトバンクやオリックスとのつながりは注意していかなければならない。
また堺屋太一は大阪万博をかつてプロデュースした関係で橋下とのつながりを持っていただけではなく、自分が主宰する勉強会の財界人という実質的なネットワークをも作りつつあるようだ。その「経済人・大阪維新の会」の役員だが、すでに述べた更家以外には、三起商行株式会社(ミキハウス)の木村皓一(堺屋塾の会長)であるほか、上島珈琲(UCC)の社長の上島一泰の名前もある。
また、「経済人・大阪維新の会」のメンバーにはなってはいないが、堺屋塾の役員としては、以下のような面々がいる。(http://sakaiya-juku.com/yakuin.html)
[名誉顧問] 上山 英介 (大日本除虫菊・金鳥)
[顧問] 安藤 忠雄 [顧問] 井上 礼之(ダイキン工業)江口克彦(みんなの党参議院議員、元PHP研究所) [特別会員] 鳥井 信吾(サントリー、関西経済同友会代表幹事)
この中で重要なのは、みんなの党と松下政経塾につながりを持っている、江口克彦とサントリーの鳥井信吾だろう。サントリーといえば佐治信忠が現在の社長だが、副社長が鳥井だ。佐治の父親の佐治敬三は、サントリーの創業者鳥井信治郎の次男である。また、江口克彦が出てくることで、この堺屋塾を通じて、橋下の「大阪維新の会」と松下政経塾が系譜的につながってくる。
関経連のトップの鳥井信吾
松下政経塾ともつながる江口克彦・参議院議員
更に人脈という点で言えば、橋下が早稲田大学出身であり、地元では府立北野高校出身であるところに注目すべきだろう。旧大阪府立中等学校の流れをくむ、19世紀からあるこの名門府立高校には、「六稜同窓会」(http://www.rikuryo.or.jp/index.php)という1924年に発足した歴史のある同窓会がある。アメリカのスカル・アンド・ボーンズ同窓会や日本の早大雄弁会、慶應三田会と並んで注目すべき同窓会の1つになるかもしれない。
<「マッキンゼー=コンサル屋」が大阪市の影の市長か>
また、「大阪維新の会」の源流になっているもう一つは、大前研一の「一新塾」である。「維新の会」の名称由来は、「一新塾」や大前の政党「平成維新の会」から来ている。大前研一は日立の原子力技術者をした後、一時期マッキンゼーに務めたが、その縁かどうかはわからないし、おそらくは直接は関係ないと思われるが、橋下の周辺にはマッキンゼー人脈が多数蠢いている。
マッキンゼーとはアメリカの有名な経営コンサルティング会社だが、一言で言えば、企業リストラ・首斬り屋のことである。上品な言い方をすれば「コストカッター」ということである。そして、このマッキンゼー出身者で今、大阪で「影の市長」と言われている人物がいる。それが上山信一・慶応大学教授である。橋下市長は、今年の2月下旬現在で、特別顧問や参与として次々と26人のブレーンを雇っている。特別顧問は橋下曰く、橋下本人の身代わりであると市幹部にメールしたという。これには、橋下の知事時代からの持論としての「政治任用重視」の考え方があるというのである。(朝日新聞)
大阪府・市特別顧問の上山信一・慶大教授
ブレーン、ブレーンというが、これは正式には「ブレイン・トラスト」という。アメリカのフランクリン・ローズヴェルト大統領が集めた行政アドバイザーのことだ。これがやがてシンクタンクに発展していく。ただ、アメリカで初の「ブレイン」と言われたのはウィルソン大統領を影で操った、エドワード・マンデル・ハウス大佐である。
このハウス大佐よろしく大阪市の行政改革の舞台裏で陣取っているのが、上山信一・慶大教授ということになる。上山はマッキンゼー勤務後は、米ジョージタウン大学政策大学院教授になっているほか、日本でも東京財団研究員となり、その後、2003年から慶応大学に勤務している。慶應大学SFCということは竹中平蔵とも近いということである。ただ、元々は運輸官僚であり、83年から2年間、プリンストン大学に政府留学し、その2年後にはマッキンゼーに入っている。竹中平蔵同様に、アメリカで公共選択や行政経営の手法への洗礼を受けた一期生であるようだ。
岩手の増田寛也元総務大臣(反小沢系)が知事だった頃に、自治体の各種役員を務めたが、大阪との関係では橋下府知事の元で行革をやる前から、大阪市の行革推進委員長をやっていたが、組合との関係が強い平松前市長(去年の秋の選挙で橋下に敗れた)になって追い出されたということのようだ。上山は行革推進派から非常に賞賛されている一方で、新自由主義的(グローバリズム)傾向を嫌う論者の間では非常に評判が悪い。
雑誌「FACTA」では09年と12年の二度にわたって、この上山について特集記事を載せている。この中で橋下が府知事だった時の「大阪府改革評価委員」について特別参与5人のうち、4人をマッキンゼー出身者で占めるということをした。この記事によれば、マッキンゼーのようなコンサル会社が大企業と契約を結べば、年間巨額の報酬を得ているのが常識にもかかわらず、橋下府知事時代にマッキンゼー軍団が無報酬で府のために働いているのは、「府の肩書きと全部局から収集可能な膨大な行政情報」のためだという。
このマッキンゼー軍団が跋扈する要因となったのは、大阪市役所の中の市幹部、労組、市議会議員の強固なトライアングルが原因であるのは確かなのだが、中央では中曽根康弘が行政改革の一環として行った、国鉄分割民営化もまた、組合の飼い慣らしが目的だった。その行革の嵐が遅ればせながら、大阪にもやってきたということだろう。「役人天国」を擁護するつもりもないが、これはあまりにもあからさまである。
いろいろなものを民間に払い下げるとなると、そこには政治とカネの結びつきが生まれる。これはロシアのオリガルヒや中国の太子党だけではなく、世界のどこであっても同じ事であるだろう。格差社会の急激化がグローバルに進む。少し前は「グローバル化する中流階級」というのどかな表現で語られていた「憂鬱」な21世紀の未来像だ。
それが、現在売り出し中の若手政治歴史学者の與那覇潤(よなはじゅん)氏が主張している、「世界の中国化」のことだろう。西洋文明すらこの「中国化」のスタンダードに吸収されていくという理論だ。
政治を動かすのが官僚機構から、財界などのバックを受けた「ブレイン・トラスト」に代わるだけだ。政治家がしっかりしていないと、選挙で洗礼を受けていない「インナーサークル」が動かすという点ではどちらでも変わりがないわけだ。政治家は官僚に依存しない以上は、ブレインを利用することは避けられないにしても、その背後にある利害関係に引きずられないようにしないとならない。
さて、大阪市、大阪府は特別顧問や参与の名前を公表している。主だったメンバーを以下に列挙する。
<特別顧問>
●上山信一(慶応大学SFC教授)
●古賀茂明(元経済産業省)
●堺屋太一(元経済企画庁長官)
●原英史(政策工房社長、元通産官僚)
●飯田哲也(環境エネルギー政策研究所)
●余語邦彦(ビジネスブレイクスルー大学院大学教授、大前研一系、科学技術庁に入庁。原子力局、通産省通商政策局などに勤務。原子力局課長補佐を経て退官。元マッキンゼー、産業再生機構 執行役員)
●安藤忠雄(建築家、堺屋塾)
●野村修也(弁護士、竹中金融大臣時代の金融庁顧問)
●中田宏(前横浜市長、松下政経塾、日本創新党)
●山田宏(前杉並区長、日本創新党)
●土居丈朗(慶応大経済学部教授、消費税増税で経済成長派、同時に竹中平蔵とい)
<特別参与>
●大島堅一(立命館大学、脱原発派で有名)
●有馬純則(RHJインターナショナル=リップルウッドホールディングス、ジャパン)
以上は、現在の大阪市の特別顧問・特別参与のうち、気になる人物だけを選び出したものであり、全体は以下のサイトに掲載されている。また、大阪府の現在の特別顧問と市のそれは大きく重なっており、上山・余語の元マッキンゼー軍団、堺屋、古賀、原英史などは府の方の顧問も務めている。市顧問らには去年12月から2月末の3ヶ月で計419万円の顧問報酬が支払われている。一番多かったのは、11日で44時間勤務した上山信一で、47万円だったという。人数が多いので合計金額も多いのだろう。合計36人であるということからすると、さほど個人レベルでいけば法外な値段ではない。やはり、コンサル屋にとって重要なのは行政情報なのだろうか。
