Hey!Say!JUMP・山田涼介主演のフジテレビ月9『カインとアベル』の第2話。視聴率は8.6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区/以下同)と、初回から0.2ポイントダウンです。このままいくと今年4月期の『ラヴソング』が記録した月9全話史上最低の8.4%を更新するかもしれません。


 父親の貴行(高嶋政伸)が社長、兄の隆一(桐谷健太)が副社長を務める大手デベロッパーで働く優くん(山田涼介)は、同社が社運を賭けたアウトレットモール建設のプロジェクトチームに参画中。もちろん、実力ではなく兄貴のゴリ押しでチーム入りしたわけですが、前回、有名レストランの招致合戦で、シェフの驚異的な人の良さによって大手柄を上げ、今度はチームの“最優先事項”であるモールの設計を担当することに。社内の設計担当・長谷川さん(小林隆)と、チームの先輩美女・梓(倉科カナ)を連れ立って、大物建築家・神谷仁(竜雷太)のもとを訪れることになりました。


 この神谷、実はデベロッパーの会長で優くんの祖父でもある宗一郎(平幹二朗)と旧知の仲。自分の担当者の中に優くんがいることを事前に知ると、宗一郎にわざわざ「俺はいつものやり方でやらせてもらうが、かまわんな」とエクスキューズを入れてきます。宗一郎は「この仕事が終わったら、高田優の印象を教えてくれ」と回答。好々爺2人、孫っ子がかわいくて仕方ないという感じです。


 そんなこんなで、事務所に来た3人に対し「わかってると思うが、私は私のやり方でやる」と言い放ち、「トスカーナの石材(すごく高い)を輸入して積め!」と主張する神谷。優くんたちの提案は一切聞き入れてもらえません。


 神谷が頑固な建築家だということは有名だそうで、対応を間違って激怒を買い、設計を降りられたゼネコンやデベロッパーはたくさんいるのだそうです。そういう人に依頼するわけですから、ある程度交渉が難航することは予想されているわけですが、チームの部長・団(木下ほうか)は「交渉がうまくできない」という理由で長谷川さんをチームから外してしまいます。最初から優秀なネゴシエイターを参加させればいいのに、と思うし、そもそも社運を賭けたプロジェクトの最優先事項なんだから副社長兄貴が出て行けばいいのに、とも思うけど、兄貴は担当しているバンコクの仕事がトラブってたり、父親に国会議員の娘とのお見合いをセッティングされたりで、それどころじゃないみたい。


 長谷川さんが外れ、いよいよ優くんと梓の2人で神谷との交渉にあたることになりました。茶髪の新入社員とギャルパイセンだけで、たぶん現実でいうと丹下健三とか槇文彦とか、そういうクラスの建築家とやり合うことになったわけです。無謀です。


 交渉の場で、優くんはつい「神谷先生の名前が必要なんです」と言ってしまいます。設計じゃなく、名前が必要なんだと。はい、当然、神谷先生激怒です。追い返されてしまいます。今まで神谷と折り合わなかったゼネコンやデベロッパーにも、ここまでバカなことを言う担当者はいなかったはずです。


 しかし、神谷はその後、驚異的な人の良さを発揮。優くんが神谷の設計した建築の前にたたずんでいると、「そんなに建築に興味があったのか?」と話しかけてきてくれます。興味も何も、優くんは一夜漬けで少し勉強しただけです。それでも優くんが「これが本物だということはわかります!(キリッ)」と褒めたたえると、神谷お爺ちゃん大喜び。「芸術を現すartの語源は……」と、うれしそうに語り出し、再び優くんと梓のために時間を作ってくれることになりました。


 優くんはその席で、チームをクビになった長谷川さんが起こしたコストカット版のデザインスケッチを提示。これまた、建築家をものすごくバカにした行動ですが、さらに「トスカーナの石を積めと言われたところに、ガラスを使った」「神谷デザインといえばガラスでしょ」「これでコストを抑えることができます」とまくしたて、挙句の果てにすごいことを言います。


「でも、世界観は神谷仁そのものかと!」


 ちょっと建築の雑誌とか薄っぺらい参考書とか読んだだけのクソ坊主に「自分の建築における世界観」をビシッと決めつけられた大物建築家・神谷仁(たぶん現実でいえば丹下健三とか槇文彦とかそういうクラス)でしたが、あろうことかニッコリ。なんと、この仕事を受けてくれることになりました。長谷川さんのスケッチを元に進めるんだそうです。なんということでしょう。


 その後、優くんは正式に神谷先生の担当者に任命されました。よっぽど気に入られたようです。そして、長谷川さんは群馬支社に飛ばされることになりました。


 あのね、優くんのやることなすこと、すべてうまくいくんですね。金持ちの家に生まれて、就職できなくても兄貴がゴリ押しで日本最大級のデベロッパーに入社させてくれて、主要プロジェクトのチームに参加させてくれて、どんな頑固者も自分の言うとおりに動いてくれる。そんなわけないのに、そうなってくれる。勘違い甚だしい発言の数々も、周りの大人たちが「うんうん、いいよいいよ」と優しく聞いてくれる。優くん本人だけが苦しんだり悩んだりしてるような顔をしているけど、はたから見たらなんの苦労もしてない、身分不相応な立場で、ぬるま湯の中で甘やかされているようにしか見えない。


 これ、このドラマそのものにも言えることなんですよね。


 どんな不祥事があっても、事務所とテレビ局の関係性の兼ね合いだけで月9の主役をやらせてもらって、自分だけが輝けるナイスなイメージの脚本を与えてもらって、すこぶる達者な脇役の先輩俳優をたくさん揃えてもらって、身分不相応な立場で、ぬるま湯の中で甘やかされているようにしか見えない。山田涼介が。


 この居心地の悪さ、ストーリー的にも制作行政的にも、何か不健全なことが着々と行われている感じ、そういうの視聴者にはきっと伝わると思うんですよ。


 脇役やゲストはホントにいい役者さんばかりなので、今後も薄目を開けて見続けようと思います。あと、ホントにいい役者さんばかりといえば、宗一郎役の平幹二朗さんが亡くなったそうです。すこぶる元気で、うっとうしいくらいパワフルなお爺ちゃん役だっただけに、とても悲しい報せでした。ご冥福をお祈りします。
(文=どらまっ子AKIちゃん)