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ゲーム・スポーツなどについての感想と妄想の作文集です 管理者名(記事筆者名)は「O-ZONE」「老幼児」「都虎」など。
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第十六章 魔獣の襲来

山を下りるに連れて、だんだんと森は深くなり、空気の湿度も高くなってきたようである。木の種類も針葉樹から広葉樹に変わり、腐葉土の匂いが鼻をつく。
山間を流れる谷川には、鱒や鮎などの川魚が時折ぱしゃっと音を立てて跳ね上がるのが見えた。
雪解けの水は水量が多く、岩を砕くような勢いである。
夕暮れが近づくと、あたりは霧がたちこめ、不気味な気配が漂ってきた。
「ひどい霧だな。鼻をつままれても分からんという奴だ」
オズモンドが呟く。
「そろそろ今夜の寝る場所を探したいが、どうもどこも気に入らない。獣の気配がするし、他にも何かいそうな感じだ」
マルスはオズモンドだけに小声で言った。
「何の気配だ?」
「分からん。とにかくいやな感じだ」
あたりはますます暗くなり、霧はなおも濃くなってくる。
「仕方ない。この辺で止まって、宿営を作ろう」
川から少し上に上がったところに乾いた場所を探し、そこに草を積んでその上に皮を敷き、即席のベッドを作る。
男三人は交代で見張り番をすることにした。ジョン、マルス、オズモンドの順である。
真夜中、マルスは夢うつつに人の悲鳴を聞いた。
気力を振り絞って目を覚まし、意識を取り戻したマルスが最初に見たのは、焚き火の前に立ちすくむジョンの姿であった。
ジョンの視線の先を見たマルスは、ぞっとした。
そこにいたのは、大きさが人間の二倍ほどもある巨大な猿であった。
闇に光るその目は邪悪な意思を感じさせた。
これまでマルスが見た動物は、熊であれ虎であれ、凶暴な力は持っていたが、邪悪な意思を感じたことはなかった。
これは動物とは違う何かだ、とマルスは思った。もちろん人間でもない。強いて言うなら悪魔が動物の姿をとって現れたものだろう。
よく見ると、巨大な影は一つだけではなかった。少なくとも三つはいる。もしかしたらもっといるかもしれない。
マルスは側のオズモンドを起こした。
「敵だ。目を覚ませ」
オズモンドは寝ぼけ眼で起き直り、巨大な猿人たちを見て、声にならない悲鳴を上げた。
マルスはトリスターナ、マチルダを次々に起こした。女達も目を覚まし、悲鳴を上げる。
大猿の一頭が、唸り声を上げ、ジョンに襲いかかった。
マルスは弓に矢を番え、その猿の心臓を目掛けて矢を放った。
矢は見事に突き刺さった。だが、何ということだろう。大猿は一瞬苦痛の声を上げたものの、向きを変えてこちらに突進してくるではないか。
マルスはとりあえず、後ろの二頭目掛けて次々に矢を射た後、側に置いてあった槍を手にして大猿に向かって突撃した。
オズモンドは剣を抜いて横から同じ大猿に切りつける。
マルスの槍は大猿の胸に深々と突き刺さった。だが、大猿は槍を胸に刺したまま、マルスを片手でなぎ払った。それを避けられず、マルスの体は傍らの木の茂みに叩きつけられた。
オズモンドは猿の左腕に切りつけたが、刃先が合わず、松の木の皮のように固い毛皮の上ですべり、跳ね返された。
向こうではジョンがもう一頭の大猿につかまり、頭上高く差し上げられ、今にも地面に叩き付けられようとしていた。
突然、鋭い女の声が響き渡った。トリスターナの声である。
何かの呪文らしいその声を聞くと、不思議なことに、猿たちは悲鳴を上げ、闇の中に消えていった。
男たちは呆然としていた。
今ここで起こった出来事が信じられない思いである。
あのような大猿を見たのも初めてなら、それがトリスターナによって撃退されたのも信じ難い。
「トリスターナさん、今のは?」
オズモンドがやっと口を開いた。
「悪魔払いの呪文です。きっとあれは悪魔の使いだったのでしょう」
トリスターナも青ざめているが、思ったより平静である。さすがに元修道尼だけあって、妖魔には詳しいのだろう。
「トリスターナさんにこんな芸があったとは知らなかった」
オズモンドが感心したように言った。
「私も知りませんでしたわ。こんなことしたのは初めてです。修道院に、悪魔払いに詳しい老尼がいて、仲良しの私に呪文を幾つか教えてくれたんですの」
そう言うトリスターナを、一同は救世主を見る目で眺めるのであった。





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