上のメンバーを見ると、コンサル屋(上山・余語)と元官僚(古賀・原)だけではなく、リップルウッドの人脈まで絡んでいる。リップルウッドは市事業の民営化にすでに狙いを定めているということなのだろう。リップルやブラックストーンなどの欧米ファンドビジネスは近年、大きな企業の合併・買収案件がアメリカの金融統制によって干上がっているので、アジア諸国の民営化を新しい標的にしたということなのかもしれない。
<橋下の核となる「みんなの党」の応援団>
更に重要なのは、「みんなの党」とつながりの深いと思われる高橋洋一が会長を務める「政策工房」に所属する元官僚の原英史がいるということだ。みんなの党の代表の渡辺喜美は「東はみんなの党、西は維新の会で国政を動かそう」と橋下徹に何度となく訴えていると新聞で報道されている。もともと、大阪維新の会は大阪府議会の自民党の会派の分派が母体になっているが、この前の府議会、市議会選挙では新人も多く当選させており、府議会・市議会ではともに第一党となっている。
さらに、維新塾の講師陣としても、堺屋太一、中田宏、鈴木亘(社会保障論)学習院大教授だけではなく、元国連次席大使の北岡伸一東大教授、外交評論家の岡本行夫、元内閣参事官の高橋洋一らが決定しているという。元総務相の竹中平蔵や石原慎太郎東京都知事、テレビキャスターの辛坊治郎らにも講師役を打診している、という報道がある。
シンクタンク・政策工房の原英史・元通算官僚
同政策工房の高橋洋一会長
ジャパン・ハンドラーズのカウンターパートの北岡伸一や岡本行夫が加わっているところが重要で、おそらくこの二人の背後にいるのが、マイケル・グリーンだろう。そうなると背後には小泉進次郎、純一郎のファミリーがいるのであろう、
マイケル・グリーンは産経新聞の取材に「橋下はキングメーカーになる」と答えている。
(張り付け開始)
「橋下氏、キングメーカーになる」マイケル・グリーン氏
産経新聞 3月22日(木)12時2分配信
【ワシントン=古森義久】いま日本の政治を揺さぶる大阪市長の橋下徹氏と同氏が率いる「大阪維新の会」について、米国政府の元国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長、マイケル・グリーン氏が20日、「橋下氏は異色のリーダーシップ技量を備え、国政舞台では首相の任命を左右するキングメーカーとなりうる」などと論評した。
マイケル・グリーンCSIS日本部長
現在は戦略国際問題研究所(CSIS)日本部長やジョージタウン大学教授を務めるグリーン氏は、アジアの新リーダーについてのセミナーで、「橋下氏への人気は日本の政治での異色の重要現象で、同氏はポピュリスト(大衆に訴える政治家)として明確な技量を備えている」と述べた。
グリーン氏は、日本では県や市などの地方自治体の長やそのグループが国政にすぐに進出することは構造的に容易ではないと指摘する一方、橋下氏がこの枠を破って国政の場で活躍する可能性もあるとの見解を示した。その場合、「首相あるいは首相の任命を左右できるキングメーカーになることも考えられる。小泉純一郎元首相のような国民の信託を得るリーダーになるかもしれない」という。
日米関係への影響についてはグリーン氏は「橋下氏がたとえ首相になっても日米同盟支持、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)支持の立場を考えると、米国との安保関係も経済関係も円滑にいくだろう」と語った。ただし、橋下氏の反原発の姿勢には「日本の経済を考えれば、夢想しているに等しい」と批判した。
(張り付け終わり)
一方のジェラルド・カーティス(コロンビア大学教授)は、特に橋下については言及していないようだが、教え子である小泉Jrが「成長」するまでの間の「つなぎ」として、あるいは政界再編の一環として維新の会に注目しているのではないだろうか。
橋下の政治スタンスというのは、一方では教育改革で極めて復古主義的な「国旗国歌の教員への指導徹底」という事をやる。安倍晋三元首相とも松井一郎府知事(元自民党、関西電力系企業出身)を通じてつながっている。橋下は、学校の卒業式で教師が君が代を歌っているか、口元をわざわざチェックさせたほどだ。いかに往年の左翼教師の反国旗国歌運動がひどくとも、これは明らかにやりすぎだ。国旗国歌反対の教師らが問題なのは、時に日の丸引きずりおろしや、式の妨害行為のような実力行使が問題なのである。
また一方では、橋下は、「みんなの党」のような経済グローバリストにちかい政治勢力ともつながっている。そうかと思えば前原誠司・民主党政調会長とも密会を行ったりする。小沢一郎、河村たかしのようなポピュリストの政治家たちとも会談はするが、実際のところは、どうなのだろうか。
政策ブレーンや支持する財界人ネットワークに従って行くことになるのだとすれば、「みんなの党」や自民党の中川秀直などの「金融上げ潮派」に接近する可能性が一番高い。復古的な保守主義の色が強い安倍晋三との連携は安倍自身が変わらない限りは、二の次だろう。同様に石原都知事に接近するが、それは猪瀬直樹・副知事の上司としてというニュアンスを強めるだろう。
ただ、憲法改正というキーワードで、与野党問わず、保守系の政治家を広く取り込んでいこうという狙いもあるだろう。ここは米国のリベラル派だけではなく、周辺国のナショナリズムに過敏になっている、中国にとっても警戒する要因になる。
橋下のライバル格であった名古屋市長の河村たかしは、減税政策などポピュリズムに基づく民衆政治家だったが、南京大虐殺に関する不用意な発言で、事実上、中央政界を狙う点では大きな失点を犯した。率いる地域政党「減税日本」も分裂しているほか、盟友だった大村秀章・愛知県知事が、橋下に完全になびいてしまっている。大村は、マッキンゼー軍団の上山信一を県顧問に迎える他、竹中平蔵らを招いて政治塾を開くという。
大村秀章・愛知県知事と河村たかし名古屋市長(右)
アメリカの側、マイケル・グリーンとしては、どうだろうか。まずは中国包囲網と日本の市場開放策としての「TPP」の推進と日米同盟強化ということさえ守ってくれればよいだろう。ただ、橋下が小泉純一郎のようにナショナリズムに訴える可能性も無しとは言えない。橋下は数年前までただのタレント弁護士だったのであり、その政治家としての手腕はまだ老練とは言えない。
行列ができる法律相談をしていたころの橋下弁護士
<前原誠司・民主党代表の二の舞になるか>
その現れといえるのが去年の市長選挙で出回ったとされる労組作成の前市長支援リストが今年の2月になって流出した問題だろう。結局、このリストは維新の会に接近した市嘱託職員が捏造したものであり、そのリストを本物と思い込んだ維新の会の議員がこれを利用して、前市長側攻撃に使ったのであるが、今になってそれが維新の会を応援する元職員の捏造であることが明るみに出た。実際に、前市長の選挙で後援会員集めのために組合の支援があったかということはわからないが、この捏造発覚により、橋下サイドに市労組は謝罪を要求するに至っている。
このリスト問題に対しての橋下は、ホリエモンの偽メール事件に直面した際の、民主党の当時の代表である前原誠司の立場と同じようなものである。怪文書にちかいこのリストの信ぴょう性を疑わないままそれを鵜呑みにしたということで維新の会の政治的手腕における未熟さが露呈した。真相はわからないが、一種の維新の会に対する敵対勢力のトラップだったのだろう。堀江偽メールにしても、民主党を狙い打ちにした自民党系のトラップだったのではないかというのが私の推測である。
前原誠司・元民主党代表、現政調会長
