ゲーム・スポーツなどについての感想と妄想の作文集です
管理者名(記事筆者名)は「O-ZONE」「老幼児」「都虎」など。
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前に「新説三国志」の感想文を引用した「silver fish files(紙魚のファイル)」というブログからの引用だが、恩田陸の発想力の凄さに感嘆する。まあ、「六番目の小夜子」以来の特質かもしれない。つまり「何でもない、あるいは何も起こらない」のに恐怖が感じられるわけだ。この感想文も、その特徴をよく捉えている。
私は現代作家の小説をほとんど読まないのだが、この短編集はちょっと読んでみたい。
ちなみに「dance with me」という名曲があるが、いわゆるモータウンサウンドのひとつだったような記憶がある。誰の、あるいはどのグループの歌だっただろうか。
恩田陸の才能は、あるいは村上春樹に匹敵するのではないか。村上春樹も、「踊る小人」のように、ホラー小説が抜群に上手いのである。ただ、ある種の「臭さ」、ナルシズム臭があるというか、それが作品の表面に出ているのはやはり欠点だろう。そこは、自分のナルシズムを上手く戯画化している太宰治に劣るところだ。
(以下引用)
2015年11月29日 (日)
10月に読んだ本から
月末ぎりぎりになってしまったが、10月に読んだ本から、短篇集とアンソロジーを各1冊。
私と踊って/恩田陸(新潮文庫,2015)
2012年に単行本が発行された短篇集。
内容はミステリあり、ファンタジーあり、ホラーあり、SFあり、スタイルも字組を変えたり、横書きだったりと、実にバラエティに富んでいる。何に分類していいかよくわからない、「変な小説」もある。唯一ないのは、「普通の小説」かもしれない。
あまり長い作品は入ってなくて、19編を収録。印象に残った作品をいくつか取り上げてみる。
最初の作品「心変わり」は、突然失踪した同僚の机に、主人公がふと違和感を抱いたところから物語が始まる。何気なく物が置かれたように見えるその現場から、主人公の目には恐るべき真相が徐々に見えてきて、最後には国を揺るがすような陰謀の影までがちらつく。日常的な冒頭の場面からはまったく想像できない展開。
少し後に出てくる「思い違い」も、同様の趣向の作品で、こちらでは、カフェの中で何気なく交わされる会話の裏に、緊迫感に満ちた追う者と追われる者のドラマが進行していた――というもの。
これまた日常的な公開生放送の現場を描く「骰子の七の目」。これも実は最後になって予想外の展開、読者は現実世界からディストピアに突き落とされる。
突然言葉が理解できるようになった犬が、主人に宛てて書いた手紙という設定のショートショート、「忠告」。たどたどしい文章から見える犬の心情の表現が巧み。これと同じ設定で対になる作品が、少し後に出てくる「協力」。こちらは猫の手紙。犬は主人を救おうと必死だったのに、猫はまったく…。なお、この作品も含め、ショートショートはそれ以外の作品とは字組もフォントも変えている。
音楽ファンタジー「二人でお茶を」。あがり症のピアニストに、夭折した天才ピアニストの魂が突如としてやどる。音楽家として大成功をおさめるも、やがて無理がたたり――という話。このピアニストのモデルは、著者が思い入れの深いディヌ・リパッティだという。
台湾を舞台にした幻想的な2編、「台北小夜曲(タイペイセレナーデ)」と「火星の運河」。登場人物も重なっている。前者は、「記憶の集積でできた街」台北が舞台。主人公の元に過去からの声が届く。その導く先にあるものは、優しい「死」への誘い。後者は台南が舞台が、全体が白昼夢のような雰囲気の中で、過去と現在が交錯する。
表題作「私と踊って」は、タイトルだけ見てホラー小説かと思っていたら、全然違った。世界的なダンサーとただ一度だけ踊った少女時代の記憶を辿って、主人公はその思い出の場所を訪ねる。物語としては、何が起きるわけでもない。ダンサーのモデルは、著者自身の解説によるとピナ・バウシュだそうだ。「二人でお茶を」と同じく、天才的芸術家へのオマージュというべき作品。
この作品の後に、著者自身が収録作を解説するあとがきがあり、その後にさらに2作が収録されている。
横書き小説「東京の日記」は、静かに全体主義化していく近未来の東京で、外国人が綴った日記。何が起きているか、具体的なことがよくわからないのが不気味。
最後の「交信」は1ページだけ。著者には珍しい、タイポグラフィ風の作品。何かと思ったら、「はやぶさ」の話だったが、このわずかな字数でそのドラマを描き出す技には感心。
他には、舞台劇の形を借りて、死んだ娘による、「自分がなぜ死んでしまったか」の弁明が繰り広げられる「弁明」。日常の法則が、物理法則も含めて何もかも通用しなくなった、人も物も場所も動きまわる不確定な世界を描く「少女界曼荼羅」。写真を手掛かりに過去を幻視することのできる、特殊能力を持つ青年を主人公にしたショート・ショート3部作「聖なる氾濫」、「海の泡より生まれて」、「茜さす」など。