欧米では選挙にあたってこういう「掴ませ文書」を流出させて相手の様子をみることは頻繁に行われている。ジョン・ケリーとジョージ・ブッシュが2004年の大統領選挙で争った際に、ブッシュの軍歴があやしいのではないかという怪文書がリベラル系の報道番組によって取り上げられたが、これが持ち上げられた後で、実は捏造であるということがネットからの指摘で発覚したという事件があった。ブッシュの軍歴が公表されているものではあやしいのではないかという疑いが出てきた時に、それを裏書するような文書が流出、その文書が結果的に嘘だということが証明されて、軍歴そのものが嘘だったかが有耶無耶にされてしまった。今回のリスト流出問題もその系統の情報工作のようにもみえるし、単純に維新の会を応援したかった職員の「善意の暴走」のようにも見える。
いずれにせよ、真相はわからないままだろうが、この事件で橋下徹の政治的手腕に疑問符がつくことで、利益を得る既成政党の指導者たちはいそうである。
このようにグローバリスト陣営は、みんなの党と維新の会を軸に政界再編を仕掛けようとしている。一方で、霞が関は民主党と自民党を手玉にとって増税路線をしく。財務省の消費税増税路線には輸出企業が多く、「輸出戻し税」の恩恵がある大企業や経団連は異論を唱えない。TPPに関しても日本の財界はアメリカとべったりなので賛成である。
結局、維新の会の橋下は今でこそ「増税反対」を唱えているが、今後どうなるかはわからない。少し前まで橋下は河村たかしの「減税路線」にも「減税を今言うべきではない」と苦言を呈していたのであり、風を見て再度、態度を変える可能性が高い。また、脱原発路線についても、脱原発というリベラル派受けする政治目標よりも、発送電分離(送電網と配電網と発電所の分離)が狙いである可能性もある。発送電分離というのは「電力取引所」を作るということであり、電力との金融取引を結びつける金融化(デリバティブ)の要素もある。この点は注意しなければならない。
高橋洋一や古賀茂明らの「金融上げ潮派」の人々は、今は、反財務官僚・消費増税反対で「財政出動派」と共闘しているが、いずれ、「公共投資」の評価で分裂するだろう。高橋洋一は財務省に嫌われているが、それは高橋が数学者であり、同時に金融学者であるからだ。金融を専門にする学者は、財政学者たちのように財務省主計局に気に入られる必要はない。だから、財政学の嘘については本当のことが言えるのだ。しかし、金融については自分の専門だから、あまり突っ込んで暴こうとはしない。一言で言えば、財政学者と金融学者は宗教と宗派が違うのだ。ケインジアン、マネタリスト、オーストリア学派と同じ経済学だが、宗派が違う。だから、政策の処方箋も違う。
ただ、野田民主党はこのまま消費税増税をやらされる。それが野田を操っている勝栄二郎財務事務次官の意思だからだ。野田はG20などの国際会議で「増税」を国際公約としている。だから、野田の頭にはヘッジファンドが銃口(国債売りという)を突きつけている。自民党もみんなの党もホンネでは、「こいつらに増税やらせれば、あとは自分たちの時代だ」ということである。
話を戻すが、結局、橋下維新は、財界の世代交代という大きな流れで生まれた動きではないか。本来ならば、この橋下維新の都市型・新自由主義的なグローバリズムの徹底・行き過ぎに対応する「反対勢力」がちゃんと出てこないとまずいのであるが、それを担えそうな地方型の政治勢力、小沢一郎や国民新党の系統は、財務官僚に操られた野田政権によって分断されて息の根を立たれる寸前である。
財界、霞が関、マスコミが創り上げた「橋下維新」の国政進出によって、民主党の新人議員以上に促成栽培された新人議員が生まれる可能性が高い。だが、政治塾だけで誕生する議員にはろくな人材がいないのはすでにわかりきったことである。そもそも政党に「志士」として加入しようと考える人々はよほど頭の軽い人たちだ。松下政経塾の人間がそうだった。
松下政経塾に、若い頃に何を間違ったのか参加した、東海由紀子女史という人がいる。この人は、GEやシティグループに勤務したことがある他、アメリカの財界ロビー団体であるACCJ(在日米商工会議所)の役職を務めていた。むかし、23期生としてかつて松下政経塾に参加した。前の参院選で自民党から立候補したが落選した。米留学組である。米CSISが稲盛和夫と組んでやっている「リーダーシップアカデミー」の参加者のようだ。
ブレジンスキーと写る東海由紀子女史(一番右、CSISウェブサイトから)
その時を振り返っている、江口克彦との共著『松下政経塾憂論』の中で、政経塾生のことを「酒盛りしているか議論して喧嘩しているかなんて、幕末の志士みたいだなと思っていました。そのせいかどうか、政経塾は明治維新や幕末の志士が大好きです」と冷ややかに批評している。要するに、グローバリストの視点からすれば非常に「頭の空っぽな人たち」だという評価になるのだろう。私もそう思う。
ちなみに大阪維新の会の党員・会員は「志士」と言われ、ウェブサイトでも「志士募集」となっている。明治維新がいかなる勢力によって介入されたのか、『属国・日本論』の観点からはもはや論じるまでもない。TPP推進派のジャーナリストは、「外圧利用論」を公然と主張するが、その時点でアメリカの論理に取り込まれている。しかし、橋下を応援する財界人ネットワークはそのことに気づいており、その上で橋下を「育てている」のだろう。
本気で「志士」を募集してしまう感覚がすごいし、申し込んでしまう感性もすごい
これらの「志士」たちには政治活動というのは毎日の地道な辻演説と地元訪問、頑固な相手の説得ということがわからないのだろう。ブームだけで当選しても、使い捨てにされる。小泉チルドレンがそうだったし、小沢が育てた新人議員だって大半が次は当選しないかもしれないのである。
そのような「頭の軽い勢力」を上から押さえつけるのが資金力を持つ巨大財界や霞が関の連合軍だろう。
今や、20世紀後半のかつてのようには、今の財界も霞ヶ関も余裕が無い。与えるのではなく、以下にコストをカットして、増税するかということが目的になってしまっている。そうしなければ「グローバルな競争に勝てない」というのが彼らの主張だ。それはそうなのだろう。
橋下は、一方で新自由主義的な政策を掲げ、ベーシックインカムというような欧米ではもっぱら左翼の「緑の党」の政策を掲げる。本来ならば新自由主義と社会民主主義は別の政策の対立軸であり、別の政治勢力によってそれぞれ主張されるべきものだ。ところが、日本ではそれがひとつの勢力によって代表されてしまう。政党政治の混迷もここまできた。
一見、この「維新の会」や「地方首長の反乱」は、アメリカのティーパーティーを思わせるものを持っている。ところが、日本側でアメリカのティーパーティー運動の受け皿機関になっている「東京茶会」のウェブサイトやブログでは、橋下のマニフェスト(維新船中八策)をこき下ろしているだけではなく、類似性と異質性を評価している。この団体は、アメリカの共和党系のフィクサーであるグローバー・ノーキストや大統領選元候補者のハーマン・ケインからのメッセージも載せており、本格派のティーパーティ団体のようだ。
最後にその「東京茶会」のブログから橋下について述べた文章を引用したい。
(引用開始)
その結果として、米国ティーパーティーは自由を求める小さな政府、日本の維新は官僚・政治家の決断を求めるファシズムに帰結していく。最近、日本では政治が決断することを望む声が多いが、これは明治維新という建国の歴史からの影響がそうさせているのだ。
このように考えると、本来、日本でティーパーティーに対応する政治運動は、納税者の運動であった自由民権運動であるべきだ。議会制民主主義の成立の歴史である自由民権運動を「建国の歴史」として捉える歴史観の普及が急務である。
「明治維新」という「官僚支配の確立」物語を建国の歴史とする現状の歴史認識を改めることで、私たちは初めて官僚支配から精神的に脱却することが可能になるのだ。
『東京茶会』事務局長ブログ ティーパーティと維新の同時代性について(2012年4月3日付記事)http://ameblo.jp/tokyochakai/entry-11212027451.html
(引用終わり)
この意味で行くと、やはり日本版ティーパーティの担い手は河村たかし市長だったのではないか。橋下はマスコミ受けはするがその「亜流」である。まさに悪貨は良貨を駆逐する、ということだ。
その名古屋市ではこの4月から住民税の5%減税が始まっている。どちらが正しいか、火を見るよりも明らかだ。
(了)
今日は、大阪市長・橋下徹(はしもととおる)をめぐる財界人ネットワークについて簡単に報告しておこうと思います。
橋下徹という人を私はほとんど去年まで注目して来なかった。しかし、重要なのは、橋下徹が、大阪府知事に選ばれた後の2009年に彼が世界経済フォーラム(ダボス会議)のヤング・グローバル・リーダー(Young Global Leaders)の1人に選ばれているということです。橋下という人は、2008年の2月に大阪府知事になるまでは、弁護士とタレントに二足をわらじを履いた文化人に過ぎなかった。それが、大阪府知事になるや、翌年にはダボス会議のグローバル・ヤングリーダーに選ばれている。これはなにかあると思って調べたわけです。
ダボス会議の理事の一人はあの竹中平蔵が務めている。それから、竹中は人材派遣会社のパソナの役員であり、今は取締役会議長(会長)です。竹中が会長になるまえのことですが、08年1月、つまり府知事選の直前に橋下を支える財界人として、パソナ社長の南部靖之(なんぶやすゆき)が、文化人の堺屋太一や、JR西日本の井出正敬らと一緒に橋下を支援する「勝手連」を作っている。
パソナ社長の南部靖之と会長の竹中平蔵・元総務大臣
橋下徹という人は、大阪府知事を3年9ヶ月やって、今度は自らが掲げる大阪都構想を実現しようと、府知事に自分の側近の松井一郎府議会議長を立てて、今度は自分が大阪市長に立候補して当選している。府知事としては、大阪府財政非常事態宣言を出し、コストカットを行った他、治安強化や教育改革と、彼が尊敬すると言われる石原慎太郎都知事の初期の都政改革とよく似た改革路線を打ち出しているが、今度は2000人の塾生を集めて、「維新政治塾」という勉強会を初めて、国会議員候補を育成するという。メディアによっては橋下は首相を狙っていると公然と書くところも出てきた。
私は、この橋下徹が急速に注目を集めていく様子を見るにつけ、また、最近になって浮上してきた、橋下を支える財界人ネットワークの片鱗を垣間見るにつけ、この人物とアメリカ大統領である、バラク・オバマとの共通性を感じるようになった。オバマも奇しくも橋下と同じ弁護士出身である。
オバマという政治家は、いわばあまり実績のない地方政治家がマスコミに持ち上げられて、上院議員のわずか一期目の途中であるにもかかわらず、いきなり大統領になっていったという事例であるわけだ。
オバマ大統領も失敗した
だが、その成果はやはり惨憺たるものであった。他に有力な候補者もいないので、民主党は今年の大統領選挙では仕方なくオバマを現職ということで推すようだが、もともとオバマには国政経験がなく、やっていることといえば、スピーチライターが書いた演説の原稿をいかに効果的に読み上げるか、ということだけとすら皮肉られている。
橋下市長だが、国政に意欲を見せている。
(貼り付け開始)
衆院選擁立「300とか200とか」橋下氏、報道番組で言及
産経新聞(2012年3月4日)
大阪維新の会代表の橋下徹大阪市長は4日、フジテレビの「新報道2001」に出演し、次期衆院選で擁立する維新の候補者数について「300とか200とか。ただ、僕らは政党交付金を受けていませんから、全部自己資金で出てもらう」と述べた。
橋下氏は古川元久国家戦略担当相、自民党の林芳正政調会長代理らと議論。維新の国政進出について「国会議員が僕らの意思をくんでいただければ、国政に足をかける必要はない。そんなのは絶対やっちゃいけない」と述べる一方、「今の国政の状況では、国民はついてこない」と語った。
生活保護問題に関する議論では、橋下氏が大阪市で生活保護受給率が高い西成区で税減免などの特区構想を掲げていることに関し、林氏が、自民党で生活保護問題のプロジェクトチームを立ち上げたことにふれ、「これとこれだけ(大阪市の)権限でやらせてほしいと(要望を)いただければ、すぐ法案にまとめられるよう厚生労働省と議論する」と協力を約束した。
(張り付け終わり)
このように、橋下は自ら代表を務める政治団体である「大阪維新の会」を使って近畿一体に比例区の候補を中心に200人近くの候補者を立てると言われているが、既成政党である自民党・民主党が官僚機構に骨抜きにされて、野田佳彦首相を始めとする現政権の執行部がこの景気情勢を考えずひたすら増税路線に突き進めば、近畿ではある程度議席を取るかもしれない。
橋下は、「国家の自立と個人の自立を確立するために、国家の統治機構の大改造を行う」などとまるで小沢一郎の『日本改造計画』の中にあるような事を演説でよく言う。小沢一郎自身、朝日新聞のインタビューなどでは、「『自立する個人、自立する地域、自立する国家』という主張は全く同感。我が意を得たりだ」と語っていることもあり、一見、この二人には共通点があるように見える。ただ、橋下のこの主張がいつ頃からのものかはわからないし、小沢の主張をうまく取り入れただけという可能性もある。
小沢一郎
また一方で小沢は、橋下については、「彼は小泉純一郎的な大衆を引き付ける力と、小泉氏にない理念的なものを持っている」とも同じインタビューで評しており、橋下のパフォーマンスぶりに小泉純一郎元首相と同じものも感じているようだ。ただ、この二人は小沢が岩手の政治家であり、橋下が大阪という都市の政治家であることからもわかるように、政治目的とするところはだいぶ違うように私には思える。ただ、可能性は少ないにしても、消費税と政治制度改革というテーマで、二人が一時的に手を組むということは考えられる。
小泉旋風を一時的巻き起こした小泉元首相
アメリカの大統領選挙でも候補者の政策が似通ってしまって、これは借用・盗用ではないかと揶揄されることはよくある。橋下の主張が小沢や他の政治家から学んだものであるにせよ、そうではなく元からの主張であるにせよ、いずれにせよ、小沢と橋下が、ともに官僚主導政治に対する国民の反感という時代性をうまく捉えていることは間違いない。
橋下はまるで全方位外交ともいうべき形で、自民、民主、それから小沢一郎から石原慎太郎まで、異なるタイプの政治家に会いに行っている。これについても後で述べる。しかし、一番、これから影響を受けそうなのは、渡辺喜美の「みんなの党」だろう。
みんなの党の渡邉喜美と橋下徹
一方で、敵に対しては容赦がない。自らを批判する左翼系の知識人たちに対しては、容赦なく罵倒にちかい批判を行う。山口二郎や香山リカ、内田樹といった知識人たちは、橋下に批判された知識人たちの代表格だ。彼ら自身の橋下に対する批判も、あまり頭のいいものとは思えないが、要するに橋下は自分が上回っていると思える相手には強くに出る一方で、そうではなく、今後連携が可能と見る政治家たちにはできるだけ下手に出る。
平松邦夫前大阪市長と評論家の内田樹(右)
私は、4年前に『アメリカを支配するパワーエリート解体新書』(PHP研究所)という本の中で、オバマという全く無名の政治家がいかにして短期間で大統領にまで成り上がっていったのかということの秘密について、それをオバマの周辺の支援人脈を手がかりに、オバマがそれらの支援する人脈(パワーエリートネットワーク)による「作品、プロジェクト」であると論じた。大統領というのは国民皆の代表というのは実は「幻想」であり、その大統領としての人事は大統領を選挙で支援した、財界人たちの周辺の利害を反映する形で分配される。これがアメリカの大統領選挙の政治であり、猟官政治(りょうかんせいじ)というものである。