表面的にはバラエティ豊かな作品なのだが、ほとんどの作品に「死」や「過去」が色濃い影を落としている。そのせいか、あからさまな犯罪や事件がほとんど描かれてないにもかかわらず、ちょっとダークな印象の作品が多い。「奇妙な味」の一種なのかもしれない。
私的ベスト3は、「東京の日記」、「心変わり」、「私と踊って」。
Watashitoodotte
私は現代作家の小説をほとんど読まないのだが、この短編集はちょっと読んでみたい。
ちなみに「dance with me」という名曲があるが、いわゆるモータウンサウンドのひとつだったような記憶がある。誰の、あるいはどのグループの歌だっただろうか。
恩田陸の才能は、あるいは村上春樹に匹敵するのではないか。村上春樹も、「踊る小人」のように、ホラー小説が抜群に上手いのである。ただ、ある種の「臭さ」、ナルシズム臭があるというか、それが作品の表面に出ているのはやはり欠点だろう。そこは、自分のナルシズムを上手く戯画化している太宰治に劣るところだ。
(以下引用)
2015年11月29日 (日)
10月に読んだ本から
月末ぎりぎりになってしまったが、10月に読んだ本から、短篇集とアンソロジーを各1冊。
私と踊って/恩田陸(新潮文庫,2015)
2012年に単行本が発行された短篇集。
内容はミステリあり、ファンタジーあり、ホラーあり、SFあり、スタイルも字組を変えたり、横書きだったりと、実にバラエティに富んでいる。何に分類していいかよくわからない、「変な小説」もある。唯一ないのは、「普通の小説」かもしれない。
あまり長い作品は入ってなくて、19編を収録。印象に残った作品をいくつか取り上げてみる。
最初の作品「心変わり」は、突然失踪した同僚の机に、主人公がふと違和感を抱いたところから物語が始まる。何気なく物が置かれたように見えるその現場から、主人公の目には恐るべき真相が徐々に見えてきて、最後には国を揺るがすような陰謀の影までがちらつく。日常的な冒頭の場面からはまったく想像できない展開。
少し後に出てくる「思い違い」も、同様の趣向の作品で、こちらでは、カフェの中で何気なく交わされる会話の裏に、緊迫感に満ちた追う者と追われる者のドラマが進行していた――というもの。
これまた日常的な公開生放送の現場を描く「骰子の七の目」。これも実は最後になって予想外の展開、読者は現実世界からディストピアに突き落とされる。
突然言葉が理解できるようになった犬が、主人に宛てて書いた手紙という設定のショートショート、「忠告」。たどたどしい文章から見える犬の心情の表現が巧み。これと同じ設定で対になる作品が、少し後に出てくる「協力」。こちらは猫の手紙。犬は主人を救おうと必死だったのに、猫はまったく…。なお、この作品も含め、ショートショートはそれ以外の作品とは字組もフォントも変えている。
音楽ファンタジー「二人でお茶を」。あがり症のピアニストに、夭折した天才ピアニストの魂が突如としてやどる。音楽家として大成功をおさめるも、やがて無理がたたり――という話。このピアニストのモデルは、著者が思い入れの深いディヌ・リパッティだという。
台湾を舞台にした幻想的な2編、「台北小夜曲(タイペイセレナーデ)」と「火星の運河」。登場人物も重なっている。前者は、「記憶の集積でできた街」台北が舞台。主人公の元に過去からの声が届く。その導く先にあるものは、優しい「死」への誘い。後者は台南が舞台が、全体が白昼夢のような雰囲気の中で、過去と現在が交錯する。
表題作「私と踊って」は、タイトルだけ見てホラー小説かと思っていたら、全然違った。世界的なダンサーとただ一度だけ踊った少女時代の記憶を辿って、主人公はその思い出の場所を訪ねる。物語としては、何が起きるわけでもない。ダンサーのモデルは、著者自身の解説によるとピナ・バウシュだそうだ。「二人でお茶を」と同じく、天才的芸術家へのオマージュというべき作品。
この作品の後に、著者自身が収録作を解説するあとがきがあり、その後にさらに2作が収録されている。
横書き小説「東京の日記」は、静かに全体主義化していく近未来の東京で、外国人が綴った日記。何が起きているか、具体的なことがよくわからないのが不気味。
最後の「交信」は1ページだけ。著者には珍しい、タイポグラフィ風の作品。何かと思ったら、「はやぶさ」の話だったが、このわずかな字数でそのドラマを描き出す技には感心。
他には、舞台劇の形を借りて、死んだ娘による、「自分がなぜ死んでしまったか」の弁明が繰り広げられる「弁明」。日常の法則が、物理法則も含めて何もかも通用しなくなった、人も物も場所も動きまわる不確定な世界を描く「少女界曼荼羅」。写真を手掛かりに過去を幻視することのできる、特殊能力を持つ青年を主人公にしたショート・ショート3部作「聖なる氾濫」、「海の泡より生まれて」、「茜さす」など。
表面的にはバラエティ豊かな作品なのだが、ほとんどの作品に「死」や「過去」が色濃い影を落としている。そのせいか、あからさまな犯罪や事件がほとんど描かれてないにもかかわらず、ちょっとダークな印象の作品が多い。「奇妙な味」の一種なのかもしれない。
私的ベスト3は、「東京の日記」、「心変わり」、「私と踊って」。
Watashitoodotte
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