今後、日本が官僚主導の政治から脱していく場合、否応なしに、この猟官政治というかアメリカ型の「政治任用制」(ポリティカル・アポインティー)の採用という形で、財界の影響が強まる政治体制になることも考えられる。あるいは政財官のトライアングルが、これまでの単なる「天下り」方式ではなく、アメリカ型の「回転ドア」方式で、政府の一定位以上の高官が民間から登用されていく可能性もある。そこで、私はこの橋下徹という政治家の周辺を見ていくことで、オバマ大統領を生み出したような、財界のネットワークがあるのではないかと思ったのである。
オバマ大統領を誕生させるにあたって重要であったのは、オバマの地元シカゴにおける財界人による「シカゴ・ハイドパーク人脈」であり、地元の電力会社の名士の息子である元左翼過激派のウィリアム・エアーズとのつながりであった。シカゴの名士の中に中央につながる人物がおり、このネットワークをきっかけにオバマ大統領は地方の州選出の上院議員から、合衆国上院議員へ、そしてやがて本命であったヒラリー・クリントンを打ち破って、大統領の座を射止めた。
もう一つ、オバマにとって重要であったのは、民間の重鎮からなる政策ブレーンの存在であった。アメリカの様々なシンクタンクや研究所から前の民主党政権であったクリントン政権時代に活躍した人物たちが、オバマ政権入りしている。
このように、「地元人脈」「ブレーン」という観点で私はオバマ大統領の誕生について、前掲の『アメリカを支配するパワーエリート解体新書』の中で論じてきたわけだが、それ以上にオバマがアメリカだけではなく世界に股をかけたエリート集団である「ビルダーバーグ会議」の主要メンバーによっても注目されてきたことを、そのメンバーであり、シカゴ財界とつながりを持つ、ヴァーノン・ジョーダンという弁護士・企業家を例に出して解説もした。
そこでこのような要素を橋下徹の周辺に見出せないかと思い調べた。すでに述べたとおり、橋下自身が、09年のダボス会議でのグローバル・ヤングエリートに選ばれており、ダボスといえば日本の総代表(ダボスのボードメンバーの唯一の日本人)が竹中平蔵である。竹中の意向がダボスに参加するメンバーの選定に大きく働いているだろう。また、その竹中と関わりが深い、パソナの南部靖之が「大阪府の就労支援サービス」などの外注を受けていた関係で、大阪府とつながってもいることもわかっている。
官僚主導政治を打破するということは一方で、こういう「憂鬱」な問題も抱える。すなわち財界が政治を支配するという構図である。興味深いのは、橋下が既成の財界人であるいわゆる経団連の重厚長大型の代表格である、原子力発電を行う関西電力に関しては、「脱原発」の立場を鮮明にしている点だ。これは一種の大衆迎合と見る向きと、別に「発送電分離」による電力業界への新規参入を目論む財界人らとの共同関係があるという見方もありうる。
それでは、以下では順番に「地元人脈」「ブレーン集団」「政界人脈」の順番で橋下徹がどのような財界人らの「プロジェクト」として打ち出されているのかを見ていく。(なお、本論に当たっては、ブログ「書に触れ、街に出よう」の中の「選挙で選ばれぬ新自由主義者によって売りに出される大阪:大前研一と竹中平蔵の影」の中のリストも参考にしました)
<「地元人脈」―堺屋塾の財界人が支援の会を結成>
先日の日経新聞に編集委員・堀田昇吾による「橋下改革を支える財界人たち」という記事があった。これには、橋下の「大阪維新の会」の応援団として、企業経営者らで組織する、「経済人・大阪維新の会」(2010年4月結成)があるとしている。中心になっているのは、関西経済同友会や大阪青年会議所、作家の堺屋太一が主宰する「堺屋塾」に集う財界人たちだという。
この「経済人・大阪維新の会」の代表は、洗剤会社「サラヤ」」社長の更家悠介(さらやゆうすけ)だという。この日経の記事には次のようにある。
(引用開始)
ちょうど10年前の02年2月。関西経済同友会の地域主権委員会は府市統合を求める提言をまとめ、公表した。盛り込まれたのは広域行政の一本化、二重行政の弊害打破、新しい行政スタイルの構築など大阪都構想につながる内容である。
更家氏はその直後に同委に入り、大阪再生のためには大胆な地方分権や行財政改革が必要という認識を強めていく。「地域に権限と財源を移し、地域が独自に競争戦略を立て、発展のビジョンを作っていく必要があると考えるようになった」
関西経済同友会はその後も道州制への移行、市営交通の民営化、市の水道事業の統合、教育改革、地方議会改革など府市の運営に関わる提言を相次いで公表。更家氏は04年に同友会常任幹事になり、地域主権改革や教育改革、道州制・地方議会改革に関する委員会では委員長に就任、数々の提言づくりに関わった。
維新の政策にはこれらの提言に沿ったものが多い。「我々の提言の実現を目指す動きが出てきたと感じた。この機会を逃したら当面改革は望めないだろう。だったら応援しようと考えた」と更家氏。過去の延長にあるような小改革ではなく、イノベーションと言えるような大変革が必要――。そんな認識が広まっていったことが、経済人の支援の下地になっている。
http://www.nikkei.com/news/special/side/article/g=96958A9C93819A91E3E4E2E0888DE3EBE2E0E0E2E3E0E2E2E2E2E2E2;q=9694E2E4E2E0E0E2E3E0E4E0E7E3;p=9694E2E7E2EAE0E2E3E3E1E1E3E5;o=9694E2E7E2EAE0E2E3E3E1E1E3E4
(引用終わり)
この記事を読むとわかるのは、橋下の掲げていた「大阪都」構想というのは、基本的にはこの関西経済同友会の提言通りのものになっていることがわかる。関西には、関西経済同友会の他に、関西経済連合会(関経連)という組織もある。いずれも関西電力、ダイキン、パナソニックといった関西の大企業を中心に代表幹事・常任幹事や会長・副会長の人事が組まれている組織である。
経営者の行政改革の狙いは、一言で言えば、民営化推進と労組の排除というこの二点に尽きる。この2つによって、経営者たちにとっての活動の場所が広がるからである。そのためには、政治家に対する影響力を行使しなければならない。ただ、日経の記事によると、人脈では同友会の他、大阪青年会議所や堺屋太一の主宰する「開催再活性研究会」(別名:堺屋塾)のメンバーが多いという。また、橋下は今年になって、オリックスの宮内義彦やソフトバンクの孫正義とも会合を持っている。
孫正義・ソフトバンク社長
橋下ブレーンの堺屋太一(右)
この1月下旬の会合について報じた産経新聞は、「孫に対しては、原発依存度を下げるため市が筆頭株主の関西電力に『発送電分離』に向けた株主提案権行使をする際の協力も求めた」と伝えており、要するに、孫正義やあるいはオリックスも含めて旧来型の火力・原子力以外の発電事業に参加する場合に、発送電分離を行うことで、従来からあった巨大電力会社の独占構造を打破しておこうという狙いが有りそうである。これがどこまでうまくいくかはわからないが、非重厚長大型のソフトバンクやオリックスとのつながりは注意していかなければならない。
また堺屋太一は大阪万博をかつてプロデュースした関係で橋下とのつながりを持っていただけではなく、自分が主宰する勉強会の財界人という実質的なネットワークをも作りつつあるようだ。その「経済人・大阪維新の会」の役員だが、すでに述べた更家以外には、三起商行株式会社(ミキハウス)の木村皓一(堺屋塾の会長)であるほか、上島珈琲(UCC)の社長の上島一泰の名前もある。
また、「経済人・大阪維新の会」のメンバーにはなってはいないが、堺屋塾の役員としては、以下のような面々がいる。(http://sakaiya-juku.com/yakuin.html)
[名誉顧問] 上山 英介 (大日本除虫菊・金鳥)
[顧問] 安藤 忠雄 [顧問] 井上 礼之(ダイキン工業)江口克彦(みんなの党参議院議員、元PHP研究所) [特別会員] 鳥井 信吾(サントリー、関西経済同友会代表幹事)
この中で重要なのは、みんなの党と松下政経塾につながりを持っている、江口克彦とサントリーの鳥井信吾だろう。サントリーといえば佐治信忠が現在の社長だが、副社長が鳥井だ。佐治の父親の佐治敬三は、サントリーの創業者鳥井信治郎の次男である。また、江口克彦が出てくることで、この堺屋塾を通じて、橋下の「大阪維新の会」と松下政経塾が系譜的につながってくる。
関経連のトップの鳥井信吾
松下政経塾ともつながる江口克彦・参議院議員
更に人脈という点で言えば、橋下が早稲田大学出身であり、地元では府立北野高校出身であるところに注目すべきだろう。旧大阪府立中等学校の流れをくむ、19世紀からあるこの名門府立高校には、「六稜同窓会」(http://www.rikuryo.or.jp/index.php)という1924年に発足した歴史のある同窓会がある。アメリカのスカル・アンド・ボーンズ同窓会や日本の早大雄弁会、慶應三田会と並んで注目すべき同窓会の1つになるかもしれない。
<「マッキンゼー=コンサル屋」が大阪市の影の市長か>
また、「大阪維新の会」の源流になっているもう一つは、大前研一の「一新塾」である。「維新の会」の名称由来は、「一新塾」や大前の政党「平成維新の会」から来ている。大前研一は日立の原子力技術者をした後、一時期マッキンゼーに務めたが、その縁かどうかはわからないし、おそらくは直接は関係ないと思われるが、橋下の周辺にはマッキンゼー人脈が多数蠢いている。
マッキンゼーとはアメリカの有名な経営コンサルティング会社だが、一言で言えば、企業リストラ・首斬り屋のことである。上品な言い方をすれば「コストカッター」ということである。そして、このマッキンゼー出身者で今、大阪で「影の市長」と言われている人物がいる。それが上山信一・慶応大学教授である。橋下市長は、今年の2月下旬現在で、特別顧問や参与として次々と26人のブレーンを雇っている。特別顧問は橋下曰く、橋下本人の身代わりであると市幹部にメールしたという。これには、橋下の知事時代からの持論としての「政治任用重視」の考え方があるというのである。(朝日新聞)
大阪府・市特別顧問の上山信一・慶大教授
ブレーン、ブレーンというが、これは正式には「ブレイン・トラスト」という。アメリカのフランクリン・ローズヴェルト大統領が集めた行政アドバイザーのことだ。これがやがてシンクタンクに発展していく。ただ、アメリカで初の「ブレイン」と言われたのはウィルソン大統領を影で操った、エドワード・マンデル・ハウス大佐である。
このハウス大佐よろしく大阪市の行政改革の舞台裏で陣取っているのが、上山信一・慶大教授ということになる。上山はマッキンゼー勤務後は、米ジョージタウン大学政策大学院教授になっているほか、日本でも東京財団研究員となり、その後、2003年から慶応大学に勤務している。慶應大学SFCということは竹中平蔵とも近いということである。ただ、元々は運輸官僚であり、83年から2年間、プリンストン大学に政府留学し、その2年後にはマッキンゼーに入っている。竹中平蔵同様に、アメリカで公共選択や行政経営の手法への洗礼を受けた一期生であるようだ。
岩手の増田寛也元総務大臣(反小沢系)が知事だった頃に、自治体の各種役員を務めたが、大阪との関係では橋下府知事の元で行革をやる前から、大阪市の行革推進委員長をやっていたが、組合との関係が強い平松前市長(去年の秋の選挙で橋下に敗れた)になって追い出されたということのようだ。上山は行革推進派から非常に賞賛されている一方で、新自由主義的(グローバリズム)傾向を嫌う論者の間では非常に評判が悪い。
雑誌「FACTA」では09年と12年の二度にわたって、この上山について特集記事を載せている。この中で橋下が府知事だった時の「大阪府改革評価委員」について特別参与5人のうち、4人をマッキンゼー出身者で占めるということをした。この記事によれば、マッキンゼーのようなコンサル会社が大企業と契約を結べば、年間巨額の報酬を得ているのが常識にもかかわらず、橋下府知事時代にマッキンゼー軍団が無報酬で府のために働いているのは、「府の肩書きと全部局から収集可能な膨大な行政情報」のためだという。
このマッキンゼー軍団が跋扈する要因となったのは、大阪市役所の中の市幹部、労組、市議会議員の強固なトライアングルが原因であるのは確かなのだが、中央では中曽根康弘が行政改革の一環として行った、国鉄分割民営化もまた、組合の飼い慣らしが目的だった。その行革の嵐が遅ればせながら、大阪にもやってきたということだろう。「役人天国」を擁護するつもりもないが、これはあまりにもあからさまである。
いろいろなものを民間に払い下げるとなると、そこには政治とカネの結びつきが生まれる。これはロシアのオリガルヒや中国の太子党だけではなく、世界のどこであっても同じ事であるだろう。格差社会の急激化がグローバルに進む。少し前は「グローバル化する中流階級」というのどかな表現で語られていた「憂鬱」な21世紀の未来像だ。
それが、現在売り出し中の若手政治歴史学者の與那覇潤(よなはじゅん)氏が主張している、「世界の中国化」のことだろう。西洋文明すらこの「中国化」のスタンダードに吸収されていくという理論だ。
政治を動かすのが官僚機構から、財界などのバックを受けた「ブレイン・トラスト」に代わるだけだ。政治家がしっかりしていないと、選挙で洗礼を受けていない「インナーサークル」が動かすという点ではどちらでも変わりがないわけだ。政治家は官僚に依存しない以上は、ブレインを利用することは避けられないにしても、その背後にある利害関係に引きずられないようにしないとならない。
さて、大阪市、大阪府は特別顧問や参与の名前を公表している。主だったメンバーを以下に列挙する。
<特別顧問>
●上山信一(慶応大学SFC教授)
●古賀茂明(元経済産業省)
●堺屋太一(元経済企画庁長官)
●原英史(政策工房社長、元通産官僚)
●飯田哲也(環境エネルギー政策研究所)
●余語邦彦(ビジネスブレイクスルー大学院大学教授、大前研一系、科学技術庁に入庁。原子力局、通産省通商政策局などに勤務。原子力局課長補佐を経て退官。元マッキンゼー、産業再生機構 執行役員)
●安藤忠雄(建築家、堺屋塾)
●野村修也(弁護士、竹中金融大臣時代の金融庁顧問)
●中田宏(前横浜市長、松下政経塾、日本創新党)
●山田宏(前杉並区長、日本創新党)
●土居丈朗(慶応大経済学部教授、消費税増税で経済成長派、同時に竹中平蔵とい)
<特別参与>
●大島堅一(立命館大学、脱原発派で有名)
●有馬純則(RHJインターナショナル=リップルウッドホールディングス、ジャパン)
以上は、現在の大阪市の特別顧問・特別参与のうち、気になる人物だけを選び出したものであり、全体は以下のサイトに掲載されている。また、大阪府の現在の特別顧問と市のそれは大きく重なっており、上山・余語の元マッキンゼー軍団、堺屋、古賀、原英史などは府の方の顧問も務めている。市顧問らには去年12月から2月末の3ヶ月で計419万円の顧問報酬が支払われている。一番多かったのは、11日で44時間勤務した上山信一で、47万円だったという。人数が多いので合計金額も多いのだろう。合計36人であるということからすると、さほど個人レベルでいけば法外な値段ではない。やはり、コンサル屋にとって重要なのは行政情報なのだろうか。
上のメンバーを見ると、コンサル屋(上山・余語)と元官僚(古賀・原)だけではなく、リップルウッドの人脈まで絡んでいる。リップルウッドは市事業の民営化にすでに狙いを定めているということなのだろう。リップルやブラックストーンなどの欧米ファンドビジネスは近年、大きな企業の合併・買収案件がアメリカの金融統制によって干上がっているので、アジア諸国の民営化を新しい標的にしたということなのかもしれない。
<橋下の核となる「みんなの党」の応援団>
更に重要なのは、「みんなの党」とつながりの深いと思われる高橋洋一が会長を務める「政策工房」に所属する元官僚の原英史がいるということだ。みんなの党の代表の渡辺喜美は「東はみんなの党、西は維新の会で国政を動かそう」と橋下徹に何度となく訴えていると新聞で報道されている。もともと、大阪維新の会は大阪府議会の自民党の会派の分派が母体になっているが、この前の府議会、市議会選挙では新人も多く当選させており、府議会・市議会ではともに第一党となっている。
さらに、維新塾の講師陣としても、堺屋太一、中田宏、鈴木亘(社会保障論)学習院大教授だけではなく、元国連次席大使の北岡伸一東大教授、外交評論家の岡本行夫、元内閣参事官の高橋洋一らが決定しているという。元総務相の竹中平蔵や石原慎太郎東京都知事、テレビキャスターの辛坊治郎らにも講師役を打診している、という報道がある。
シンクタンク・政策工房の原英史・元通算官僚
同政策工房の高橋洋一会長
ジャパン・ハンドラーズのカウンターパートの北岡伸一や岡本行夫が加わっているところが重要で、おそらくこの二人の背後にいるのが、マイケル・グリーンだろう。そうなると背後には小泉進次郎、純一郎のファミリーがいるのであろう、
マイケル・グリーンは産経新聞の取材に「橋下はキングメーカーになる」と答えている。
(張り付け開始)
「橋下氏、キングメーカーになる」マイケル・グリーン氏
産経新聞 3月22日(木)12時2分配信
【ワシントン=古森義久】いま日本の政治を揺さぶる大阪市長の橋下徹氏と同氏が率いる「大阪維新の会」について、米国政府の元国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長、マイケル・グリーン氏が20日、「橋下氏は異色のリーダーシップ技量を備え、国政舞台では首相の任命を左右するキングメーカーとなりうる」などと論評した。
マイケル・グリーンCSIS日本部長
現在は戦略国際問題研究所(CSIS)日本部長やジョージタウン大学教授を務めるグリーン氏は、アジアの新リーダーについてのセミナーで、「橋下氏への人気は日本の政治での異色の重要現象で、同氏はポピュリスト(大衆に訴える政治家)として明確な技量を備えている」と述べた。
グリーン氏は、日本では県や市などの地方自治体の長やそのグループが国政にすぐに進出することは構造的に容易ではないと指摘する一方、橋下氏がこの枠を破って国政の場で活躍する可能性もあるとの見解を示した。その場合、「首相あるいは首相の任命を左右できるキングメーカーになることも考えられる。小泉純一郎元首相のような国民の信託を得るリーダーになるかもしれない」という。
日米関係への影響についてはグリーン氏は「橋下氏がたとえ首相になっても日米同盟支持、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)支持の立場を考えると、米国との安保関係も経済関係も円滑にいくだろう」と語った。ただし、橋下氏の反原発の姿勢には「日本の経済を考えれば、夢想しているに等しい」と批判した。
(張り付け終わり)
一方のジェラルド・カーティス(コロンビア大学教授)は、特に橋下については言及していないようだが、教え子である小泉Jrが「成長」するまでの間の「つなぎ」として、あるいは政界再編の一環として維新の会に注目しているのではないだろうか。
橋下の政治スタンスというのは、一方では教育改革で極めて復古主義的な「国旗国歌の教員への指導徹底」という事をやる。安倍晋三元首相とも松井一郎府知事(元自民党、関西電力系企業出身)を通じてつながっている。橋下は、学校の卒業式で教師が君が代を歌っているか、口元をわざわざチェックさせたほどだ。いかに往年の左翼教師の反国旗国歌運動がひどくとも、これは明らかにやりすぎだ。国旗国歌反対の教師らが問題なのは、時に日の丸引きずりおろしや、式の妨害行為のような実力行使が問題なのである。
また一方では、橋下は、「みんなの党」のような経済グローバリストにちかい政治勢力ともつながっている。そうかと思えば前原誠司・民主党政調会長とも密会を行ったりする。小沢一郎、河村たかしのようなポピュリストの政治家たちとも会談はするが、実際のところは、どうなのだろうか。
政策ブレーンや支持する財界人ネットワークに従って行くことになるのだとすれば、「みんなの党」や自民党の中川秀直などの「金融上げ潮派」に接近する可能性が一番高い。復古的な保守主義の色が強い安倍晋三との連携は安倍自身が変わらない限りは、二の次だろう。同様に石原都知事に接近するが、それは猪瀬直樹・副知事の上司としてというニュアンスを強めるだろう。
ただ、憲法改正というキーワードで、与野党問わず、保守系の政治家を広く取り込んでいこうという狙いもあるだろう。ここは米国のリベラル派だけではなく、周辺国のナショナリズムに過敏になっている、中国にとっても警戒する要因になる。
橋下のライバル格であった名古屋市長の河村たかしは、減税政策などポピュリズムに基づく民衆政治家だったが、南京大虐殺に関する不用意な発言で、事実上、中央政界を狙う点では大きな失点を犯した。率いる地域政党「減税日本」も分裂しているほか、盟友だった大村秀章・愛知県知事が、橋下に完全になびいてしまっている。大村は、マッキンゼー軍団の上山信一を県顧問に迎える他、竹中平蔵らを招いて政治塾を開くという。
大村秀章・愛知県知事と河村たかし名古屋市長(右)
アメリカの側、マイケル・グリーンとしては、どうだろうか。まずは中国包囲網と日本の市場開放策としての「TPP」の推進と日米同盟強化ということさえ守ってくれればよいだろう。ただ、橋下が小泉純一郎のようにナショナリズムに訴える可能性も無しとは言えない。橋下は数年前までただのタレント弁護士だったのであり、その政治家としての手腕はまだ老練とは言えない。
行列ができる法律相談をしていたころの橋下弁護士
<前原誠司・民主党代表の二の舞になるか>
その現れといえるのが去年の市長選挙で出回ったとされる労組作成の前市長支援リストが今年の2月になって流出した問題だろう。結局、このリストは維新の会に接近した市嘱託職員が捏造したものであり、そのリストを本物と思い込んだ維新の会の議員がこれを利用して、前市長側攻撃に使ったのであるが、今になってそれが維新の会を応援する元職員の捏造であることが明るみに出た。実際に、前市長の選挙で後援会員集めのために組合の支援があったかということはわからないが、この捏造発覚により、橋下サイドに市労組は謝罪を要求するに至っている。
このリスト問題に対しての橋下は、ホリエモンの偽メール事件に直面した際の、民主党の当時の代表である前原誠司の立場と同じようなものである。怪文書にちかいこのリストの信ぴょう性を疑わないままそれを鵜呑みにしたということで維新の会の政治的手腕における未熟さが露呈した。真相はわからないが、一種の維新の会に対する敵対勢力のトラップだったのだろう。堀江偽メールにしても、民主党を狙い打ちにした自民党系のトラップだったのではないかというのが私の推測である。
前原誠司・元民主党代表、現政調会長
欧米では選挙にあたってこういう「掴ませ文書」を流出させて相手の様子をみることは頻繁に行われている。ジョン・ケリーとジョージ・ブッシュが2004年の大統領選挙で争った際に、ブッシュの軍歴があやしいのではないかという怪文書がリベラル系の報道番組によって取り上げられたが、これが持ち上げられた後で、実は捏造であるということがネットからの指摘で発覚したという事件があった。ブッシュの軍歴が公表されているものではあやしいのではないかという疑いが出てきた時に、それを裏書するような文書が流出、その文書が結果的に嘘だということが証明されて、軍歴そのものが嘘だったかが有耶無耶にされてしまった。今回のリスト流出問題もその系統の情報工作のようにもみえるし、単純に維新の会を応援したかった職員の「善意の暴走」のようにも見える。
いずれにせよ、真相はわからないままだろうが、この事件で橋下徹の政治的手腕に疑問符がつくことで、利益を得る既成政党の指導者たちはいそうである。
このようにグローバリスト陣営は、みんなの党と維新の会を軸に政界再編を仕掛けようとしている。一方で、霞が関は民主党と自民党を手玉にとって増税路線をしく。財務省の消費税増税路線には輸出企業が多く、「輸出戻し税」の恩恵がある大企業や経団連は異論を唱えない。TPPに関しても日本の財界はアメリカとべったりなので賛成である。
結局、維新の会の橋下は今でこそ「増税反対」を唱えているが、今後どうなるかはわからない。少し前まで橋下は河村たかしの「減税路線」にも「減税を今言うべきではない」と苦言を呈していたのであり、風を見て再度、態度を変える可能性が高い。また、脱原発路線についても、脱原発というリベラル派受けする政治目標よりも、発送電分離(送電網と配電網と発電所の分離)が狙いである可能性もある。発送電分離というのは「電力取引所」を作るということであり、電力との金融取引を結びつける金融化(デリバティブ)の要素もある。この点は注意しなければならない。
高橋洋一や古賀茂明らの「金融上げ潮派」の人々は、今は、反財務官僚・消費増税反対で「財政出動派」と共闘しているが、いずれ、「公共投資」の評価で分裂するだろう。高橋洋一は財務省に嫌われているが、それは高橋が数学者であり、同時に金融学者であるからだ。金融を専門にする学者は、財政学者たちのように財務省主計局に気に入られる必要はない。だから、財政学の嘘については本当のことが言えるのだ。しかし、金融については自分の専門だから、あまり突っ込んで暴こうとはしない。一言で言えば、財政学者と金融学者は宗教と宗派が違うのだ。ケインジアン、マネタリスト、オーストリア学派と同じ経済学だが、宗派が違う。だから、政策の処方箋も違う。
ただ、野田民主党はこのまま消費税増税をやらされる。それが野田を操っている勝栄二郎財務事務次官の意思だからだ。野田はG20などの国際会議で「増税」を国際公約としている。だから、野田の頭にはヘッジファンドが銃口(国債売りという)を突きつけている。自民党もみんなの党もホンネでは、「こいつらに増税やらせれば、あとは自分たちの時代だ」ということである。
話を戻すが、結局、橋下維新は、財界の世代交代という大きな流れで生まれた動きではないか。本来ならば、この橋下維新の都市型・新自由主義的なグローバリズムの徹底・行き過ぎに対応する「反対勢力」がちゃんと出てこないとまずいのであるが、それを担えそうな地方型の政治勢力、小沢一郎や国民新党の系統は、財務官僚に操られた野田政権によって分断されて息の根を立たれる寸前である。
財界、霞が関、マスコミが創り上げた「橋下維新」の国政進出によって、民主党の新人議員以上に促成栽培された新人議員が生まれる可能性が高い。だが、政治塾だけで誕生する議員にはろくな人材がいないのはすでにわかりきったことである。そもそも政党に「志士」として加入しようと考える人々はよほど頭の軽い人たちだ。松下政経塾の人間がそうだった。
松下政経塾に、若い頃に何を間違ったのか参加した、東海由紀子女史という人がいる。この人は、GEやシティグループに勤務したことがある他、アメリカの財界ロビー団体であるACCJ(在日米商工会議所)の役職を務めていた。むかし、23期生としてかつて松下政経塾に参加した。前の参院選で自民党から立候補したが落選した。米留学組である。米CSISが稲盛和夫と組んでやっている「リーダーシップアカデミー」の参加者のようだ。
ブレジンスキーと写る東海由紀子女史(一番右、CSISウェブサイトから)
その時を振り返っている、江口克彦との共著『松下政経塾憂論』の中で、政経塾生のことを「酒盛りしているか議論して喧嘩しているかなんて、幕末の志士みたいだなと思っていました。そのせいかどうか、政経塾は明治維新や幕末の志士が大好きです」と冷ややかに批評している。要するに、グローバリストの視点からすれば非常に「頭の空っぽな人たち」だという評価になるのだろう。私もそう思う。
ちなみに大阪維新の会の党員・会員は「志士」と言われ、ウェブサイトでも「志士募集」となっている。明治維新がいかなる勢力によって介入されたのか、『属国・日本論』の観点からはもはや論じるまでもない。TPP推進派のジャーナリストは、「外圧利用論」を公然と主張するが、その時点でアメリカの論理に取り込まれている。しかし、橋下を応援する財界人ネットワークはそのことに気づいており、その上で橋下を「育てている」のだろう。
本気で「志士」を募集してしまう感覚がすごいし、申し込んでしまう感性もすごい
これらの「志士」たちには政治活動というのは毎日の地道な辻演説と地元訪問、頑固な相手の説得ということがわからないのだろう。ブームだけで当選しても、使い捨てにされる。小泉チルドレンがそうだったし、小沢が育てた新人議員だって大半が次は当選しないかもしれないのである。
そのような「頭の軽い勢力」を上から押さえつけるのが資金力を持つ巨大財界や霞が関の連合軍だろう。
今や、20世紀後半のかつてのようには、今の財界も霞ヶ関も余裕が無い。与えるのではなく、以下にコストをカットして、増税するかということが目的になってしまっている。そうしなければ「グローバルな競争に勝てない」というのが彼らの主張だ。それはそうなのだろう。
橋下は、一方で新自由主義的な政策を掲げ、ベーシックインカムというような欧米ではもっぱら左翼の「緑の党」の政策を掲げる。本来ならば新自由主義と社会民主主義は別の政策の対立軸であり、別の政治勢力によってそれぞれ主張されるべきものだ。ところが、日本ではそれがひとつの勢力によって代表されてしまう。政党政治の混迷もここまできた。
一見、この「維新の会」や「地方首長の反乱」は、アメリカのティーパーティーを思わせるものを持っている。ところが、日本側でアメリカのティーパーティー運動の受け皿機関になっている「東京茶会」のウェブサイトやブログでは、橋下のマニフェスト(維新船中八策)をこき下ろしているだけではなく、類似性と異質性を評価している。この団体は、アメリカの共和党系のフィクサーであるグローバー・ノーキストや大統領選元候補者のハーマン・ケインからのメッセージも載せており、本格派のティーパーティ団体のようだ。
最後にその「東京茶会」のブログから橋下について述べた文章を引用したい。
(引用開始)
その結果として、米国ティーパーティーは自由を求める小さな政府、日本の維新は官僚・政治家の決断を求めるファシズムに帰結していく。最近、日本では政治が決断することを望む声が多いが、これは明治維新という建国の歴史からの影響がそうさせているのだ。
このように考えると、本来、日本でティーパーティーに対応する政治運動は、納税者の運動であった自由民権運動であるべきだ。議会制民主主義の成立の歴史である自由民権運動を「建国の歴史」として捉える歴史観の普及が急務である。
「明治維新」という「官僚支配の確立」物語を建国の歴史とする現状の歴史認識を改めることで、私たちは初めて官僚支配から精神的に脱却することが可能になるのだ。
『東京茶会』事務局長ブログ ティーパーティと維新の同時代性について(2012年4月3日付記事)http://ameblo.jp/tokyochakai/entry-11212027451.html
(引用終わり)
この意味で行くと、やはり日本版ティーパーティの担い手は河村たかし市長だったのではないか。橋下はマスコミ受けはするがその「亜流」である。まさに悪貨は良貨を駆逐する、ということだ。
その名古屋市ではこの4月から住民税の5%減税が始まっている。どちらが正しいか、火を見るよりも明らかだ。
(了)
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